IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第37回) 忙しいアナタにピッタリ。スマホ決済を賢く使え

IT・テクノロジー キャッシュレス

公開日:2019.02.08

 お財布やクレジットカードを持ち歩かなくても、スマホがあれば買い物やサービスの代金が支払える。「スマホ決済」が急速に広がっている。レジの横にある読み取り端末にスマホをかざしたり、スマホのアプリを使いQRコードを読み取ったりして支払いは完了する。こうしたスマホによるキャッシュレス決済サービスの現場を、目にした経験のない方はほぼいないだろう。

 日本では、ガラケー時代から普及し始めた「おサイフケータイ」がスマホへと受け継がれ、iPhoneで使う「Apple Pay」で利用者が拡大した。さらに、「Google Pay」「LINE Pay」「楽天ペイ」といったサービスが次々に登場。利用者が急増している。

 ソフトバンクとヤフーが提携して行うスマホ決済「PayPay」は、2018年末、「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施し、大きな話題となった。キャンペーンは、決済利用ごとに20%を還元し、抽選で10回に1回、全額バックという消費者にとってかなり魅力的な内容だった。その結果、3月末までの予定が、なんと10日で予定金額を達成してしまい、キャンペーンを終了した。LINE Payも2018年末、大幅な還元キャンペーンを実施し、こちらも話題となった。

消費税率引き上げによる景気対策にも活用

 2018年は、こうしたサービス運営事業者の還元キャンペーンが世間の話題をさらった。2019年は、政府がそれを実行する見通しだ。現在のところ、2019年10月、消費税の税率アップが実施される予定だ。政府はそれによる景気への悪影響を恐れ、各種の対策を打ち出している。その1つとして、経済産業省は「キャッシュレス・消費者還元事業」を計画する。その予算規模は2798億円に上る。

 同事業は、10月1日から9カ月間、キャッシュレス決済に対してポイント付与や還元を行うというのもの。さらに中小・小規模事業者に対しては、キャッシュレス決済を導入する際に、必要な機器の導入費用や決済事業者に支払う手数料を補助する。2019年、キャッシュレス決済が拡大するのは間違いないだろう。

 同事業の目的は、景気対策だけではない。キャッシュレス決済そのものの拡大を図っている。日本は世界的に見ると、まだまだキャッシュレス決済は発展途上だ。政府はそれを脱却し、2025年(大阪万博の年)に向けて、民間最終消費支出に占めるキャッシュレス比率を40%に高める目標を掲げる。政府のお墨付きもあるだけに、さらにキャッシュレス決済サービスが普及する可能性は非常に高い。そこで、現時点の消費者と店舗側の利用メリットをまとめて紹介しよう。

スマホ決済のメリットとデメリット

 まずは、消費者がスマホ決済を使うメリットだ。現金を持ち歩かずに済む、おつりがなく決済が速い、クレジットカードやポイントカードをたくさん持ち歩かずに済む、ポイントがたまる、購入情報の閲覧や管理が簡単、などだ。

 導入する店側のメリットは次の通り。一般的なカード決済システムに比べて導入が簡単(審査などが簡易)、初期費用や月額費用が安い、決済手数料も安価、決済用の端末が不要もしくは安価(政府の補助も受けられる)、ネット環境さえあればどこでも決済できる、現金を扱わずに済むので安心・清潔、などだ。

 さらに、なんといっても店側の大きなメリットは販売機会の増加だ。決済サービスの運営事業者が実施した還元キャンペーン以前にスマホ決済に対応していた事業者は、多くの販売機会を得る恩恵を受けることができた。もちろん、政府が検討しているキャッシュレス決済に対するポイント還元策も同様だ。それによる販売機会を逃したくないなら、早いうちに対応を済ませておく必要がある。

 顧客層の拡大も狙える。最近のインバウンド需要の主役である韓国や中国のからの観光客は、本国ではスマホ決済が当たり前だ。こうした顧客層の開拓にはスマホ決済の導入は必須といっても過言ではない。

 ただし、スマホ決済にデメリットがまったくないわけではない。最も懸念されるのはセキュリティ問題だ。通信を使っているだけに、情報漏えいやなりすましのリスクが考えられる。

 レジに接続されている読み取り端末にかざす「FeliCa方式」のスマホ決済の場合、通信はすべて暗号化される。セキュリティレベルは高いといえる。スマホ画面にQRコードを表示させて店側でスキャンする方法、また、店側のQRコードをスマホアプリで読み取る方式も、QRコードを一定時間で破棄する仕組みなので、基本的に再利用や悪用の恐れは少ないといわれる。

 また、スマホの故障・破損、電源切れ、ネットワークの障害などで通信ができなくなった場合は使えない。アプリ更新のお知らせもきちんとチェックして、常に利用可能な状態にしておく必要がある。こうしたリスクも考えると、消費者側も店側もスマホ決済だけですべて済ませようとせずに、現金やカードでの決済も想定しておいたほうが無難かもしれない。

忙しい現代社会での賢い使いこなし

 現金を用意しなくても、スマホで決済ができるのは確かにスマートだ。買い物を便利にしてくれるのは間違いない。現状では多くのサービスが乱立しており、その中から自分に合ったものを選ぶ必要はある。

 決済サービスは、たくさんのものを並行して使うよりも、絞ったほうが管理は楽だ。ポイント付加や還元サービスも、効率よく使える。どれに絞るかは、アプリの使いやすさ、利用できる店舗の数、種類、ポイント付加などの中で何を重視するかによって変わる。サービス同士が連携したり合併したりする動きが予想され、今後、選びやすくなる可能性はあるものの、しばらくは頭を悩ませることになりそうだ。

 遅かれ早かれこれからスマホは、お金というものを管理するツールになってくる。置き忘れや盗難に注意し、必ずセキュリティロックも掛ける。不正利用を防ぐために、端末紛失時にスマホの内容を全消去できるよう、設定するのも有効だ。

 2019年後半に実施される、景気対策のためのキャッシュレス決済の還元。これを有効に活用するために、前半から利用を始めて使い慣れておきたいところだ。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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