IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第26回) 安倍首相も意識「インスタ映え」

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公開日:2018.02.19

 安倍首相は昨年末の12月19日、内外情勢調査会で、優先課題として掲げる「地方活性化」について、「地方活性化の鍵はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にあります」と述べた。「インスタ映えが鍵となる」ともコメントしたという。ちなみに安倍首相は12月15日にインスタ(Instagram)のアカウントを開設した。最近、若者に大人気のインスタとは、そして安倍首相の発言にもあった“インスタ映え”とは何か、そして、Facebookよりも有効といわれるインスタを使ったビジネス戦略にも迫ってみたい。

 「地域活性化の鍵はインスタ映え」という安倍首相の発言。インスタで映える、美しい風景やユニークなオブジェ、話題の光景などを広く知らしめて訪問者を増やし、地方活性化を進めようという意図は、インスタを愛用する若い世代をはじめとする広い年齢層に、アピールしようとする積極的な姿勢がうかがえる。

 国内はもとより海外からの観光客も増えつつある昨今だ。インスタは外国人のユーザーも多い。インスタ向けにアピールしていけば、地方の一名所がたちまち世界的な人気スポットにのし上がる可能性もある。

 安倍首相のインスタだが、今でも定期的に更新されていて、自らの写真で国民と交流を図っている。国内外問わず、インスタのユーザーであれば、誰しもハートやコメントを付けられる。インスタは今どきのSNSで一番の注目株ゆえ、目の付けどころは悪くなく、その姿勢は評価したい。今後も温かく見守っていければ、と筆者は思っている。

 インスタは、2人のスタンフォード大学卒業生が開発した。その名称は「インスタント」(即時)と「テレグラム」(電報)を組み合わせた造語である。スマートフォンのインスタアプリを起動。ポラロイドなど、インスタント写真をイメージさせる正方形(現在は縦長や横長の写真も投稿可能)で、風景や花、料理、自撮りなど、好きな光景やオブジェを撮影する。撮った写真にはトイカメラやポラロイドっぽい効果など画像加工を施せる。代わり映えのない日常も、工夫次第で独自の「インスタ・ワールド」に演出できるのが特徴だ。

 2010年10月にiPhoneアプリとしてリリース、12月には日本語など7カ国語に対応。3カ月で100万ユーザーを突破した。2012年2月には1500万に達した。2012年4月にAndroid版がリリースされ、直後にFacebookが買収を発表した(買収当時のユーザー数は3000万)。その後順調にユーザーを増やし、現在のユーザー数は8億人(日本のユーザー数は2000万人)といわれる。

そもそもインスタって何?

 他のSNSと同様、投稿を閲覧したいユーザーをフォローする。投稿には、「いいね」を意味するハートマークやコメントを付けて交流する。最近、メッセージや写真を特定のユーザーへダイレクトに送れる機能も付加された。さまざまな機能改善が随時施されている。

 最近の中高生は、今やメッセージアプリの定番となっているLINEは使わず、インスタのダイレクトメッセージや、一定時間で消えてしまうストーリーズ機能で日常のやり取りを行うという。これは、インスタの提供元も意図してなかった新しい使い方かもしれない。

 カメラ好きであり、中でもおもちゃ的な仕上がりが人気のトイカメラを愛する筆者は、インスタが出てきたとき、興味を持って使い始めた。最初は、トイカメラ風の写真が撮れるアプリと思っていたのである。使ってみたら、たくさんのハートマークやコメントが付いたので、SNSアプリだと気付いた。当時は日本人のユーザーはほとんどいなかった。友達は外国人ばかりだった。

 筆者は、2013年にコラムを書いているが、初期の頃の様子がうかがい知れる。当初からFacebookとTwitterに同時投稿が可能なのも、なかなか画期的だった。散らかった部屋やごちゃごちゃした街並みでも、正方形での思い切った切り取りと、トイカメラ効果を使えば生まれ変わる。今も筆者のSNSでの発信は、インスタが中心だ。

筆者のインスタページ(パソコンでの画面)。インスタを使い始めてかれこれ8年になる

Facebookより有効といわれる今どきの広報

 このところのSNSを使った企業広報を考えるに、Facebookでの広報は一時期よりは下火になったように思える。Facebook自体の存在や人間関係が重めで、若い世代に人気がないあたりが原因かもしれない。

 一方、企業公式アカウントでのTwitterを使った広報はいまだ衰えを知らない。ユニークなやり取りで親しまれる「シャープ」と「タニタ」が、何かと話題になったりするのも、Twitterでの企業広報が定番化している証拠だろう。2017年末にも、映画「君の名は」の地上波での放送に合わせて、両社が入れ替わるパフォーマンスが記憶に新しい。

 インスタの人気がうなぎ登りの昨今では、企業広報がTwitterとインスタのアカウントを並べて記載するケースが増えた。実際、目を引く写真でフォロワーを増やし、収益を上げる企業も多いといわれる。写真1枚で完結できて、ユーザーも莫大に増えつつあるインスタ、ビジネスに利用しない手はない。ちなみに豆知識だが、ユーキャン新語・流行語大賞2017の年間大賞を獲得した「インスタ映え」というコトバ、実は、味はともかく見栄えばかりが良い料理を作って投稿したり、大きなスイーツを頼んで投稿した後ほとんど食べずに捨ててしまったり、実際の風景の素晴らしさよりも写真映えする場所に殺到したりなど、見た目の美しさや派手さばかりを追求する姿勢を皮肉る意味でも使われる。

 そうそう、企業アカウントを開設してフォロワーを増やし1ユーザーの立場で広報を行う、というのがインスタによる広報の1つの在り方だが、もう1つ、インスタに広告を出す方法もある。広告は投稿に混じって、投稿のようにさりげなくユーザーに提供される方式で(もちろん「広告」という小さい文字は入るが…)、スマートでそつがなく、多くのユーザーに広く告知できて効果的だ。詳しくはFacebookのInstagram広告ページを参照しよう。

 そんな感じで、安倍首相も始めた今どきなSNSであるインスタに、注目しておいて損はない。使い方もシンプルなので、ライフログ的に始めてみるのもいいかもしれない。

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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