脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第92回)
スマホでネットにつなぐ「テザリング」
スマホを最新機種に買い替えたものの、機能を十分に使いこなせていない。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、もしかしたら使いこなせていないかもしれないスマホの機能「テザリング」だ。
「この前商談に行ったら、取引先の社長がスマホとノートパソコンをつないでいたんだよ。一体何をしていたんだろう」(社長)
「スマホを充電してたんじゃないですか?それかテザリングでもやってたのかも」(総務兼IT担当者)
「デザインリング?その人はケーブルのようなものでつないでいたぞ」
「まさか指輪か何かと勘違いしてないですか? スマホの通信回線を使って、ノートパソコンやタブレットをネットにつなぐことをテザリングというんです」
「その機能、少なくとも指輪よりは便利そうだな。私も使ってみたいものだ」
スマホのデータ通信機能を使い、ノートパソコンやタブレット端末などのデバイスをつないでネット通信を行うことをテザリングと呼びます。この機能を使えば、無線通信機器のモバイルルーターやWi-Fi環境がない場所でもネットへの接続が可能になります。一方、使い続けるとスマホのデータ通信量やバッテリー消費量が激しく増加する可能性があります。また、社外で通信する際には不正アクセスやデータの傍受などのセキュリティリスクにも注意が必要です。
テザリングの接続方法は3種類ある
Q テザリングはどのように行うのですか。
テザリングを行う際は、スマホのテザリング機能を使ってノートパソコンやタブレット端末、ゲーム機などのデバイスにつなぎます。接続方法は、Wi-Fi、Bluetooth、USBの3種類があり、スマホとデバイスのそれぞれに事前設定が必要です。
Wi-Fi接続では複数のデバイスを同時に接続することが可能です。Bluetoothよりも電波が届く範囲が広いため、少し離れた場所にあるデバイスも接続できます。Bluetoothで接続した場合、Wi-Fiに比べて通信速度が遅くなる可能性がありますが、スマホのバッテリー消費量が比較的少ないという利点もあります。USB接続はUSBケーブルを用いてスマホとデバイスをつなぐため、比較的安定した通信が可能です。
Q モバイルルーターとの違いはありますか。
外出先などWi-Fi環境がない場所でも手軽に通信できるという点は同じですが、月に利用できるデータ量や最大接続数などで違いがあります。例えば、テザリングの場合、同時に接続できるデバイスは最大でも5~10台で、同時接続台数が増えると通信速度が遅くなることもあります。一方、モバイルルーターの場合は10台以上の同時接続が可能な機種もあり、複数台を同時に接続しても比較的安定した通信が維持されます。
ただしモバイルルーターを利用するには、専用端末の用意と新規回線の契約が必要になります。テザリングの場合はそうした手間はかかりませんので、より気軽に利用できるというメリットがあります。
Q テザリングの利用で留意することはありますか。
テザリングを利用する際には、事前にオプション加入やテザリングに対応するデータ通信メニューの契約が必要なことがあります。また、テザリングを多用すると月々のデータ容量の上限に達し、通信速度制限がかかる可能性があります。その場合はスマホでWebサイトを閲覧したり、動画を視聴したりするのが不便になりますので、十分注意しましょう。
テザリングはあくまで外出先での利用にとどめ、オフィスでは高速かつ安定した通信が可能なビジネスWi-Fiを利用するのが最適です。高速な無線規格に対応したプランもありますので、IT事業者に相談してみるとよいでしょう。
「テザリングのこと、理解していただけましたか。実は私も時々利用しています」(総務兼IT担当者)
「便利そうなことはわかったが、設定が面倒そうだな」(社長)
「それなら私が設定をお手伝いします。社長が外出先でもパソコンやタブレットが使えるようになれば、長期間留守にされていても安心ですから」
「まさか、私が会社にいなくても仕事をやらせようという魂胆か。便利になりすぎるのも考え物だな」
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=山崎 俊明
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