ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
「ポケモンGOといえば、猫もしゃくしも夢中になってプレーして、すごい騒ぎにもなったっけ。一時期自分もポケモン集めに熱中したけど、その後とんとやらなくなった。今もやってる人っているの?」
こんなふうに思ってはいけない。今年の半ばあたりから、アクティブユーザー数や売り上げが史上最大、なんてニュースがしばしば世間を騒がせているのだ。
ポケモンGOのゲーム画面。各地に配置されているポケストップやジム、出現したポケモンなどが見える
現在のポケモンGOでは新種のポケモンが追加されたほか、最大20人で力を合わせてボスを倒すレイドバトル機能、他のユーザーと友達になって、ギフトを贈ったりポケモンの交換ができたりするフレンド機能、Nintendo Switch用ゲーム「ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ/イーブイ」との連携などの機能が追加された。さらに、2018年12月には、近くにいるトレーナー、フレンド、CPU(チームリーダー)と対戦ができる「トレーナーバトル」機能も実装された。
筆者の自宅近くにもポケモンGOのジム(マップ上にある施設。自分のポケモンを配置したり、ポケモン同士を戦わせたりするところ)がある。とある日、通りかかると数人~十数人ぐらいの人が、スマホを見ながら何かやっている。顔見知りのおばさまがいたので聞いてみると、ポケモンGOをプレーしているという。サービス開始当時に盛んに遊んでいたのは、主に10代を中心とした若い世代だったと思うが、明らかに年齢層が高い。最近、国内のユーザーでは、こうしたオトナ世代が増えつつあるという。再ブームとなっているポケモンGOの実態と今後の動向を探ってみよう。
ポケモンGOは、米国のナイアンティックと任天堂の関連会社である株式会社ポケモンが共同開発したスマホ向けのゲーム。位置情報と拡張現実(AR)を利用して、現実世界を舞台としてプレーする。不思議な生き物「ポケモン」を捕まえて育てたり、バトルさせたりできる。
何よりの楽しみは、かわいらしく愛嬌(あいきょう)にあふれたポケモンを捕まえて図鑑を埋めたり、手に入れたポケモンを育てていったりするところ。ポケモンをゲットするにも、必要な道具を集めるにも、現実世界を歩かなくてはならない。これは、日ごろの運動不足の解消にもなるし、ポケストップやジムは各地の名所旧跡や石碑などのモニュメントに配置されているので、観光したりその地の歴史を知ったりなどの副次的な楽しみもある。
フレンド機能をはじめ、新しい要素が追加され、ゲーム自体も進化し続けている。今から始めても、中断していた人が再開しても、損はなさそうだ。サービス開始から2年、ポケモンGOが再び勢いを取り戻している。
今年の6月にはゲームの配信開始以来、最も多くのアクティブユーザー数を記録。5月には前年同期比74%増の売り上げとなった。9月には、累計売上高が20億ドル(約2240億円)を突破した。歴代3位の早さだという。
ユーザーの変容も起きているようだ。ポケモンGOをプレーするのは、40代~60代のおじさまおばさま、つまりオトナ世代が多くなっているというものだ。ポケモンGOのイベントにも、シニア世代が多く来ていた話も聞く。ニュース番組などでも、中高年がポケモンGOに熱中するさまが紹介される。
オトナ世代のポケモンGOは、運動不足解消のために歩きたい、というきっかけも多そうだ。楽しく歩くのに、ポケモンGOが適していたともいえる。ゆっくり歩き回る時間が若い世代より多いのもあるかもしれない。何より、実際にプレーするオトナユーザーに聞くと、「ポケモン集めが楽しい」と口々に言う。
オトナ世代はお金もある。ゲームの売り上げ増加も、案外それが起因しているのかもしれない。新しいポケモンは日々追加されつつある上、クリスマスやハロウィーンなど期間限定のポケモンや、その地方でしか捕まえられない限定ポケモン、イベント限定のポケモン、色違いなどのレアポケモンなどを求めて、各地に旅行するユーザーも多いという。テレビでは、海外に限定ポケモンをゲットしにいくオトナ世代のインタビューもあったほどだ。
ジムやポケストップを回るうちに顔見知りとなり、実際の交友関係が生まれる、というのも、オトナ世代にとって大きい楽しみの1つだろう。筆者が見かけた集団も、みんなが顔見知りふうで、話しながらプレーしていた。フレンド機能の実装で、手持ちのポケモンを交換したり、ギフトを贈れるようになったりしたのも影響しているはずだ。
11月に発売されたNintendo Switch用ゲーム「ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ/イーブイ」では、ポケモンGOを連携させる(ポケモンGOでゲットしたポケモンを送れる)ことで、子どもや若い世代、お母さんお父さん世代の交流を促進しているのではないかと思われる。またポケモンGOは、自治体との連携でイベントや限定ポケモンの発生など、地域おこし的な要素も大きい。経済効果も期待できる。
一世を風靡したあとも、それで終わらず新機能を追加し、新たな客層の取り込みに成功した事例といえる。コンテンツや機能を通し、あらゆる世代がリアルでも交流したり、健康に楽しく過ごせたりする。ポケモンGOの提示した可能性は、1ゲームのヒットにとどまるものではない。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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