IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第7回) YouTubeで世界征服・ピコ太郎。企業も利用すべき

IT・テクノロジー

公開日:2016.11.15

 ピコ太郎がYouTubeにアップロードした動画が世界中で話題だ。再生回数世界一、全米ビルボードソングチャートにランクイン。ギネス記録にも認定など、その勢いはとどまることを知らない。

 動画は言語に関係なく世界中の人々に注目される可能性を秘めている。YouTubeはそんな動画を個人でも企業でも公開できる。企業でも活用しない手はない。

 ピコ太郎は、芸人でDJでもある古坂大魔王がふんする。表向きは、古坂が発掘してプロデュースする別人アーティストだ。自ら制作した「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」を動画共有サイトYouTube上に公開したのが今年の8月25日。聴いていて癖になるラップ風のサウンドと分かりやすいパフォーマンスがネット上で話題となった。

 このPPAP、シンプルな詞と動きで誰でもまねしやすいのが特徴。多くのユーザーが「やってみた」「歌ってみた」動画をアップし、人気の加速につながった。さらに、歌詞が英語だったことで、海外にも受け入れられた。9月25日、英語圏の面白動画サイト「9GAG」(ナインギャグ)に掲載。5時間で600万、8時間で1000万再生を超えたという(本人のツイートからの情報による)。

 BBCなどのメディアにも紹介されて注目を浴び、さらにその後、人気アーティストのジャスティン・ビーバーがTwitterで「ボクの好きな動画だよ」と紹介したことで飛躍的に拡散した。ちなみにジャスティンはTwitterのフォロワー数世界第2位、その影響は絶大である。

 10月19日付けの米ビルボードのシングルチャートで初登場77位を記録、これは日本人として26年ぶり、7人目の記録である。さらに、「Shortest song to enter the Billboard Hot 100」(米ビルボードのホット100に入った最短の曲)としてギネス世界記録にも認定された。11月4日に出演したテレビの音楽番組で、「BBCなど、有名メディアから直接連絡が来て驚いた」などのコメントを残している。

動画メディアへの参加は意外に容易

 YouTubeの「You」はあなた、「Tube」は放送という意味で、誰でも放送局になれるというのがキャッチフレーズ。登録すると自分用の「チャンネル」(継続的な閲覧用ページ。動画を見て制作者に興味を持ったユーザーが「登録」ボタンを押すことで、チャンネルの新着がユーザーページや通知で知らされる)ページが割り当てられ、動画がアップロードできる。スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器が扱えるレベルなら問題なく作業できる。

 一般人がYouTubeに投稿した動画に、プロデューサーなどが注目したことにより、一般人から一躍世界的な有名アーティストになったといったサクセスストーリーも存在する。前述のジャスティン・ビーバーも、YouTubeに投稿した動画がきっかけで世界に見いだされたアーティストだ。ほかに、有名ロックバンドである「ジャーニー」のメーンボーカルに抜てきされたアジアの青年、アーネル・ピネダなどが知られている。

 YouTubeにはビューの数で報酬を得られる仕組みもある。これを利用して、自分の動画をYouTubeにアップして、日々の糧を稼ぐ「ユーチューバー」なる職業も存在する。テレビ、ラジオ、雑誌などの従来型マスメディアの元気がなくなりかけている一方で、ネットメディアの勢いは今なお盛んだ。

 個人ばかりでなくYouTubeを効果的に活用している企業も多い。有名なのは米ジューサーメーカーのBlendtec。YouTubeの黎明期である10年前から、自社のジューサーでありとあらゆるものを「ブレンド」するパフォーマンス動画をアップし続け、人気を博している。有名なところでは、新型iPhoneが発売されるたびにジューサーにかける動画をアップし、その都度話題をさらっている。

企業でYouTubeをどう活用していくか

 日本企業もYouTubeを活用している。テレビCMを多く打つ企業が、テレビ用CMを単純にアップするだけでなく、テレビでの放送枠を超えたロング・バージョンや、メーキング映像を用意したり、歴代の人気CMをアップしたりして、動画を存分に活用しているケースが見られる。

 ほかにも、自社製品の使い方、活用レシピ、CEOのメッセージ、会社案内、社会活動の様子など、さまざまなものをアピールする手段に、多くの企業が活用している。

 「チャンネル」制度を利用して購読ユーザーを増やしていくことで、固定ユーザーの獲得や定期的な動画配信も可能。YouTube上にある動画は、URLをコピー&ペーストするだけで簡単にSNSに添えられるので、TwitterやFacebookなどでの拡散も容易だ。ユーザーが次々と拡散し、ねずみ算的に動画が広まる可能性もある。

 YouTubeはGoogleのサービスの1つなので、Google検索のSEO(上位表示)効果も期待できる。YouTube自体も検索機能に長けており、動画のアップ時に検索されやすいキーワードを含めると効果的だ。なお、海外も視野に入れるなら、英語など各言語バージョンも作っておけばよい。

 YouTubeにアップした動画は、自社のWebページにも簡単にはめ込める。データはYouTube上に置かれるのでトラフィックやストレージの心配もない。テレビCMのような広告料・放映料もかからずコスト面でもメリットが大きい。

 動画には、内容を分かりやすく短時間で伝達でき、文字や写真のみでは伝えられない「動き」や「音」などの情報を盛り込める。直感的に分かりやすく、印象にも残る。ピコ太郎の例が示すように、アイデア次第で大きく拡散することも期待できる。YouTubeを筆頭にネットメディアを舞台にした動画の活用は、大企業はもちろん、中堅・中小企業の広報・宣伝の魅力的な手段といえるだろう。

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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