ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
警察庁は、日本で高速道路が開通して以来初めて、高速道路の一部区間の最高速度を引き上げる方針だ。高速道路の最高速度引き上げは段階的に実施される。2017年11月1日から新東名の一部、12月1日から東北自動車道の一部で最高速度110キロへの引き上げを試行。
その後、全国の高速道で見直しを進め、最高速度120キロの適用区間の拡大を検討する。これにより、事故の件数が増えたり、今よりも運転の危険性が増したりする可能性が生じる。東名高速道路で停車中のワゴン車にトラックが追突して夫婦が死亡した事件は記憶に新しい。加害者側のドライバーが執拗に被害者の車の通行をふさぐなど、一家のワゴン車の進路を塞いで停止させ、追突事故を引き起こした悪質な運転の実態が明らかになった。
こうした自動車にまつわるトラブルの転ばぬ先のつえがドライブレコーダーだ。ことの一部始終や、相手のナンバーが記録でき、いざというときの大きな助けになりうる。
残念ながらすべてのドライバーが安全かつ冷静に運転業務を行っているわけではない。東名の事故では、相手の挙動にカッとなり追い回すという、感情的で制御の利かない行動が惨事を招いた。筆者も高速道路ではないが、交差点での挙動が気に入らないとの理由で、男性ドライバーに追い回された経験があり、人ごとに思えない。
自動車を運転している以上、いくら気を付けていても事故を起こすことはあるし、ほかの車が起こす事故に巻き込まれる場合もある。事故発生時刻が深夜や早朝だったり、人通りがほとんどなかったりして目撃者がいない場合など、双方の主張が真っ向から対立してしまうかもしれない。
相手が悪質なドライバーなら、相手が嘘をつく可能性もある。悪賢く立ち回られ、相手方の主張が認められれば大変だ。なお、人身事故では自分の証言より目撃証言が重視され、事実とは異なる原因で事故処理が進んでしまうケースもあるという。
こうした自動車にまつわるトラブルに大きな味方となるのがドライブレコーダーだ。特に最近、設置を強く推奨する自動車関連の記事を見かける。「記録の存在」が、速やかな事故処理や解決、より事実に近い公正な判断につながるからだ。
ドライブレコーダーは、車の衝撃(事故発生時の衝撃や急ブレーキ時など)を検知して、前後の映像や音声を自動的に記録する。常時録画や手動録画が可能なものも多い。事故状況の把握以外にも、運転技術向上のよすがにしたり、旅行やドライブの思い出にしたりできる。
自家用以外にも、事故防止や事故対策、勤怠管理や位置情報の確認などの目的で、業務用ドライブレコーダーを導入する企業も増えている。国土交通省では、「事業用自動車の安全対策」として、ドライブレコーダーの導入を推奨している。
ドライブレコーダー選びにはコツがある。大きくは視野角(撮影できる画角)と画質。それに加え、できれば駐車監視機能とGPSを備えたものがオススメだ。
まず一番に大事なのは視野角。事故は必ずしも正面で起こるとは限らない。斜めからの衝突も多く、できる限り広い範囲を記録できるに越したことはない。水平画角(横の撮影範囲)が108度以上、さらなる安心を得たいなら120度以上のタイプがよい。
次に大事なのは画質だ。事故発生の状況の記録はもちろん、決定的なのは、相手の車のナンバーが読み取れるかどうか。一般的に解像度は「フルHD(1920×1080)」以上、画素数は「200万画素」以上を目安に選ぶとよいとされる。なお、フレームレート(FPS)が高ければ、より滑らかな動画が撮れる。夜やトンネル、明るさが変化する状況下に強い高感度タイプもオススメ。これらの点もチェックしたい。
上記の2つが大きな選択基準だが、あったほうがよいのが駐車監視機能だ。駐車場に止めて車から離れている際の当て逃げ事件も多発しているからだ。警察に通報しても、加害者が見つけづらく、泣き寝入りになってしまうことも。筆者もそうした当て逃げ被害の経験がある。その際警察官に、「映像などの記録があれば」と言われたことがあり、ドライブレコーダーの必要性を実感した。
GPS機能もあるとよい。事故状況の記録にGPSはあまり必要ないと思いがちだが、正確な時間と位置情報に加え、走行中か停車中か、何キロで走行していたかなども分かる。そのため、事故分析に役立ち、証拠としての説得性が増す。
録画データは基本的に、メモリーがいっぱいになると上書きされる(衝撃検知動画は保護されるケースが多い)。確実に保存したければ、パソコンにデータを移行させればよい。専用のビューアーを使えば、映像とともにGoogleマップなどの地図で場所や軌跡を表示できたりもする。旅行の思い出として振り返ることもできるだろう。
ドライブレコーダーの動画をパソコンで切り取ったり編集したりして、家族や友人に危険個所や危険運転の注意を促したり、会社なら安全運転教育やスキル共有の資料として活用するのも手だ。場合によってはSNSで外向けに情報を発信するのもいいかもしれない。事故対策だけでない「ドラレコ」。ぜひ導入を検討してみてはどうだろうか。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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