ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
新天皇の即位に伴う改元が、来る5月1日午前0時に施行される。昭和から平成への改元から30年ぶりとなる。30年前からIT化が著しい今、どんな事態が予測されるだろうか。
新元号施行は5月1日だが、4月1日に公表される。5月1日は、「天皇の即位の日」という今年限定の国民の祝日とされる。「国民の祝日に関する法律」に伴い、今年は4月30日と5月2日も休日となり、4月27日から5月6日まで、ゴールデンウィークは10連休となる。連休に関しては、政府広報「皇太子殿下の御即位をお祝いする今年限定の“国民の祝日”です」が参考となる。
「皇太子殿下の即位日が祝日となり10連休に」(政府広報 皇太子殿下の御即位をお祝いする今年限定の「国民の祝日」です より)
27日から連休に入るため、新元号の発表から改元に伴う準備期間は実質20日ほど。さらにそれから10日間の大型連休となり、元号の実際の切り替えは連休のど真ん中。そんな状況でどんな事態が起こり得るか、どんな対策や準備が必要かを探ってみたい。
新元号発表から改元までの約1カ月間、印刷会社や印鑑メーカー、手帳やカレンダー業界は、新元号に対応した製品の製造に追われることとなるだろう。
大きく問題になる可能性が高いのは、IT関連だ。思い出されるのは2000年問題だ。コンピューターが西暦の下2桁だけで年を処理していたのが原因で、2000年になるとコンピューターが誤動作するといわれていた。通信や金融関連、交通、医療、発電・送電、水道など、あらゆるシステムやインフラの混乱が懸念された。だが、泊まり込みで対応した多くのシステム・エンジニアの努力のたまものか、大きなトラブルは避けられた。
日本の省庁や企業の情報システムでは、たいてい内部データは西暦で処理しているものの、入力画面や帳票などの書類は和暦で記述される。今回の改元では、それら和暦の記述を、新元号に切り替えなくてはならない。今回は生前退位であらかじめ改元日時が分かっているため、ある程度、漢字2文字を仮置きするなどでシステムの改修を行ってきたと思う。ただし、2000年のときと比べると、10連休の真っただ中である点、人手不足が進んでいる点が“手薄”といえる。新年号を入れて実作業やテストを行えるのは20日余り。これは十分な日程とは言い難い。
想定される改元に伴うITでの不具合は、金融機関のATMや送金機能、電気や水道、電話やモバイルネットワーク・ブロードバンド、各交通機関・道路、医療機関のシステムや治療・検査機器、クラウドサービスやWebサイト、商店のPOSレジ・キャッシュレス決済、省庁の各種手続きや承継などが考えられる。
手薄な態勢を狙うサイバー攻撃も見過ごせない。中国の反日愛国運動「五四運動」から、100年目の記念日による一斉攻撃を懸念する声もある。休暇中でも対応できるよう、準備を整えておくべきかもしれない。
各省庁、金融機関、企業や店舗などのWebページには、連休中の対応についての情報が載せられているのでチェックしておこう。情報はメルマガで届く場合もある。
連休になる前に、さまざまな手続き、医療機関の受診、現金の引き出し、必要な買い物、荷物の発送など、やれることはできる限り行っておこう。連休といえばそれに起因する混雑も加わるからだ。連休後も混雑は想定される。事前に済ませておくに越したことはない。
旅行に出掛ける際は、特殊な事態であることを頭に入れ、情報を集め、慎重に行動するとよいだろう。多めの現金や着替えを携行するのも一策だ。交通機関や支払いのインフラに、影響が出るかもしれないからだ。
帝国データバンクの「改元に関する企業の意識調査」によれば、改元による企業活動への影響について、「プラスの影響がある」が5.3%、「マイナスの影響がある」が12.8%、「差し引きゼロ」が25.5%。4割以上の企業が自社に影響ありと認識する。
具体的な理由について、プラス面では「人々の気持ちの高揚」が最も高く、「個人消費の拡大」「改元特需の発生(改元に伴う設備改修業務や商品入れ替えの増加など)」が続いた。マイナス面は「営業日数の減少」、次いで「諸経費の増加」「人手不足の深刻化」。プラスの影響があると答えたジャンルは、1位が「旅館・ホテル」で、「出版・印刷」「紙類・文具・書籍販売」「放送」の順になった。
筆者が思うに、改元は新たな気持ちで新たな目標にチャレンジしたり、結婚や出産、建物の新築など人生の節目を新年号で迎えたいと考えたりする傾向があり、これへの特需も大きそうだと感じる。実際、改元前には「平成最後の」として、さまざまなものを締めくくる風潮が盛り上がっている。改元後の「気持ちの高揚」は想像に難くない。10月には消費税率の引き上げもあり、改元後の5月から9月まで、家や自動車、結婚式や海外旅行など、大きな買い物に「駆け込む」人も多くなりそうだ。
改元に伴うトラブルの可能性、10連休による混雑、改元による人々の気持ちの高揚と行動と改元特需、さらに消費税引き上げまでの駆け込みなど、常に流れを捉えた早めの判断や準備が、今後を楽しく有意義に過ごすカギになるのではないだろうか。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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