IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第10回) トランプ大統領のSNS術をビジネスへ活用する

IT・テクノロジー

公開日:2017.02.10

 2017年1月20日、正式に米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。前年に行われた大統領選挙で、トランプ氏は、ソーシャルメディア(SNS)をうまく活用した。実際、トランプ氏は当選後のテレビ出演で、SNSが大きな助けになったと語っている。

 トランプ氏が主に使っているSNSであるTwitterアカウント「@realDonaldTrump」のフォロワー数は現在約2400万人。大統領選当時は1500万人だった。トランプ氏がほんの140文字つぶやくだけで、それだけの人数のタイムラインにリアルタイムでツイートが届くのは、なかなか驚異的だ。

 特に、140文字という短文でつぶやくTwitterにおいて、「数が力」(フォロワー数が大きな力)となるのは、この連載で以前取り上げたピコ太郎のPPAPの世界的大ヒットがいい例だ。フォロワー数世界第2位のジャスティン・ビーバーのツイートが大ヒットのきっかけとなった。

 ただし、トランプ氏のSNSでの発言は独特だ。「炎上」を狙っているのではないかと思えるほどだ。自分を批判した人物を見境なく攻撃したり、感情的な暴言を吐いたり、衝撃的な発言を繰り返したりして、周りをハラハラさせる。しかし一方で、トランプ氏のツイートは演技でありパフォーマンスである、という見方をする人もいる。

企業でSNS活用をするとトランプの意図が分かる!?

 特に中堅・中小企業には、SNSの活用をお勧めしたい。自社の事業や製品を広く告知したいと思っても、広告への支出はなかなか厳しい。半面、SNSは基本的にコストがかからない。

 まず1つめはトランプ氏も使っているTwitter。全世界のアクティブユーザー数が3億強で、日本のユーザー数は3500万人。簡潔で気軽な情報をリアルタイムで多数の人に伝えることができる。ただし、文字数制限により細かい情報を伝えづらい、オンタイムが基本なので情報がすぐ流れてしまいがち、などの弱点もある。

 もう1つがFacebookだ。中でも、企業、ブランド、組織、著名人がFacebook上で情報を発信し、人々とつながることができる「Facebookページ」(通常の個人ページとは別機能。詳しくはヘルプ参照)は、企業が丁寧な情報を固定ユーザーに伝えていくのに適しており、利用しない手はない。Facebookページは、ページを見て気に入ったユーザーが「いいね!」ボタンを押すと、ニュースフィードを通じていつでも最新情報を知ることができ、コメントなどでの交流も実現する。例えば、伊豆の「伊豆・稲取温泉 食べるお宿 浜の湯」のFacebookページの「いいね!」数(=フォロワー数)は約3万5000。これだけの数の人が、自分の友だちとのやりとりと同列に並ぶFacebookニュースフィードで浜の湯からの情報を受け取り続けている。このフォロワーとの関係が、集客に結びつくのは想像に難くない。

 ここで気を付けなければならないことが1つ。SNSは自社を知らしめる有効な手段ではあるが、「SNS=広告」ではない。あくまで人と「つながる」メディアであって、一方的に情報発信を行っても効果はない。SNSは皆が平等、ホンネで語り合う場所だ。そこに企業が事業や商品を宣伝しようとすると、その「売らんかな」姿勢がかえって人の気持ちを遠のかせてしまうだろう。

成功例に学びつつ、自社なりに工夫していこう!

 企業はぜひSNSの活用を、と今までもよくいわれてきた。しかしSNSアカウントを作ってみたものの、フォロワーや「いいね!」の数が伸びなかったり、効果があまり感じられなかったりした企業は多い。そんな流れで、行き詰まっている企業から筆者はよく相談を受ける。

 あまり難しく考えず、「人とつながる」をテーマに、実例を参考にしつつ、自社なりの心や誠意を持って試行錯誤していくしかない、と筆者は思っている。質問や相談に快く答えたり、自社や自社の製品について発言してくれる人にコメントを返したり、親しみやすいキャラづくりで情報発信したりするのが基本だ。

 実例を紹介しよう。Twitterでは、NHK広報局が“お堅い”イメージのNHKらしからぬ、ゆるふわなツイートで人気を博している。ソフトバンクの孫正義氏など、社長自らがツイートしたりユーザーと交流したりする企業は、より親しみを感じさせる。他にも、「シャープ」「タニタ」「キングジム」「セガ」の公式アカウントが、これまたゆるいツイートで交流して話題になるなど、ユニークな運用が目をひく。

 Facebookページでは東京の土屋鞄製造所や、鹿児島の本格薩摩焼酎 宝山がこだわりや愛情が細やかに伝わり参考になる。日々の情報のほか、チェックインするお客様のアニバーサリーボードを、写真で掲載するアイデアがユニークな石川の加賀の宿 宝生亭も面白い。

 他にもさまざまな実例を探して参考にしつつ、自社に合ったSNS活用法を探っていこう。そんなふうに見ていくと、トランプ氏のツイートも、人間臭さを伝えて人々に親しみを持ってもらうのが目的なのかな、と思えてくるのでは?

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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