ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
米国時間6月25日、マイクロソフトがオンラインイベントで次世代のWindows OS「Windows 11」を正式発表して話題を呼んだ。2015年以来6年ぶりのメジャーアップデートだ。
Windows 10は、マイクロソフト自ら「最後のWindows」と宣言していたが、今回それを撤回した形となる。実をいえば、もともと「Sun Valley」(サンバレー)というコードネームで開発されてきた今年後半提供予定のWindows 10のアップグレードバージョンが、Windows 11として提供されることとなったのだという。
Windowsの初リリースは 1985年11月20日。それから35年間、多くの人々の仕事や生活を共にするパソコンのOSとして親しまれてきた。今回の発表イベントでは、青とグレー基調の落ち着いたUI、必要な情報にすぐにアクセスできるウィジェット、ウインドウを一瞬で並べ替えられるスナップレイアウト、Androidアプリが使える新しいストアなど、新機能が次々と紹介された。
特にコロナ禍で、生活や仕事における人と人とのつながりに、パソコンをはじめとするIT機器が大きな助けとなった。テレワークやおうち時間の増加で、改めて「人とのつながり」を重視したコンセプトでの新OSのスタートとなった。
Windows 11の正式提供は2021年後半を予定。Windows 10からの無償アップグレードも準備されるという。
Windows 11の概要は、「大切な人やことをもっと身近に感じられる体験をお届けします」というキャッチフレーズと共に、Webサイト「Windows 11 登場」にまとめられている。
Windows 11は、ごく自然に、考える、表現する、創り出す場を提供できるよう、インターフェースを一新した。ウインドウはグレーを貴重とし、角を丸くした落ち着いた雰囲気に変わった。タスクバーのアイコンは中央ぞろえとなり、スタートメニューも画面中央に表示されるようになった。キーボードやマウスに加え、タッチ、ペン、ボイスによる操作も強化される。
複数のウインドウを再配置できるスナップレイアウトで、作業やメディア、つながっている人などをすぐに一覧できるほか、優先する作業をメインにしたレイアウトにもすぐに切り替えられて、マルチタスクをより効率的に行えそうだ。
新機能のウィジェットは、興味のあるニュースや必要な情報にすぐにアクセスでき、スマホ的な即時性が実現できそう。タスクバーのアイコンからすぐに、家族や知り合い、仕事相手に相手のメディアを気にせず連絡が取れるのも、オンラインでの連絡が定番になった今日この頃便利そうだ。
エミュレーターでモバイルアプリをデスクトップに開き、最新情報やゲームの進捗をチェックしつつ作業するのがマイブームな筆者には、Androidアプリが標準で扱えるのはうれしいところ。ただし、AndroidアプリはAmazonアプリストアからの入手というのが、気になる点ではある。
自宅で楽しめるゲームや、オンラインで対戦できるゲームにも注目が集まった流れもあり、好きに環境を組めるパソコンでハイクオリティーなゲームを楽しむ人も増えている。YouTubeのゲーム実況もパソコンを使う人が多い。そんな流れもあり、Xbox Game Passのゲームの数々を現実さながらの高性能なHDRグラフィックで楽しめるのもなかなか魅力的だ。
現行のWindows 10は、期間限定で8からの無償アップグレードが提供されていた。Windows 10の盛況と長命は、この無償アプデが原因の1つだと思う。
Windows 11の動作要件は、1ギガヘルツ (GHz) 以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサまたはSoC。そのほか、4GB RAM、64GB以上の記憶装置、UEFI(セキュアブート対応)、DirectX 12以上(WDDM 2.0)に対応したグラフィックカード、などとある。
Windows 11発表直後から持ち切りなのは、32bit CPUとTPM2.0非搭載のパソコンを“対象外”にしたという話題。Windows 11が動く64bit CPU/SoCは、IntelならCore 2 Duo(一部を除く)以降、AMDならAthlon 64以降となる。ただしCPUに関しては、ほぼ64bitに移行済みで32bitを使い続けている人は少ないと思われ、さほど問題とは思えない。大きく問題にされているのは「TPM2.0」だ。
TPM(トラステッドプラットフォームモジュール)は、マザーボードやCPUに組み込まれる暗号化キーやユーザー認証などの機密データをハードウエアで保護するセキュリティ・チップだ。マイクロソフトは「2016年7月28日以降に出荷されるすべてのWindows10デバイスはTPM2.0の搭載が原則として必須」としており、それ以降のパソコンならおおむね対応と思われる。
Windows 10の無償アップグレードでは、8や8.1で使っていたパソコンのほとんどが10にアップデートできたが、11はどうなのだろう。Windows 11 登場の「互換性の確認」から、チェックアプリをダウンロードして仕事用のパソコンをチェックしてみた。すると「このPCではWindows 11を実行できません」と出てしまった。2014年のPCなので、まあ当然ともいえるが…。
先ほどのチェックツールは「互換性の確認が取れれば、提供時に無料でアップグレードができます」とある。ならば、このツールで確認が取れなければアップグレードできない、もしくは提供されないと受け取れる。ところが間もなく「互換性の確認」アプリは「準備中」表示になってしまい、以降、10日以上そのままだ(執筆現在)。
チェックツールで「実行できません」と出たという投稿をSNSでたくさん見た。その揚げ句の「準備中」だ。評判を見て取り下げたのでは、という臆測を呼んだ。もしかしたらシステム要件の見直しなど方向転換を模索しているのでは、という見方もある。
そういえば、Windows 10や8以前、長く使っていた人が多いWindows XPだが、XPの後に出されたWindows Vistaを覚えているだろうか。新しい機能やデザインで画期的と発表されたが振るわず、ユーザーは増えなかった。Windows 10は、長く使い続けているユーザーも多く、XPの立ち位置と通じるものがある。Windows 11はVistaの二の舞にならないように祈りたい。
それぞれのメーカーサイトではWindows 11の互換性を公開している。格安で入手したものでも11対応となることも多いので、最近、パソコンを買い替えた人は今のうちにWindows 11導入ができるかどうかを確認しておくとよい。これからパソコンを新しくする人は、Windows 11導入を見据えてあらかじめ11対応となるパソコンを探しておくのもよいだろう。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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