IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第14回) AI搭載ロボットで売り上げアップ

業務課題 IT・テクノロジーデジタル化自動化・AI

公開日:2017.04.21

 最近、イベントや商店、銀行などで人型ロボット・Pepperを見かけるようになった。子どもや若者に人気なので集客の役割はもちろん、客への挨拶、キャンペーンや商品の案内、待ち時間対応(コミュニケーションやゲーム)など、結構1人前の社員的な働きも担う。

「pepperくんが入行した」という四国銀行の告知ページ。彼の勤務店舗や業務内容も案内される

 問い合わせや購入相談などは、Webページからチャットで行うシステムが増えた。このチャット、ある段階までは、AI(人工知能)の自動回答を採用している場合がある。そもそも問い合わせ内容は70~90%が定型質問だという。ある程度はAIでさばけてしまうのだ。

 こうしたAIやAI搭載のロボット導入のメリットは、コスト削減だといわれることが多い。業務用Pepper(Pepper for Biz)の場合、業種別アプリの導入で専門職としてもすぐに働けて、なんと月給5万5000円。1人雇うのに比べ、断然低コストで済む上、機能も話題性も十分だ。導入により売り上げや集客、業務効率が向上した、などの話もよく聞く。

 PepperをはじめとするAI搭載のロボットやAIの回答システムのほかにも、安いコストで提供されるAIによる解析・分析サービスなども人気だ。そういえば、上場企業が発表する決算データを基に、AIが記事を作成する日本経済新聞のAI記者の取り組み「決算サマリー」も昨年、話題を呼んだ。

 AIがこのところ大きく活用され始めたのには理由がある。過去のAIは、膨大な知識やルールを人間がすべて教え込む必要があり、実運用にはなかなか至らなかった。ところが最近のAIは、自分でルールやセオリーを見つけ出して学ぶ。「ディープラーニング(深層学習)」で、人間が教え込まなくても答えを導き出せるようになったからだ。

AIを活用したサービスが相次ぐ

 周辺技術の発展も、AI実用化の大きな要因だ。ビッグデータやクラウドコンピューティングなど、大量のデータを処理できるコンピューター&ネットワーク技術が進化した。ネットワーク網の整備と高速化、CPUやGPU、メモリー、ストレージ、スマホなど通信機器の発展、小型化、省電力化など、挙げれば切りがない。

 個人利用でもAIはぐっと身近になった。GoogleやApple、マイクロソフト、Facebook、Amazon、IBMなどの大手IT企業もそれぞれ人工知能への取り組みを行っている。Appleの「Siri」、マイクロソフトの「Cortana」、Googleの「Google Assistant」(メッセージアプリ「Google allo」から使える)は、スマートフォンに搭載された音声やテキストを使い、会話型インターフェースで利用できる。

会話型インターフェース「Siri」に無理難題を持ちかけてみると、 それなりに反応して興味深い

 先述の「少し未来の接客体験」が実現できるといううたい文句のビジネス用Pepperは、Pepper for Bizで提供され、現在約2000社の企業が採用。最近は銀行での導入例が相次いでいる。実際、銀行につきものの待ち時間にPepperと対話する人や家族連れなども多く、銀行とPepperは相性もばっちりで企業のイメージアップにもつながりそうだ。

 Pepper for Bizは、企業や店舗の受付や顧客案内業務をサポートする「接客受付」ほか、介護施設・高齢者向け施設でのレクリエーションや問診・巡回のサポートを行う「ヘルスケア」、外国人応対を多言語でサポートする「インバウンド」などに利用可能だ。込み入った業務には、多種多様な「ロボアプリ」で対応。アプリをインストールするだけで、プロフェッショナルとして働くことができる。

サードパーティーによるカスタマイズサービスも

 企業向けのソリューションを行うサードパーティーによるサービスも続々登場している。日立システムズでは、企画から導入・運用・保守まで個別にサポートする「Pepper導入サポートサービス」を始めた。複数台の動作や複数台の連動した動作設定や情報提供をカスタマイズできる「Smart at robo for Pepper(スマートアットロボ)」も興味深い。“お試し”をしたい場合やイベントなどで短期活用する場合は、レンタルサービスの利用が1泊2日で2万5000円という安価で借りられる。

 こうしたAIやAI搭載ロボット導入のメリットは、現状、コスト削減と話題性だろう。AIでの分析・解析サービスは、「AI サービス」「AI 解析サービス」などでWeb検索するとよい。既存のもので安価に済ませるならロボアプリページを見渡して、自社の業務に生かせるものを探してみよう。さらに深い導入を考えたい場合は、カスタマイズサービスや導入サポートサービスを利用するとよい。

 アニメやSF映画に描かれるような、AIやAI搭載ロボットが業務に携わる時代が実現化しつつある。いろいろとアンテナを張って、効率的に導入してはいかがだろうか。

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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