ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
スマートスピーカーとは、マイクに向かって話しかけると、音楽を再生したり、ニュース、天気、スケジュールを読み上げたり、質問に答えたり、さらにはシャッターや鍵の開閉、家電などもコントロールできたりする「賢い(スマートな)スピーカー」だ。スマホやタブレットなどのモバイル機器にSiriやGoogleアシスタントといった、対話型のAIアシスタントを搭載し、IT機器に不慣れな年齢層でも音声のみで気軽に使えるのが魅力だ。
米国では2014年にアマゾンが「Amazon Echo」を発売した。これを皮切りに、グーグルやアップルなどが自社の対話型AIアシスタントを搭載し追従。なかなかの人気と普及率を誇る。日本でもアマゾン、グーグル、LINEなどからスマートスピーカーが発売されている。そのあたりは昨年、このコラムに書いた。
ただしこのスマートスピーカー、普及していくうちに“やはり音声のみでは不便”という声も出てきている。筆者も3社のスマートスピーカーを入手し、いろいろ便利に使ってきたが、音声での情報のやり取りに限界を感じ、目で見て確認できる手段が併用できればいいのに、と思っていた。
そんな需要もあってか、アマゾンからディスプレー付きのスマートスピーカー「Echo Spot(エコースポット)」が発売され、7月から国内の販売も始まった。筆者も早速購入し、愛用している。そんな表示付きスマートスピーカーの実力を探ってみよう。
アマゾン、グーグル、LINEのスマートスピーカーを使ってきて、一番重宝しているのがリマインダーだ。出掛ける用事やしなくてはならないことを音声で伝えてもらうもの。ところが、作業に集中していたり、席を立っていたりで聞き逃しが相次いだ。聞き逃しても情報を表示してくれたら、と思っていた。そんなときに海外で表示付きのスマートスピーカーが発売。この話を聞いて、うらやましく思った筆者。日本でも発売されるのが決まり次第、すぐ予約。7月に入手した。
エコースポットは、ディスプレーが2.5インチと小さく、普段はアナログ時計を表示している。ちょっとした目覚まし時計のようなビジュアルだ。スクリーンはタッチ対応で、項目を選んだり、キーボード入力ができたりする。
アマゾンのエコースポット。2.5インチの画面は普段アナログ時計を表示している。上からスワイプすると、設定メニューが表れる
重宝するToDoリストや買い物リストは、ビジュアルで眺められる
タッチスクリーンでキーボードを表示したところ。表示はもちろん、編集も行える
使っていくうちに、小さなディスプレーがあるのとないのとでは大違いだと実感した。リマインダーが音声お知らせした後は、指でスワイプするか「アレクサ、ホームに戻って」と言わない限り、テキスト表示が残る。聞き逃したとしても、目で確認できるわけだ。
基本的に情報がテキストや画像で補足され、より確かなものとして自分に届けられる。検索は写真が表示され、「ああこれ」「ああこの人」とひと目で分かる。リストや候補もディスプレー表示で一目瞭然(りょうぜん)。指でスクロールして再確認できるし、修正や編集も可能だ。まさに圧倒的な進化を感じる。音声のみでは買い物もままならなかったが、エコースポットでは候補が次々に表示され、ゆっくり情報を確認して買えるようになった。
スピーカーという性格上、最も使用頻度が高いのは音楽かも。何を再生しているかは、ディスプレーをスワイプすれば、アートワーク付きで表示される。「○○(アーティスト)の曲を表示して」と言えば、アートワーク付きで候補を表示、指でスワイプして選んで聴ける。曲は歌詞付きで表示され、カラオケの練習にもよい。歌詞の好きな位置をタップするとそこから聴ける。繰り返し練習したいときに便利だ。
アマゾンのEchoシリーズは、サードパーティー各社が提供する「スキル」で、料理やニュース、ラジオやファイナンス情報、占いなどを追加できるが、例えば「クックパッド」など、ディスプレー対応のスキルも多く提供されている。表示や動画を見ながら、音声1つで手順の確認もできて、手の放せない料理には最適だ。
エコーで家族同士はもちろん、エコーを持っている知り合いとメッセージを送り合える。ディスプレーとカメラが付いたエコースポット同士なら、テレビ電話もできる。これらのやり取りに、お金はかからない。もしかしたら電話が要らなくなるかも、ともいわれている。
海外では、目覚まし時計サイズの「Echo Spot」以外に、7インチのディスプレーを備えた「Echo Show」、8インチまたは10インチのディスプレーを備えたGoogleアシスタント搭載の「Lenovo Smart Display」、同じく8インチディスプレーの「JBL LINK VIEW」が発売されている。これらはディスプレー部分が大きく、スマートスピーカーの一種だが「スマートディスプレー」とも呼ばれる。
今のところメーカー純正はアマゾンのみで、あとはサードパーティー製だ。今後、グーグルやアップルなども純正のスマートディスプレーを発売する話もあり、楽しみだ。やはりエコースポットの表示は簡易なもの。もっとたくさんの情報を見渡せれば、1週間分の天気を表示させるなど、より便利になっていきそうだ。
そうそう、アマゾンの、7インチのディスプレーを備えたEcho Showは、国内でも12月12日に発売が決まり、前述のごとくさらなる進化した情報端末として重宝しそうだ。居間はShow、書斎や寝室はSpot、などと使い分けるのもよいかもしれない。
さらにアマゾンでは、自社のFireタブレットの8インチと10インチのタイプに、専用スタンドを立て、スマートディスプレーとして使える仕組みも提供する。国内では未対応だが、近い将来、対応するだろう。タブレットとしてWebブラウジング(Webサイトなどを閲覧すること)やSNS、電子書籍やゲームを楽しみつつ、普段は立てておきスマートスピーカー代わりに使う、という新しいスタイルも期待できる。
音声でのやりとりを補完する、ディスプレー付きの利点は書き切れない。これから買うなら、必ずディスプレー付きにすべしと断言できるほどだ。取りあえず今は選択肢があまりないが、今後多くのモデルが出てくれば、シチュエーション別に使うのも楽しみだ。そういえばアマゾンでは、スマートスピーカー・スマートディスプレー以外にも、FireTVや自動車、あらゆる家電、あらゆる機器に音声AIのAlexaを組み込む計画だという。音声ひとつでさまざまなことが実現できる、まさに未来的生活がすぐそこまで来ている。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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