脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第98回)
"トンネル"を抜けてデータを安全にやり取り
会社の拠点間で重要データをやり取りする際、どうすれば安全を確保できるのか分からない。どうしたらよいのだろうか? そんなIT初心者の社長にも分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、ちょっと聞いただけではネットワーク用語とは思えないかもしれない「トンネリング」だ。
「社長、ネットワークに『トンネリング』という技術が使われているのを知っていましたか?」(総務兼IT担当者)
「トンネル? そういえば最近、電車や新幹線の中でも通信が途切れにくくなったな。前は長いトンネルに入ると、つながらなかったし」(社長)
「道路や鉄道のトンネルではありません。ネットワーク上に外から見えない通信経路を設け、安全にデータをやり取りする技術をトンネリングと言います。VPN(仮想閉域網)でも利用されています」
「VPNは聞いたことがあるが、トンネリングは知らないな。詳しく説明してくれるか」
トンネリングとは、ネットワーク上に外部から見えないデータ(パケット)の通り道(トンネル)を仮想的に設けて通信する技術です。データをパケットごと暗号化し、カプセル化して送る技術を用いて、安全にデータをやり取りできます。主な種類は、企業の拠点間接続などに用いられる「IPsec」、ブラウザとサーバー間のアクセスや、リモートアクセスVPNなどで利用される「SSL/TLS」などがあります。

VPNは、トンネリングとデータのカプセル化・暗号化によって通信のセキュリティ性が高められている
Q なぜVPNには複数のセキュリティ技術が用いられているのですか?
インターネットを介してデータをやり取りする場合、悪意のある第三者がデータを盗聴したり、改ざんしたりするリスクがあります。通信の秘匿性や安全性を担保するために、VPNには複数の技術が取り入れられているのです。
Q VPNにはどんな種類がありますか?
VPNの主な種類としては、インターネットVPN・エントリーVPN・IP-VPN・広域イーサネットの4つが挙げられます。このうち、拠点数が比較的少ない企業の利用に適しているのがインターネットVPNです。IPパケットの暗号化と認証を規定したIPsecというトンネリングの手順を用い、インターネット上で安全にデータをやり取りできます。一方、拠点数の多い企業ではIP-VPNが採用されるケースが多いです。この場合、第三者がアクセスできない閉域網にVPNを展開し、安全に拠点間の通信が行えます。VPN導入時には、通信事業者に相談の上で自社に合った種類を選びましょう。
Q VPN利用について何か注意点はありますか?
VPNは安全性の高い通信方法ではあるものの、適切な運用やセキュリティ対策がなされていないとセキュリティリスクが高まります。VPN機器の脆弱性を狙ったサイバー攻撃や、パスワード流出による不正アクセスなど、VPNにまつわるセキュリティ事故も多数発生していますので、VPN導入時には十分注意が必要です。また、インターネットVPNにおいては、データの暗号化処理に時間がかかり、通信速度が低下する傾向にあります。特に大量のデータを扱う際にその傾向が表れやすくなるため、必要に応じてVPN設定の見直しや通信回線の増強などを検討するとよいでしょう。
「トンネリングのこと、理解していただけましたか。社長が外出先から社内にアクセスする際のインターネットVPNにも使われています」(総務兼IT担当者)
「なるほど、安全に通信するには必要な技術、ということだな。それはそうと、君は私に何か隠し事をしていないか。最近、報告が少なくなったように気がするんだが」(社長)
「ぎくっ。そうですか? 気のせいだと思いますが......」
「それならいいが......。なんとなく、社内にトンネルのような抜け道を作っているんじゃないかと思っただけさ」
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=山崎 俊明
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