IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第25回) 時代の寵児・メルカリのビジネス

IT・テクノロジー 増収施策

公開日:2018.01.26

 メルカリとは、スマホ1つで簡単に不要品を出品して取引できるフリマ(フリーマーケット)サービスだ。誰でも簡単に、ファッションから雑貨、家電、本や漫画に至るまで、売ったり買ったりを楽しめる。2013年7月のサービス開始以来、その手軽さと簡易さで、若者からシニアまで高い人気と普及率を誇ってきた。翌年には米国、英国でもサービス開始。アプリのダウンロード数は国内だけで4000万、1日の出品数は100万という、飛ぶ鳥を落とす勢いのメジャーアプリとなっている。

 メルカリの登場までは、不要物の売買といえば「ヤフオク!」をはじめとするネットオークションが主流だった。ネットオークションの利用には、基本的に本人確認済みのアカウント、住所や氏名、電話番号などの個人情報、銀行口座やクレジットカード番号などが必要だ。何度もやり取りが生じ、慎重に気遣って行わないと評価制度の履歴なども残るので、結構手間と労力のかかるものだった。

 そんな中、メルカリはスマホに注目した。スマホにはカメラも付いているし、ネットにもすぐ接続できる。「すぐに不用品を処分できるシステムがあったらなぁ」と思っていた層を取り込んだ。筆者もその1人だ。メルカリが急速に普及するのを見て、「なるほど」と思った。

 アプリを使ってみると、アカウント登録がすぐ(メールアドレスとパスワード、SMS認証)行える。うたい文句通り、スマホ1つ、3分で出品できる簡易さに驚く。金銭のやり取りはメルカリ側が仲介し、身分を明かさずに商品を送れる。売上金での購入が可能など、従来のネットオークションとは大きく違った点に気付く。

メルカリのWebサイトのトップページ

簡易さの裏にトラブルも

 一方で、メルカリは課題も抱えている。これまで、基本的に身分証明なしに登録でき、匿名での取引も可能なため、未成年の小遣い稼ぎ、現金や電子マネー、アカウントなどの物品でないものや、偽物をはじめとする不適切な出品、マナーの悪さなど、トラブルが絶えない面がある。

 これに対し、2017年12月4日から個人情報の登録義務化や売上金での購入不可などのシステム改変を行った。これでよい方向に落ち着いていくか、簡易さが失われ客離れが進んでしまうのか、今後の動向が気になるところだ。アカウント登録は、利用規約に「未成年者は親の承諾が必要」とあれど、実質、年齢を問わず行え、クレジットカードを作れない世代でも、売上金やポイント、スマホの決済システムでの購入が可能だ。若い世代の小遣い稼ぎ手段として普及している点も課題の1つだ。今後、年齢制限など何らかの措置が行われる可能性がある。

シェアビジネスの躍進にITあり。共通する課題と対策

 そもそもメルカリという名前は、ラテン語で「商いをする」という意味だという。メルカリは、「映画生活」(現「ぴあ映画生活」)、「フォト蔵」「まちつく!!!」などのネットサービスを生み出したユニークな会社、ウノウの代表取締役だった山田進太郎氏が立ち上げた。

 ITというジャンルは、アイデアを形にしやすい上、広まるときは急速に広まり、成功を収めやすい。ただしこの特徴はもろ刃の剣とも取れる。例えばさまざまな工程を簡易化すれば、違法行為やトラブルの温床となりやすい。こうしたトラブルが続けば、評判や信用の低下、官公庁の指導などにより、衰退やサービス停止を余儀なくされたケースもある(最近ではチケット売買サイト「チケットキャンプ」の停止が記憶に新しい)。事が大きくなる前に機転を利かせて改善や変革、方向転換できるフットワークの軽さがIT企業にとっての肝となっていきそうだ。

 メルカリは、最近、より早くより簡単にお金に変わる「メルカリNOW」という新サービスを11月27日に開始した。アプリで手元にある商品のブランドと状態を選択、スマホで撮影するだけで、すぐに査定金額を提示。了承した場合にはその場で売上金が手に入る。同様のサービスが少し前に話題となったが、メルカリは、1日100万品以上出品がある膨大な取引データを利用して査定するため、既存の類似サービスに比べてより納得感の高い金額を提示できるのだという。

 メルカリを見ていると、自らの先見性とアイデアを信じて臆せず現実化し、同時に今後の流れを早々に見抜いて改良や改善を重ねるところに勝因があるのではないかと思う。自らのアイデアももちろんだが、他サービスの「いいとこ取り」も素早く行う。こうして柔軟に変化し続ける姿勢が今後のITサービスの在り方かな、と思う。いろんな意味でメルカリから目が離せない。

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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