ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
デジタル庁は10月26日、政府と地方自治体のクラウド基盤「ガバメントクラウド」対象のサービスとして、「Amazon Web Services」(AWS)と「Google Cloud Platform」(GCP)の2つを選んだと発表した。今回、クラウドサービスに求める要件を満たす事業者を公募、要件を満たす全てのクラウドサービスと契約するとしていた。
公募について詳しくは、デジタル庁の「デジタル庁におけるガバメント・クラウド整備のためのクラウドサービスの提供」から参照できる。公募の事業内容は「地方公共団体の主要17業務における標準化等を検討する先行事業を実施するためのクラウドサービス及び関連サービスの提供」と「各府省庁のウェブサイトのデザインやコンテンツ構成等の標準化・統一化を図る予定のデジタル庁ウェブサイトに向けたクラウド環境の提供」とある。
公募対象は、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP(イスマップ)」に登録されているクラウドサービスで、調達仕様書の要件を満たすクラウドサービスを運営する事業者。ISMAPに登録されたクラウドサービスのリストはここから参照できる。
この公募でアマゾンとグーグルという非常に有名な米国の2事業者が選ばれ、「国内にも企業やサービスはたくさんあるのに、なぜ?」というささやきも聞こえる。公募には3件の応募があったというが、選外の1社は公表されていない。
ISMAPクラウドサービスリストには国内企業も少なからず名前が見えるが、今回、応募に至らなかった理由はそれぞれあるだろう。「DX白書2021」の日米比較の統計や国内の状況を鑑みると、今のところこの2社という選択は、無難なところかもしれない。
デジタル庁の10月26日の会見で、牧島デジタル大臣は「まずはこの2つのクラウドサービス事業者と協力して、この後、紹介する地方自治体の先行事業や、デジタル庁Webサイトの移行を進めていこうと思っております」とコメント。国内企業不在に関する質疑に「選定基準を満たす国産企業がしっかりと育っていくということを1つの可能性として感じているところです」と応答、今後の公募への期待の姿勢を明らかにした。
そもそもガバメントクラウド(Gov-Cloud)は「デジタル・ガバメント実行計画」(令和元年閣議決定)に基づく政府と地方自治体のクラウド基盤構想だ。「政府の情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境であり、早期に整備し、運用を開始すること」をめざす。政府関係機関はもちろん、地方自治体の情報システムも、ガバメントクラウド(Gov-Cloud)を活用できるよう、具体的な対応策や課題について検討を進めている。
「地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(案)」によれば、地方自治体がガバメントクラウドの活用により、コスト削減、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張、庁内外のデータ連携、個別のセキュリティ対策や運用監視が不要となる、という4つのメリットがあるという。具体的には住民記録、地方税、介護や福祉といった地方自治体の主要な17基幹業務システムを、2025度末までにガバメントクラウド上で提供される標準システムに移行するのをめざす。
10月26日の会見では、地方自治体によるガバメントクラウド先行事業の公募における採択団体が発表された。公募には52件という多くの応募が寄せられ、神戸市、倉敷市・高松市・松山市(3市合同)、盛岡市、佐倉市、宇和島市、須坂市、美里町・川島町(2町合同)、笠置町の8件が選ばれた。この8件で、全国の自治体がガバメントクラウド標準準拠システムを安心して利用できるよう、移行に関わる課題を検証する先行事業を行う。
コロナ禍におけるワクチン接種予約を例にとっても、自治体ごとに違うシステムやリテラシー不足対応で混乱を招いたのは記憶に新しい。ガバメントクラウドの指針のような「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の一刻も早い実現を望むものである。
我々は個人として、各省庁の発信する情報のチェックや自治体での戸籍をはじめとする各種手続き、医療や福祉、申告や税務、補助金申請などで、今後さまざまな影響を受けることになる。
企業においても、デジタル行政関連の動きを定期的にチェックしていくと有利だ。ガバメントクラウドに関しては、今回採択の企業およびISMAPのリストは基本的に「政府のお墨付き」ともいえるわけで、自社のサービス選びやシステム構築の基準にもなりそうだ。
デジタル行政関連の情報は「e-Gov ポータル」が有用だ。行政機関が発信する政策・施策に関する情報、行政サービス、各種オンラインサービスなどに関する情報を提供するのを目的としてデジタル庁が整備、運営している。特に「デジタル行政」が参考になる。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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