脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第98回)
"トンネル"を抜けてデータを安全にやり取り
埼玉県警察が、児童や生徒のサイバーセキュリティ知識の理解度を測る「サイバーテスト」を作成し、それが人気を集めて話題になっているとのニュースを読んで、筆者も興味を持ち、実際に挑戦してみた。このテストは、「埼玉県警察」ホームページの「暮らしの安全」→「サイバー犯罪」→「サイバーセキュリティを学ぶコンテンツ」のページに掲載されているものだ。
テストの紹介ページには、サイバー対策課による「サイバーセキュリティに関するゆっくり解説」や「サイバー犯罪被害防止ビデオ」の他、イベントなどで実施される「サイバーセキュリティすごろく」の案内もあり、そこに「サイバーテストの作成と活用」として紹介されている。
コンテンツの中で面白いのが「サイバーセキュリティに関するゆっくり解説」。スマートフォンを持ち始める時の注意点など、わかりやすいテーマが扱われており、最新回はすでに第13弾。内容は「闇バイト」「SNS型投資・ロマンス詐欺」「DoS攻撃」「偽サイト」など多岐にわたり、1頭身キャラが解説する子ども・若者向け動画風でありながら、大人にも十分に参考になる実用的な内容となっている。さらに、ゆっくり解説の他、ショート動画形式でも情報を提供、流行りのニーズにも合致している点が大いに評価できる。
さて、本題の「サイバーテストの作成と活用」に話を戻そう。
本題の「サイバーテストの作成と活用」には、「サイバーテスト(日本語版)」として、「ネットリテラシー」「闇バイト」「サイバー犯罪」「金融犯罪」「ランサムウエア」「オンラインゲーム」の6種類のテスト問題と解答がそれぞれPDF形式で用意されている。中でも「ネットリテラシー」と「金融犯罪」は英語版もあり、外国人ユーザーにも対応している点がまた素晴らしい。
筆者もさっそく「ネットリテラシー」テストに挑戦してみたところ、1問ミスで95点という、まあまあな成績だった。テストの2ページ目の最後には「保護者の皆様へ」という欄があり、このテストをきっかけに子どもたちと話し合うためのおすすめポイントが紹介されている。さらに家族の状況に応じた「家族のルール」を考えるよう提案、ルールの記入欄まで用意されているという周到さだ。
保護者が一人でやってみたり、子どもに受けさせたりするだけでも意味はあるが、親子や家族みんなでそれぞれテストをやってみたうえで、答えを持ち寄り話し合うことで、知識の共有やリスク意識の向上などにきっとつながるはず、と確信している。これら「サイバーテストの作成と活用」では、家族でサイバーセキュリティについて話し合い、啓発し合うことを目的として作られているが、その中で異色の内容となっているのが「サイバー犯罪」と「金融犯罪」の2つだ。
埼玉県警の「サイバーテストの作成と活用」において、「金融犯罪」「ランサムウエア」のテストは、子供向けというよりも、明らかに社会人向けと感じている。特に「ランサムウエア」は「サイバー犯罪から会社を守るために」という視点で構成されており、社会人が実施するのに最適だ。これに加えて「金融犯罪」も大人向けと判断されるが、その他「ネットリテラシー」など他のテストも大人の知識向上に役立ちそうだ。できれば6種類すべてに挑戦しておくのがおすすめだ。
筆者、「ランサムウエア」テストをやってみたが、こちらは悲惨な結果だった。その中でも多く間違えたのはアンケート結果のグラフを用いた項目で、「バックアップからの復元結果」が「復元不可」85%、「復元可」15%という現実や、「バックアップも暗号化された」ために復元できなかったという回答が66%もあるという現実に愕然とした。筆者自身、現状は以前よりももっと対策が向上していると考えていたため、この現実を見破れなかった。とりあえずこの現状には危機感を抱かざるを得ない。これらのテストは、全般にわたってだが、点数を取るというより、正しい事実や知識を知ることが大事なので、間違えても気にせず、よく理解しよう。
さらに、問題の中で重要なのは、「ランサムウエアによる被害発生後の対応を順番に並べる」問題だ。正解は「ネットワークから遮断」→「システム担当者へ連絡」→「役員を招集し、BCPによる対応」だった。筆者はまず「システム担当者へ連絡」と思ったが、まずは「ネットワークから遮断」するのは、やはり納得の基本だろう。ただし、ネットワークの遮断方法がわからない場合や、事情がよく理解できない場合、まずはシステム担当に連絡するのも手だ。そんなふうにいざというときの基本の流れを知っておくことが、実際の有事対応に役立つだろう。
どのテストもA4用紙2枚で完結、カラー挿絵やふりがな付きでわかりやすい。ただし、設問には間違いやすい選択肢も多く、注意深く考える必要がある。解答と解説をもとに現実と照らし合わせながら採点できるしくみで、セキュリティ意識を高める手段として非常に有効だ。
サイバー犯罪は生成AIなどを悪用しつつ、日々ますます高度化・巧妙化している。ランサムウエアの実例にも見られるように、リテラシーの低さは深刻で、企業の存亡にも関わる。これは個人の問題ではなく、組織全体、そして社会全体の課題と思う。
なお、サイバー犯罪、特にランサムウエア被害は、最近は中小企業や地方病院など地方の機関もターゲットにされる現状であり、会社が傾くほどの大きな被害や信用失墜などを防ぐためにも、サイバー犯罪対策は、気を抜かず大きく力を入れるべきものと思う。
企業であれば、社員のリテラシー向上のために講座や研修を行うべきだ。社内の情報システム部門が主導して実施するのもよいが、一部に負担が集中しすぎる懸念もある。そのため、外部ベンダーが提供する研修やソリューションを活用するのも一案だと思う。
また、セキュリティのすべてを社内で賄うのはなかなか困難ゆえに、専門機関や外部サービスに一部または全部を委託することも検討すべきと思う。特に緊急時には社員のみで対応するには限界があり、今のうちに専門家と連携する体制を整えておくことが望ましい。最寄りのベンダーや公共相談窓口などに相談し、自社に合った対応策を模索するとよい。
さらに、社員が家庭でもリテラシーを高め、家族とともにサイバー犯罪の実態を共有することも重要だ。特に高齢の親など情報が届きにくい層には、こうしたテストを一緒にやってみることやネット詐欺対策の他、電話詐欺・訪問詐欺などにも注意と啓発を行い、日ごろの安全を考えていくことも有効だろう。こうして一人一人が意識を高め、協力し合い、ときに専門家の力も借りながら、安心して暮らせる未来を築いていきたい。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=青木 恵美
長野県松本市出身。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「自分流ブログ入門」「70歳からはじめるスマホとLINEで毎日が楽しくなる本」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経xTECHなど。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中
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