ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
最近よく聞く「IoT」(アイオーティー)というコトバ。「Internet of Things」の略で、モノのインターネットと和訳される。スマホやパソコン、サーバー、プリンターなどのIT関連機器ではない、一般の家電や照明器具、カギ、自動車などをインターネットにつなぐ。インターネットを介して、スマホなどのIT端末からモニタリングしたり、コントロールしたりする。より安全で快適な生活を実現していこうという試みが加速している。
iPhoneでもiOS 10以降、離れた場所から自分の部屋の電気を消したり、帰る前にオフィスから家のエアコンを操作したりできる「ホーム」というインターフェースが追加された。Googleも「Android Things」というIoT開発環境を提供し始めた。まだIoT対応製品はわずかではあるが、今後、便利な生活の実現が予感される。
スマホからネットワークにつながったLED電球の制御を行う
筆者、IoTで生活が便利になれば、ということで、さまざまな機器を今まで使ってみてきた。その一部を紹介しよう。
数年前、初めて使ってみたのは、スマホからコントロールできるLED電球。スマホからオン・オフしたり、色を変えたり、環境に応じたライティングを選んだり、果てはスマホでプレーする音楽に合わせて点滅や色を変化させたりと、なかなか面白かった。
ここ2年ほど、少し離れたところに住む一人暮らしの母親の介護の一環として、居間に設置したカメラで様子を見守り、何かあったら電話で声を掛けたり、直接行ったりしている。カメラの映像は、スマホやパソコンからインターネットを通じてチェックできる仕組みで、カメラの向きやモード(暗視モードなど)、静止画や動画の記録といった各種機能も、スマホアプリやブラウザーから制御可能だ。
2階の居間から1階の仕事場の冷暖房をあらかじめつけておいたり、母親が寝てしまい、つけっぱなしのテレビを遠隔で消したり、なども試みた(経過はこの記事参照)。これらにはIoT対応の「スマートコンセント」を使った。なお、Apple HomeKit対応のスマートコンセントならば、iPhoneのSiriに呼びかけて声で制御できる。
家の中や外の気温、湿度、空気の状況などがスマホからすぐ分かればと思い、そうした機器を探したこともある。外出中にペットのいる部屋の気温をモニターし、必要に応じてスマートコンセントやリモートコントロール・システムを用いて暖房や冷房をつけたり、温度調整を行ったりなども有効だ。
家電製品そのものがIoT対応であれば、スマートコンセントなどの機器を使わなくてもスマホからオン・オフ、コントロール、状態をモニターするなどが可能だ。さらに、家そのものがIoT対応、もしくはIoT機器をコントロールできるサーバーを導入すれば、あらゆる機器をまとめたり連携させたりしてコントロールすることもできるだろう。
最近便利だな、と思っているのは、Bluetooth対応の小さな「忘れ物防止」タグ。カギやカバン、財布、自転車、電子機器、ペットなどに付けて使う。タグが手元から離れると、スマホに通知が来る。スマホでタグの現在地が分かり、他のユーザーと協力して探す、などの機能がある。カギを家のあちこちに置き忘れる母、うっかり者の自分のカギに1つずつ付け、なかなか重宝している。
そうそう、以前扱った自動車の自動運転もIoTの一種だ。車内コンピューターでの制御はもちろん、インターネットを通じて自動車の状態を外部サーバーに送信して、状況に合った情報を得たり、時には車両の制御を行ったりする。
さまざまなモノがインターネットにつながって、モノから情報を収集し、集約された情報から、それぞれの状況に合ったカスタマイズ情報を提供できるのもIoTの大きな利点だ。例えば各自動車から情報を集めて、災害時に通行可能な道の情報を収集。近くの通行可能な道を別の自動車のカーナビに知らせる、などが考えられる。
さらに、個人にセンサーやタグを付けて、行動や状態をモニタリングするというのも有効だろう。暑い外から帰ったばかりの人にはエアコンから冷たい風を送る。家に居続けている人には一定の温度を保つなど、個人に応じた快適な環境や情報を提供するという構想もある。
道路や電柱にもタグやセンサーを付け、情報収集・情報提供する動きもある。個人や自動車のタグやセンサーと合わせれば、いつどこで誰が何をしたという情報を収集し、情報を解析したサーバーから各個人や自動車が必要とする情報を提供・提案できる。
こうした構想は「IoE」つまり「Internet of Everything」(すべてのインターネット)といわれ、IoTから一歩進んだものとなる。IoTを基盤として、すべての人とモノ、システム、データがネットワークでつながる構想だ。「そんな壮大な構想はなかなか実現しないだろう」と思うかもしれないが、世界中のあちこちで実験や導入が始まっている。
IoTやIoEの明るい未来があちこちでささやかれる一方、問題もある。収集されるデータは誰のものか、プライバシーやセキュリティーはどうなるのか、などだ。実際に筆者が使った類いのIoT機器からネットワークに侵入され、ハッキングされる事態も多発しているという。IoT機器に、IT機器のようなセキュリティーアプリや認証システムを組み込むのは難しくコストもかかる。IoT(およびIoE)のセキュリティー、これは今後の大きな課題だ。
カギに付けた「MAMORIO」
筆者が愛用している忘れ物防止タグは、「MAMORIO」という商品だ。MAMORIOは「なくすを、なくす。みんなで探す」という、生活に密着したコンセプトでクラウドファンディングから始まった。
開発・販売しているMAMORIOは、この1年で大きな躍進を遂げた。
MAMORIOアプリでカギを管理する
詳しい経過は1周年記念ページに、クラウドファンディングの様子は「このプロジェクトについて」に書かれている。アイデア次第でIoT開発には大きく成功できる可能性やチャンスがある。AppleやGoogleをはじめ、各社が開発環境や支援ソリューションを提供している。IoT、IoEに関しては、これからどんなふうに発展していくのか、どんな製品やソリューションが登場するのか、注目したい。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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