ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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「IT導入補助金」とは、「中小企業・小規模事業者のみなさまがITツール導入に活用いただける補助金」という目的で2017年から始まった補助金制度で、2022年で6回目となる。これまでの通常枠(A・B類型)に加え、2019年度補正予算にて「セキュリティ対策推進枠」が、2021年度補正予算にて「デジタル化基盤導入枠」などが拡充されている。詳しい情報は「IT導入補助金 2022」から参照できる。
補助対象者は中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)と小規模事業者となっている。補助対象は、ソフトウエア購入費、クラウド利用料、導入関連費だが、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)はハードウエア購入費も対象となる。補助率は1/2~3/4以内、補助額は30万~450万円となる。詳しくは「事業概要」を参照しよう。
IT導入補助金の目的の部分およびサイト各所に「ITツール」という言葉が使われている。このITツールとは、経済産業省「IT導入補助金のITツールとは」にて「業務効率化のために新たに導入されるソフトウエア製品やクラウドサービスなど」と説明されている。
ITツールの具体的な実例は、通常枠ページにある「ITツール活用者の話」が参考になる。ここには勤怠管理と請求効率化システムを導入した介護業や複数の宿泊予約サイトを一元管理できるツールを導入した宿泊業など6事例が挙げられている。さらなる事例を見たい場合は、「ITツール活用事例」を見るとよい。
この「ITツール活用者の話」の下には、「社内の情報共有がうまくいかない」といった悩みを解決するツールの1つとして「グループウェア」が紹介されている。また、業種別に悩みを解決したい場合には「業種別 お悩み解決ITツール機能」が参考になるだろう。
IT導入補助金の対象となるITツールは、事務局にパートナーとして認められた「IT導入支援事業者」により登録されたものに限られるので注意が必要だ。このため「IT導入支援事業者及びITツールの検索」から、補助金対象のITツール導入をサポートするITベンダー・サービス事業者とITツールを検索することが効率的だろう。
ITツールの選択肢という点に注目すると、テレワークが普及した昨今においては、社内の情報共有を円滑化するグループウェアやWeb会議、ファイル共有、勤怠管理などが有用だ。社員PCの操作ログをAIが分析し業務を効率化したり、課題を解決できる業務を可視化したりできるツールも役立つ。パソコン業務の処理手順をあらかじめ登録することで、今まで人が行ってきた一部の作業を自動化して業務を効率化できるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールも注目のITツールの1つだ。
IT導入補助金で用意されている枠には、大きく通常枠、セキュリティ対策推進枠、デジタル化推進枠の3つがある。それぞれの補助対象は「IT導入補助金について」の「補助対象について」に詳しいのでそちらを参照してほしい。
補助金の主軸となる「通常枠(A・B類型)」は、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするのが目的だ。A類型とB類型の違いは、販売支援や自動化など生産性向上や効率化される工程(プロセス)の数だ。A類型は「1以上」、B類型は「4以上」となり、補助額も異なる。
「セキュリティ対策推進枠」は、サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減することが目的だ。なお、補助対象が「サイバーセキュリティお助け隊サービス」に特化している点に留意が必要だ。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト導入経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することが目的だ。この枠は、ハードウエアの購入費用も適用されるのがうれしい。なお、複数の事業者が連携した取り組みを支援する「複数社連携IT導入類型」もある。
申請と導入については、各枠のページ下にある「申請・導入の3STEP」(3枠共通)が分かりやすい。1つめは「支援機関に経営課題や課題解決のためのITツールを相談」、2つめは「導入したいITツールやIT導入支援事業者を決定し、ホームページから申請に必要な情報を提出」、3つめは「審査を経て採択されれば、ITツールを導入・活用」というステップだ。なお、必ずしもSTEP1は必須ではない。詳しくはIT導入補助金2022の「申請方法」を、スケジュールについては同サイトの「スケジュール」を参照してほしい。
スケジュールを確認すると、2022年は通常枠とセキュリティ枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)とそれぞれの締め切りが迫っている。申請方法を見ると、本事業への理解→IT導入支援事業者の選定とITツールの選択→「gBizIDプライム」アカウントの取得→交付申請→交付決定→補助事業の実施、という6ステップが必要となる。
gBizIDプライムアカウントのID申請から発行までの期間は「おおむね2週間」とされ、交付申請から交付決定までの期間もそれなりに時間がかかるだろう。また、IT導入支援事業者とツールの選定や支援事業者との共同作業による申請、実際のツール導入など、自社課題の洗い出しから相談・決定などにも時間を要する。補助金を活用したいと考えるならば迅速な行動が必要だ。
その第一歩は、まず「本事業の理解」にある通り、サイトの説明や公募要領をよく読み、補助事業について理解することだ。次に、自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定する。まずは社内で経営課題や改善点などを話し合い、先述の「IT導入支援事業者およびITツールの検索」ページで見当を付け、まずはIT導入支援事業者に相談するのが早道ではないだろうか。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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