IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第43回) 令和改元1カ月。IT回りの状況

自動化・AI IT・テクノロジー

公開日:2019.05.31

 5月1日に「令和」に改元となって、1カ月が過ぎようとしている。新元号発表から改元まで1カ月、改元は10連休ど真ん中、ということでさまざまな混乱が懸念された。実際は、ATMなどの細かいトラブルのみで、さしたる混乱はなかった。担当者やエンジニアの努力のたまものと感謝したい。令和は幸先のよいスタートを切れた、といえるだろう。

 今後、従来の手段とITでの新手段は、立場が逆転する。例えば金融機関での通帳からの引き出しは、以前は窓口が中心でATMやネット銀行はサブだった。ところが、今はほとんどの手続きを機械で行うのが当たり前で、窓口は「窓口でしか用が足りない」場合のみ利用する。

令和改元近辺での出来事

 改元直前の4月26日、タブレットを使った質疑が衆院内閣委員会の審議で行われた。1日限定の試みだったが、シニア層の多い国会の電子化は、なかなか興味深い。国会での印刷費用は衆参両院で年11億円以上だという。それらが削減されれば、経費節減にもエコにもなる。

 タブレット質疑が行われた「デジタルファースト法案」は、令和になっての5月24日、参院本会議で可決、成立した。これにより引っ越しや相続など行政に関わるすべての手続きがインターネット上で完結できるようになる。「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現」がテーマだ。

 買い物に関しても最近、セルフレジが普及してきた。最近盛んなスマホ決済も、買い物を便利にする。これらの進化系が、アマゾンによる入り口で本人確認して好きな商品を持って出るだけで買い物成立、という新しい実店舗企画だ。将来的には、商店街やショッピングモールのどこから何を持ってきても、生体認証と商品コードで買い物になる、なんてことも夢ではなくなる。

 筆者は最近、家にスマート照明を導入。照明はスマホなどから自由に色や明るさ、時間によるオン/オフなどの制御が可能だ。自宅を離れたら自動的に照明すべてが消え、帰ると自動的に照明がつく。明るいうちは、玄関の照明はつかないよう自動設定、なんてこともお茶の子さいさいだ。

モノゴトはIT中心に動く。だからこそ不測の事態へ備える

 ただしネットワークの不具合や、災害による停電が起きたらどうだろう。ITで便利になった生活は、基本的に電気やネット環境が必須だ。不測の事態や災害には弱い。悪意あるハッキングで“不全”に陥る可能性もある。便利さの実現とセットで、転ばぬ先のつえとして非常時対策もしっかり行わなくてはならない。これがサービス提供のカギとなる。もちろんユーザーも備えておかねばなるまい。

 IT業界ではAIの活用が盛んだ。サポート対応なども、人間の代わりにAIがチャットで対応したり、スマホやスマートスピーカーでユーザーの要望に応えたり、家電などの制御を行ったりする。新聞記事を書いたり、ニュースを読んだり、店で接客したり、AIの活躍は多岐にわたる。

 医療データなどからAIを使い、今後の病気や疾患なども予測する技術も話題だ。AIで金融サービスの利用履歴などからユーザーの信用度などのスコアを算出し、融資条件を決める、などといったことも行われている。

 スマートスピーカーやスマホに搭載されたAIが、ユーザーの会話を記録して送信している、という話もあり、どこまで個人の情報を扱うのか、などの点も問題となってくる。ITの黎明(れいめい)期からいわれているが、モニターに並ぶ文字の羅列を見慣れると、向こうに人間がいるのを忘れがちだ。リアルな場では発言をしない人が、ネット上では軽い気持ちで特定の人を非難する投稿を重ねる。集団で個人を攻撃し傷つけてしまう事態も頻発している。ITが普及すればするほど、個人個人が良識を持たねばならない。

 アルバイト先から「おバカ投稿」をして、企業の信用をおとしめる行為も絶えない。ITに対しての良識を親が子に、先生が生徒に教える重要性も、この先も増していくだろう。令和になってから、自殺の現場を動画に撮って拡散されることがあった。問題のある現場を動画に撮るというモラル自体も疑問視された。

 ITに関しては、企業や国は、何らかのガイドラインや規範、必要に応じて法律、協定などを決める必要があると思う。便利な技術を使ってここまでやるのはいいが、ここから先はやってはいけない、という線引きを世界基準でつくって、人々の快適な生活を守るべきだ。

 ITはこの先、さまざまな場面で活用されていくだろう。ITで便利・快適になるのは大歓迎だが、もろ刃の剣でもある。不測の事態を想定した「転ばぬ先のつえ」「個人個人の良識」「世界基準のガイドライン」。これが快適な世の中をつくる“三種の神器”だろう。

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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