ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ビットコインがこのところ、値上がりが激しい。投資や運用、取引を検討してみたいと思えど、ビットコインとはいったい何か、インターネット上で運用される仮想通貨とは何なのか、説明できる人は意外に少なくはないだろうか。誰が作ってどこが管理しているのか、どういう仕組みで動いているのか、入手や取引はどうすればいいのか? 正体が分からなければ、手を出すのは怖い。今回はそんなビットコインを解説する。
仮想通貨とは、暗号通貨とも呼ばれるインターネット上のお金のことだ。実体はなく、コインや紙幣は存在しない。仮想通貨の中で主流なのがビットコインだ。ほかにも仮想通貨はイーサリアム、リップルなどがある。
仮想通貨の発案者は「サトシ・ナカモト」と名乗る人物。2008年11月に仮想通貨ビットコインに関する論文がサトシ・ナカモトにより発表された。その論文を読んで構想案に賛同した人たちが仮想通貨の仕組みを考え、2009年ごろに誕生した。
ビットコインは、基本的に各国の通貨やユーロのような、発行をつかさどる国や、流通を管理する銀行などの組織が存在しない。中央で管理する代わりに、コンピューターのネットワークを利用して通貨を管理する。その管理方法は、インターネット上に存在する1つの「ブロックチェーン」と呼ばれる大きな取引台帳にすべての取引を記録する、というユニークなシステムだ。
すべての動きを記録するので、ブロックチェーンの整合性を保つ追記作業には、コンピューターによる膨大な計算が必要となる。これらの計算は、有志のコンピューターリソースを借りている。有志がコンピューターの計算能力を提供し合って、みんなで共有する1つの大きな取引台帳を保持し、ビットコインが成り立っているのだ。
計算能力の提供を行った人には、報酬として仮想通貨が支払われる。この作業を「採掘(マイニング)」と呼ぶ。ただし無限に採掘できるわけではなく、あらかじめ発行総量が決められているのと、掘るにつれて計算の難易度が上がるなどで、採掘によるインフレや混乱は起こらない仕組みになっているという。
ビットコインをはじめとする仮想通貨を扱うメリットは3つある。1つは基本的に送金の手間が不要で、ユーザー間で直接の取引が可能なこと。通常、国や機関が扱う通貨で送金をするには、銀行などを仲介しなくてはならない。一方、仮想通貨は直接会って財布からお金を出して渡すような感覚で、直接相手にお金を払える。世界共通の通貨なので、両替が不要なのもメリットだ。
2つめのメリットは、仲介する組織が存在しないので、基本的に手数料を払う必要がないこと。通常の通貨なら、送金や支払いに手数料が必要となるが、仮想通貨はどんな大金であっても無料、もしくは安価な手数料(後述の取引所などに支払う)で決済が行える。
3つめのメリットは、煩わしい手続きや制限が存在せず自由にお金が使えること。例えば銀行なら営業日に縛られるが、仮想通貨なら土日祝日にかかわらず取引が可能だ。取引量の制限もない。取引は基本的にIDのみで行うので、個人情報やカード番号など外部に漏れたら問題となる情報を伴わずに取引できるのも特徴だ。
そうそう、最近ではヨドバシカメラなど、ビットコイン決済ができるお店や通販サイトが国内でも増えつつある。仮想通貨が広まれば、海外サイトなどからも即座に商品が購入できて、我々一般ユーザーにとっても、なかなか便利そうである。
ビットコインなどの仮想通貨にはウォレット(財布)という概念がある。通常の通貨でいえば、銀行口座に当たる。ウォレットには長い文字列の「ウォレットID」が割り当てられる。ビットコインを扱う人は、基本的にビットコイン用のウォレットを作成、ウォレットにビットコインを保存して決済に利用する。ウォレットは、bitFlyer、Zaif、Coincheckなどの仮想通貨取引所で作成し、取引所を通して取り引きを行う。
仮想通貨の入手は、日本円を取引所に入金して購入するのが基本だが、最近は取引所がビットコインのプリペイドカードを発行しており、買い物目的なら手軽に使えて便利だ。あと、PexやPointExchangeなどのポイントサイトや、クレジットカードでためたポイントの引き換えにビットコインを採用し始めている。今後ますます身近なものになりそうだ。
ほかに、前述の採掘による入手もあるが、筆者が手持ちのパソコンで行ってみたところ、1日数円~十数円程度の入手にとどまった。電気代を考えれば明らかに赤字で、電気代の高い日本ではあまり得策ではないと思われる。採掘は電気代の安い国で、膨大な数の採掘専用パソコンを連ねて行う、というのが成立の実態のようだ。
ところで、bitFlyerのリアルタイムチャートを見ると、ビットコインは12月初頭まで急激に上昇してきたものの、12月中旬から激しく上下を繰り返している。ここまで上昇したのは、新しい通貨の可能性への期待と、大きく相場が上がる気配から来る投資ブームでたくさんの投資家が動いたことに起因する。新しいシステムの仮想通貨は、今後の経済を大きく担う可能性があり、まだまだ投資のチャンスと捉える人も多い。
ただし、過去、ビットコインはハッキングや脆弱性、分裂騒動など、トラブルと捉えられる出来事もあり、今後何が起こるか分からない。取引や投資を行う際は、余裕ある範囲での運用にとどめるなど、慎重に行ったほうがよい。中国政府は脱税などの悪用を恐れ、ビットコインの取引を禁止したという。日本では通貨として認められつつあるものの、政府がどう動くかなどにも注目していこう。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
【T】
IT時事ネタキーワード「これが気になる!」