IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第49回) LINE新機能「OpenChat」通知やまず退会できず

IT・テクノロジー スマホ

公開日:2019.09.26

 LINEのグループ機能を拡張した「OpenChat」が8月19日に開始された。ところが、開始直後、スマホの通知が止まらなくなり、退会したくてもできない不具合が発生。筆者も、主人のスマホが延々と通知を鳴らし続ける事態に遭遇した。通知は設定をオフにしても止まらず、トークルームからも退会できない。頭を抱えたユーザーは多数に上った。

 もともとOpenChatは、LINE IDや他のSNSにおける個人の連絡先や個人情報の交換、交際相手を求める行為、暴力的、わいせつな表現、営利目的の活動、権利侵害などが禁止されていたが、サービス開始時から出会い系的な利用やわいせつな画像の投稿、不適切な発言やスタンプの連打などの行為が相次いだ。

 運営側は、サービス開始当日である8月19日、安心安全な利用環境の維持のため、24時間365日監視を行い、違反トークルームや投稿の削除、違反ユーザーの強制退会、LINEの利用停止などの措置を行うと発表した。

 翌20日には「トークルームから退会できない場合の対処方法」を案内。通知に関しては、トークルームに参加する際、デフォルトでオンになっていた通知設定をオフに。トークルーム内でのスタンプ連打に関しては、一定数でOpenChatが一時的に利用できなくなる仕様に変更した。

 さらに、トークルームの検索機能、メイン画面でおすすめトークルームへのリンクを表示していた「ピックアップ」も停止した。

「OpenChat」とは匿名でオープンなトーク

 OpenChatのトークルームは、LINEユーザーなら誰でも作れる。5000人まで参加可能(既存の「LINEグループ」機能は500人までの招待制)だ。トークルームごとに自由なプロフィールを設定できる。トークルームの招待はURLやQRコードで行えて、広い範囲での勧誘が可能という、なかなかユニークなもの。これまでの交友関係よりも、幅広い人とのコミュニケーションに活用でき、スピーディーな情報収集が可能というフレコミだ。

 例えば保育園のママ友グループを作る、最新ゲームの攻略方法を交換する、好きなアイドルやサッカーチームの話題で盛り上がる、イベントの情報をリアルタイムに交換するなど、シチュエーションに応じて自由自在なコミュニケーション・グループを作成して楽しく盛り上がれる。トークルームの形態は、「オープン」「管理人の承認」「パスワードを設定」という3つから選べる。

 通常のLINEのクローズドなコミュニティーと正反対の、まさに“オープン”な“チャット”。LINEはなかなか面白いことを始めるんだなと、発表のリリースを見て思った。

なぜこんなことが起こったか

 「OpenChat 安心安全ガイド」にあるように、「LINE IDなど個人の連絡先は絶対に交換しない」「不適切な言動は行わない」「営利目的の活動や権利を侵害する行為は行わない」など、ルールがあらかじめ決められていた。なぜこんなことが起こったのか。

 筆者が思うに、普段LINEでは家族や友人、学校や仕事仲間などとのクローズドなコミュニケーションを行っている。そこには現実のしがらみや立場が付きまとう。ところがOpenChatは匿名で、参加者も最大5000人だ。ちょっと規範に外れた行為をしても許されそうな雰囲気や集団心理があったのでは、と思う。

 30代後半以上のユーザーなら、2ちゃんねるなどで匿名掲示板の何たるかはほぼ知っている。匿名といえども、運営側からすればユーザーをたどれ、違反行為は罰せられる場合もある。主に匿名掲示板に免疫のない若い世代に「匿名=個人が特定されない」誤解があったのではないかとも考えられる。

 LINEのユーザー数は膨大で、年齢層は多岐にわたる。非公開トークルームへの参加や作成、トークルームの検索については、未成年(年齢未確認)は利用不可なものの、全体公開のトークルームであれば参加が可能なのも、今回の事態を引き起こした要因の1つかもしれない。

どう利用していくのがいいか

 こうした事態に、運営側が急きょ、対策を行ったのは先述の通りだが、開始からほぼ1カ月たった時点でも、アプリのOpenChatの検索窓とトークルームのリンクはオフのまま。できるのはトークルームの作成のみだ。

執筆時点でのOpenChatのホーム

 作成したトークルームは、LINEで友達に告知するか、SNSやホームページなどでリンクやQRコードを公開して告知するのみ。OpenChatに参加したければ、誰かから教えてもらうか、検索エンジンで見つけて参加するしかないのが現状だ。

 筆者には、こうした事態を運営側が予測できなかったのか、疑問が残る。雰囲気にのまれ、つい行った違反行為で退去させられるならともかく、LINE利用の停止となったユーザーもいるという。今どき、LINEが使えなくなれば、人間関係にも影響を与えかねない。

 ネットの世界、新サービスは続々と提供される。先日の「7pay(セブンペイ)」の件では、セキュリティの甘い仕様が原因で不正アクセスが相次ぎ、サービス中止となったのは記憶に新しい。人間のやることだからミスはあり得るが、もっと万全の態勢でサービスを開始できなかったのかと思う。

 検索が再開されないLINEのOpenChatの今後は不明だ。LINE公式ブログやTwitterのOpenChat公式アカウントで最新情報がアナウンスされる。気になる人は、チェックするとよい。

 こうした事態が相次ぐ昨今、ユーザーはあらゆる可能性を考え、慎重になるのを求められるだろう。導入や参加の際は、ガイドやヘルプをよく読み、ルールを守る。最新情報をチェックして、不備や不具合をできるだけ被らないように気を付けたい。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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