IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第176回) 「デジタル化・AI導入補助金2026」を活用しよう。変更点と注意ポイントは?

時事潮流 デジタル化

公開日:2026.07.08

 中小企業や小規模事業者を対象に、生産性向上を目的としたITツール導入の一部を補助する制度「IT導入補助金」が、「デジタル化・AI導入補助金2026」として刷新された。AIツール導入やセキュリティ対策が強化された本制度の変更点、申請の流れ、注意すべきポイントを分かりやすく解説する。

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デジタル化やAI活用の重要性を広く周知

 「IT導入補助金」は2017年に始まり、「中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金」として運用されてきた。日々の業務に追われてIT導入に踏み切れない企業や、DXを進めたいものの、ノウハウや人材、資金が不足している企業にとって有力な支援策となっている。一方で近年は、この制度を悪用した不正受給も問題視されている。

 2026年度の申請は、2026年3月30日から「デジタル化・AI導入補助金2026」として開始された。これは従来のIT導入補助金の後継制度であり、補助額や補助率、申請枠の大枠は前年から大きく変わっていない。名称変更の理由について事務局は、「中小企業・小規模事業者の生産性向上に向け、単なるITツール導入にとどまらず、より踏み込んだデジタル化やAI活用の重要性を広く周知するため」と説明している。

 今年の主な変更点は3つある。1つ目は制度名称の変更、2つ目は2回目以降の申請などにおける賃上げ要件の追加、3つ目はAI機能に関する要件の明確化である。これらについては次項で詳しく解説する。

 なお、不正受給対策は年々強化されている。2020~2022年度には全体の1割近くの不正受給が確認されており、採択率も2023年の75.9%から2024年69.9%、2025年43.8%へと低下。審査は年々厳格化する方向にある。

 具体的にいえば、ベンダー(IT導入支援事業者)からの「実質無料で導入できる」などの過度な営業トークには注意したい。不正受給が発覚した場合、補助金の返還や加算金の納付に加え、事業者名の公表や一定期間の申請停止といった重いペナルティが科される可能性がある。会社の信用にも直結するため、十分な注意が必要だ 。制度を利用する際は、公募要領を十分に確認するとともに、信頼できるIT導入支援事業者を選ぶよう心がけたい。

「デジタル化・AI導入補助金2026」3つのポイント

 今年度の「デジタル化・AI導入補助金2026」は、名称変更とともに「中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的として、デジタル化やDX等に向けたAIを含むITツール(ソフトウエア、サービス等)の導入を支援する補助金」と位置付けられている。

 この制度は、IT導入支援事業者と連携して申請・導入を進める仕組みとなっている。詳しくは以下を参照してほしい。
「デジタル化・AI導入補助金2026 案内資料」

 「デジタル化・AI導入補助金2026」のポイントは以下の3つ。

・AI等を用いた業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツール等の導入費用を支援。
・インボイス対応にも活用可能。安価なITツールの導入にも活用可能で、小規模事業者は最大4/5補助。
・補助額は最大450万円/者、補助率は1/2~4/5。

 申請枠は5つ用意されている。おおむね昨年と同じだが、名称や目的も変更されているので、今年度の公募要領をよく読んだ上で検討しよう。

<通常枠>
・生産性の向上に資するITツール(ソフトウエア、サービス)の導入費用を支援。
・クラウド利用料を最大2年分補助し、保守運用等の導入関連費用も支援。

<複数者連携デジタル化・AI導入枠>
・10者以上の中小企業・小規模事業者等が連携した、インボイス制度への対応やキャッシュレス決済を導入する取り組み等を支援。導入や活用に向けた事務費・専門家経費も補助対象。

<インボイス枠 インボイス対応類型>
・令和5年10月1日に開始されたインボイス制度への対応に特化した支援枠で、会計・受発注・決済ソフトに加え、PC・タブレット・レジ・券売機等のハードウエア導入費用も支援。
・小規模事業者は最大4/5補助し、補助下限はなく、安価なITツール導入も支援。

<インボイス枠 電子取引類型>
・取引関係における発注者(大企業を含む)が費用を負担してインボイス対応済の受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業・小規模事業者等が無償で利用できるケースを支援。

<セキュリティ対策推進枠>
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているセキュリティサービスの利用料を支援。

