ビジネスWi-Fiで会社改造(第49回)
テレワークでの通信障害対策を考えよう
公開日:2026.01.09
IoT機器がサイバー攻撃に利用される例が激増しているという。フォトフレームやWebカメラ、IoT電球なども例外ではない。それらが乗っ取られ、攻撃の踏み台にされてしまうというのだ。
おそらく、どの家庭にも何らかのIoT機器はあると思う。最近では、エアコンや洗濯機、冷蔵庫、湯沸かし器などに至るまで、スマホとWi-Fiで操作できる製品が主流になってきていて新しく買った家電製品が続々とIoT機器の仲間入りをしている。
家電の他にも、玄関のカギやカーテンの開け閉めをスマホで制御するスマートリモコン、スマート温度計、スマートスピーカーなどもIoT機器の一種だ。筆者宅では、鍋までもがWi-Fiにつながっている。例えば、最新のレシピをスマホから転送し、材料を入れてスイッチを押すだけでレシピ通りの料理ができあがる。こうしたIoT機器は、とにかく便利だ。外出先からも状態を確認したり、操作したりでき、ハイテク時代の恩恵を存分に感じられる。
ところが、こうしたIoT機器が「サイバー攻撃に利用される」と聞いて、正直、筆者は少し震え上がった。というのも、職業柄、筆者宅には他の家よりもIoT機器が圧倒的に多く存在しているからだ。「IoT機器 乗っ取り」などのキーワードで検索してみると、対策を促す記事が山のようにヒットする。冒頭に出てくるのは、政府広報や警察など公共機関のページだ。
政府広報オンライン「ウェブカメラやルータが乗っ取られる?IoT機器のセキュリティ対策は万全ですか?」という記事には、年々増加するサイバー攻撃のグラフが掲載され、2024年に観測されたサイバー攻撃関連通信は6862億件だった。そのうち、およそ3割がウェブカメラやルーターなどのIoT機器を狙ったものだったと書かれている。
また、IoT機器は、「性能が限定されている」「設置後にあまり管理されない」「長期間使用される」などの理由から、サイバー攻撃の標的になりやすい。こうした特徴により、家庭内のIoT機器が気づかぬうちにマルウエアに感染し、結果として攻撃に加担したり、情報を盗まれたりするリスクがあるという。これらを防ぐためにも、セキュリティ対策をしっかり行う必要があるというわけだ。
では、実際にどのような対策をとればいいのか――。記事の中では、基本的な対策として「パスワードは複雑なものに変更する」「ソフトウエアは常に最新のものに更新する」「使用していないIoT機器はインターネット接続を切る(電源をオフにする)」の3点が紹介されている。この他、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が運営する「IoTのセキュリティ」というページには、有益な情報がまとまっている。自宅にIoT機器があるなら、一度は目を通しておくとよい。
先ほどの政府広報オンラインのページには、「NOTICE」という、ルーターやネットワークカメラなどのIoT機器がサイバー攻撃に悪用される危険性がとても高い状態のユーザーに対し、プロバイダーなどが注意喚起をする制度が紹介されている。
NOTICEの調査対象となる機器は、日本に割り振られたグローバルIPアドレスを使うインターネットに直接接続されたIoT機器で、ルーターやウェブカメラ、センサーなどに対し、プロバイダーが該当する機器の利用者を特定し注意喚起を行う。注意を受けたら、サポートセンターの指示に従い対策を行う、という仕組みだ。
さらに有効なのが、2024年3月に始まった、IoT機器に対するセキュリティ要件適合評価およびラベリング制度である「JC-STAR(ジェイシースター)」だ。この星がデザインされたJC-STARのラベルのある製品を選ぶことで、一定のセキュリティが確保されるという。
「JC-STAR」については、IPA「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」に詳しく書かれている。冒頭には制度のロゴに加えて、「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR: Labeling Scheme based on Japan Cyber-Security Technical Assessment Requirements)とは、『ETSI EN 303 645』や『NIST IR 8425』等の国内外の規格とも調和しつつ、独自に定める適合基準(セキュリティ技術要件)に基づき、IoT製品に対する適合基準への適合性を確認・可視化する、我が国の制度です」と説明されている。
この制度は、2024年8月に経済産業省が発表した「IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度構築方針」に基づいて作られた。インターネットとの通信が行える幅広いIoT製品を対象とし、共通的な「ものさし」で製品のセキュリティ機能を評価・可視化することを目的としている。
