ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
企業が人材不足となりつつある現状では、AIをうまく活用することで、生産性の向上やコスト削減につながる。ビジネスに活用できるAIの機能には、需要や売り上げ、生産量などについて過去のデータに基づく「予測」、画像や音声、文字などを認識して分類する「認識」、手順の決まった処理や定型処理を自動化する「自動化」、購入・閲覧履歴など個人の動向を分析し好みに合わせた商品をレコメンドする「提案」、スマートスピーカーやチャットボットなど、言語を処理して会話や問題解決を行う「自然言語処理」などが挙げられる。
AIが精巧な絵を描く、音楽を作る、スマートスピーカーがユーザーの言葉を聴き取って用件に答えるなど、さまざまな話題がある中、「AIを導入済みの国内企業は全体の3割弱」という報道を以前目にした。例えば、総務省の令和4年版情報通信白書の「IoT・AI等のシステム・サービスの導入状況」によれば、導入率14.9%(「予定がある」を含めれば26.5%)という数字が示されている。
この点、活用の割合はもっとあってもいい数字とも思え、令和元年版の情報通信白書においても、中国、米国、欧州主要国を下回るわが国のAIの導入状況が示されている。導入が広がりを見せないのはなぜだろうか。
令和2年版情報通信白書の「IoT・AI等のシステム・サービスを導入しない理由」には、「導入すべきシステムやサービスが分からないから」「使いこなす人材がいないから」「導入後のビジネスモデルが不明確だから」「導入コスト、運用コストがかかるから」「導入に必要な通信インフラ等が不十分だから」などが挙げられている。
「導入すべきシステムやサービスが分からない」という状況は、以前から述べているわが国の企業のDX化に対する消極性や経営層のデジタルアレルギーも原因の1つと思われる。AIに関するスキルと専門知識の不足と共に、AIをどこにどう導入・活用すべきかもわからないといった状況もあるだろう。AIの導入は、企業の抱える多くの問題を解決する未来へのカギとなるはず。技術の進歩に正しく目を向けていきたいところだ。
先ほども紹介した令和元年版の情報通信白書によれば、導入率は大企業が高く中小企業が低く、製造業が非製造業よりも高い傾向が示されている。AIなどの先端技術導入の目的は、「業務効率の向上(従業員の負担軽減)」「コスト(人件費、保守費用等)の削減」「人手不足の解消」「既存商品・サービスへの付加価値の向上」「既存事業の規模拡大(競争力強化)」などが挙げられる。
ビジネスに活用できるAIの機能の中で、効果がわかりやすいのは予測機能だ。AIの予測による生産量の調節や大きな需要に備えてあらかじめ在庫を蓄えるなど、経験に頼らずとも予測できるうえ、加味する要素も増やすことができるなどで高度な予測にAIを活用していくのは最も基本的な活用方法と思う。
また、画像や音声、文字などを認識して分類する機能により、カメラを使って人の流れや動きを分析して効率の良い商品や棚の配置を見つけたり、スタッフの増減や配置を行ったりするなどもポピュラーな方法として活用が広がる。さらに、業務の一部を自動化するRPAにAIを搭載することで定型作業を自動化することも効果的だ。AIの搭載で、判断要素や学習を必要とする煩雑な作業の自動化も実現できるように高度化しつつある。
その他、ECサイトなどでは、個人の動向を分析して好みに合わせた商品をレコメンドする「提案」機能が活躍し、ネットショッピングなどでは広く普及している。リアルな接客でも、顧客データをモニターやスマホに表示してAIのレコメンドを確認しておすすめ商品を案内するなどの手もある。Webページやスマホアプリでの顧客サポートや問い合わせなどでも、近年はAIチャットボットが多く使われている。AIの「自然言語処理」機能が進化しつつあり、ある程度の状況までをAIオペレーターが応対し、対応が難しい場合は有人でサポートを行う事例が増えている。
ここに挙げたのは一部の例にすぎないが、機能を理解したうえで、AIの機能が自社業務のどこに生かせるか、どんな部分を効率化できるかなどを考えていくとよいだろう。一歩踏み出せば、「導入すべきシステムやサービスが分からない」という悩みは解決していくはずだ。
現在、各種のAIソリューションには、パッケージとして販売される「パッケージ型」や、企業ごとにオーダーメードで開発する「受注型」、自社で開発する「自社開発」がある。さらに、ゼロから開発する「スクラッチ」、既存のパッケージ製品等をもとに改修する「カスタマイズ」タイプがある。一般的に汎用(はんよう)的なパッケージのほうが、コストが安いとされるが、自社に合うようカスタマイズしたほうが、最終的に効率が良い場合もある。
AIの活用に向けた一歩を踏み出すにあたっては、さまざまな導入事例を参照するとよいだろう。具体例や成功例には説得力がある。この事例のこの部分が自社のここに使えるのでは、というヒントが得られればこちらのものだ。具体例を示せば、活用する自社の社員にも、多様なソリューションを提供するベンダーにもイメージが伝わりやすい。
自社の課題や理想像を思い描き、明瞭にすることはAI活用だけでなくDXの実現にもつながる。信頼できる外部の専門家の知見なども有効に活用しながら、強い企業をつくり、発展させよう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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