 今回の公募は4次締切制に変更されており(従来は8次)、最終締切は8月25日17時。申請は、「公募要領の確認」→「GビズIDプライムの取得」→「SECURITY ACTION宣言」→「IT導入支援事業者およびITツールの選定」→「交付申請」という流れで進む。

 また生成AIの活用拡大を受け、今年はAI機能の可視化も進められている。ITツール検索においては、AIツールによる絞り込みが可能となり、AI機能を有するツールにはその旨が明示されるため、導入検討時の参考にできる。

 なお、採択率向上のためには、次項のSECURITY ACTION二つ星宣言や「IT戦略ナビwith」の活用など、加点項目への対応も検討したい。

 注意したいのは、交付決定前に発注・契約・支払いを行った場合、補助対象外となるという点だ。また、2回目以降の申請や通常枠で150万円以上の補助金を申請する場合には、「賃上げ要件」が求められる。この要件では、事業計画期間中の給与支給総額の増額や実施効果の報告などを求められる。要件未達の場合は補助金の全部または一部返還となる可能性があるため、申請前に公募要領やマニュアルを十分確認しておきたい。

「SECURITY ACTION」は補助金対策だけでなく企業PRにも有効

 IPAが運営する「SECURITY ACTION」は、中小企業の情報セキュリティ対策への取り組みを無料で自己宣言できる制度だ。一つ星(基本的な取り組み)と二つ星(組織的な取り組み)の2段階があり、一つ星は「デジタル化・AI導入補助金2026」の申請の必須要件、二つ星は加点対象となっている。詳しくは「SECURITY ACTION」サイトを参照してほしい。

 なお、2026年4月からSECURITY ACTIONの申請方法が変更された。詳しくは「申込みから管理まで一新!2026年4月からSECURITY ACTIONの申請方法が変わりました」が参考になる。主な変更点は同ページの一覧表にまとめられている。

 従来は申込フォームからログイン不要で申請できたが、現在は「GビズID」を取得し、SECURITY ACTION管理システムから申請する方式に変更された。 申請後すぐにロゴマークをダウンロードできるようになり、従来のように2~3週間待つ必要がなくなった。

 自己宣言の内容も一部見直されている。従来の「情報セキュリティ5か条」は「バックアップ」に関する項目が追加され「情報セキュリティ6か条」となったほか、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の内容も改訂された。

 取得したロゴマークは会社案内やウェブサイトなどに掲載でき、顧客や取引先に対するセキュリティ意識の高さをアピールできるため、企業ブランディングの観点からもメリットが大きい。

デジタル化・AI活用とセキュリティ対策は一体

 今年度下半期には、経済産業省とIPAが推進する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」が開始される予定だ。

 この制度は、取引先や委託先を含むサプライチェーン全体のセキュリティ対策を可視化・標準化するもの。委託元企業が委託先に求めるセキュリティ対策レベルを段階的に示し、その実施状況を確認できるようにすることで、サプライチェーン全体のセキュリティ水準向上をめざしている。

 近年はサプライチェーン経由のランサムウエア被害や情報漏えいが相次いでおり、セキュリティ対策は大企業だけでなく中小企業にも求められるようになった。今後は、この評価制度における「★」の取得が、企業の信頼性や取引先選定の判断材料として活用される基準になっていくだろう。

 こうした状況を踏まえると、「デジタル化・AI導入補助金2026」のセキュリティ対策推進枠を活用し、早い段階からセキュリティ体制を整備しておく意義は大きい。セキュリティ対策には資金や専門知識が必要なため、利用できる支援制度は積極的に活用したいところだ。特に「デジタル化・AI導入補助金2026」のセキュリティ対策推進枠は★3、★4をめざす目的も含まれており、今年のうちに利用しておくとよいだろう。

 今回取り上げた「デジタル化・AI導入補助金2026」は、補助金を受け取って終わる制度ではない。事業計画の実施や効果報告、賃上げ要件への対応など、継続的な取り組みが求められる。デジタル化やAI活用は継続的な運用や改善によって成果が生まれる。

 今後は、AI活用による業務効率化、生産性向上、そしてセキュリティ対策を一体的に進めることが重要になる。今回の補助金を単なる導入支援策としてではなく、企業の将来に向けたデジタル戦略の第一歩として、正しく活用したいものだ。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=青木 恵美

長野県松本市出身。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「自分流ブログ入門」「70歳からはじめるスマホとLINEで毎日が楽しくなる本」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経xTECHなど。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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