従来、IoT製品におけるセキュリティ対策については、ベンダー側がユーザーにアピールすることが難しく、ユーザーから見ても、製品のセキュリティ対策が適切かどうか判断できないという課題を抱えていた。それらを解決するために、このマーク制度が作られた、というわけだ。
先ほどのIPAの記事を見るとわかるように、評価制度を通過した商品には「制度ロゴ」が付けられる。さらに、製品パッケージの裏などに付けられる「適合ラベル」には、セキュリティ水準に応じて4つのレベルの位置づけがされており、星の数で判断できるようになっている。なお、適合ラベルにあるQRコードを読み込めば、製品詳細や適合評価、セキュリティ情報・問い合わせ先などの情報が簡単に取得できる。これはなかなか心強い。
IPA「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」から引用して星の数の基準を示すと次のとおりだ。店舗などで製品を選ぶ際に参考になるし、スマホでQRコードを読み込んで情報を確認しながら製品選びを進めることもできる。
適合基準のレベルとその位置付け
★4/★3
政府機関や重要インフラ事業者、地方公共団体、大企業などの重要なシステムでの利用を想定した製品類型ごとに★1、★2に追加して汎用的なセキュリティ要件を定め、それを満たすことを独立した第三者が評価して示すもの
★2
製品類型ごとの特徴を考慮し、★1に追加すべき基本的なセキュリティ要件を定め、それを満たすことをIoT製品ベンダーが自ら宣言するもの
★1
製品として共通して求められる最低限のセキュリティ要件を定め、それを満たすことをIoT製品ベンダーが自ら宣言するもの
ただし、適合ラベルは定められた適合基準や評価ガイドに従って、適合基準が想定する脅威に対抗するためにIoT製品のセキュリティ機能として最低限満たすべき水準を達成していることを確認するものであり、適合ラベルが付与されているからといって、完全・完璧なセキュリティが確保されていることを保証するものではない。
攻撃者は、世の中がどんなセキュリティ対策を講じようと、AIなど最新技術を駆使して常に新しい手口で攻撃してくる。つまり、私たちは常に「いたちごっこ」の中にいる。セキュリティはどれだけ対策をしても、何一つ万全ではないという前提に立ち、日頃から最新の情報を確認し、対策を続けることが大切である。
もちろん、適合機器を入手したとしても、政府広報オンラインの記事にあった「パスワードは使いまわしのない複雑なものにする」「ソフトウエアは最新のものに保つ」「使っていないIoT機器はネットに接続しない(電源を切る)」といった基本的な対策も、引き続き欠かさないよう、心がけよう。なお、IPAのページでは「適合ラベル取得製品リスト」も参照できる。製品選びの際にぜひチェックしておきたい。
IoT機器のセキュリティを高めるには、それらがネットワークを使う(有線LANまたはWi-Fi。おそらく大半はWi-Fi利用だろう)以上、以前にも触れたようにルーターの管理も重要になる。ルーターに関しては「古いルーターは速やかに交換」「ファームウエアを定期的に更新」「不要なポートやサービスを閉じる」「パスワードを強固なものにする」「リモート設定を無効化する」「ワイヤレスセキュリティを強化する」といった基本的な対策が挙げられる。
また、この連載の最近の記事でも触れたように、サポートが終了した古いルーターを使い続けるのは大きなリスクとなる。現在サポートされているルーターを最新の状態で使い、定期的な更新を怠らないことが必須条件だ。
こうした機器の管理に不安がある場合は、IT機器やIoT機器の管理を請け負うソリューションの利用や、管理サービス付きの機器にリース・レンタルで切り替えるのも1つの選択肢だ。特にリースやレンタルなら、定期的に最新機器へアップグレードでき、「JC-STAR」マーク付きの、より高いセキュリティレベルの製品を選んで導入することも可能だ。導入にあたっては、最寄りのベンダーや自治体の相談窓口に相談するか、Web検索などで情報を集めてみよう。
フォトフレームやWebカメラなどが乗っ取られ、次々とマルウエアに感染して攻撃の踏み台にされる事例が拡大している。さらに、ランサムウエア被害で業務や信用に深刻なダメージを受ける企業も増えている。今後、IoT機器がますます普及するにつれ、これらのリスクも比例して拡大する可能性がある。だからこそ、いざというときに備え、常に最善の対策を講じておくことが、今を生きる私たちに求められる行動といえるだろう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=青木 恵美
長野県松本市出身。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「自分流ブログ入門」「70歳からはじめるスマホとLINEで毎日が楽しくなる本」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経xTECHなど。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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