ビジネスWi-Fiで会社改造(第47回)
ビジネスWi-Fiの導入・運用コストを徹底分析
日常業務でデジタル機器が広く活用される今、社内のどこからでもネットに接続できるビジネスWi-Fiがあれば、業務の利便性が向上する可能性が高いだろう。ただ、自社にとって導入するメリットが大きいかどうかはコスト次第、と考える企業も多いはずだ。では、実際にビジネスWi-Fiを導入して運用する際には、どこにどのようなコストがかかるのだろうか。今回は、そのメリットとコストのバランスを含めて掘り下げて考えてみたい。
ビジネスWi-Fiの導入を考える場合、まず検討すべき点はインターネットの接続回線だ。安定性のある回線を選びつつ、インターネット接続を前提としたWi-Fi環境を整えれば、業務効率の向上や快適な通信環境といった多くのメリットを得られるだろう。
次に検討すべき点は、インターネット接続するルーターと、無線通信を行うためのアクセスポイントの選定だ。ルーターとアクセスポイントの両方の機能を備えたWi-Fiルーターもある。オフィスや店舗の広さ、将来の拡張性の有無などを考慮しながら、自社のニーズにあった業務用Wi-Fiルーターを選定するのが賢い選択と言えるだろう。
無線LANの最新規格である「Wi-Fi7」に対応した業務用Wi-Fiルーターはまだ多くない。1つ前の規格となるが、第6世代の「Wi-Fi6」に対応した業務用Wi-Fiルーターとアクセスポイントは多くのメーカーから販売されている。多くの場合、同時接続可能な台数が多く、セキュリティ機能も充実している。また、周波数もつながりやすい2.4GHz帯と高速で通信できる5GHz帯の両方に対応している製品が多いため、状況に応じた通信環境の構築が可能だ。
ところで、広いオフィスや店舗で使用する場合に気をつけたいのは電波障害の発生だ。室内にある電子レンジや他のWi-Fiルーターなどの電波干渉や、コンクリートの壁などの障害物の存在などが原因で電波が安定して届かないケースがある。その場合、Wi-Fiルーターやアクセスポイントの設置場所の適正化や中継機の導入など、専門家によるコンサルティングが必要になり、別途費用が発生する場合もあるので留意したいポイントだ。
その他、ビジネスWi-Fiのイニシャルコストとしては、こうしたインターネット接続回線、Wi-Fiルーターとアクセスポイントといった機器の購入と設置費用、さらに必要に応じたネットワーク設計などのコンサルティング料金が挙げられる。機器の費用については一括購入、リース、レンタルなどさまざまな支払い方法が選択できる。
ランニングコストには、インターネット回線の利用料と通信機器の電気代がある。さらに対象範囲を拡充する際の機器の追加購入費、電波障害への対応コスト、故障機器の交換費用やメンテナンス費用なども考慮すべきだ。一方で、Wi-Fi導入によるコスト削減効果にも目を向けたい。
例えば、電話をIP電話に変更すれば通話料金が大幅に削減でき、無線にすることでオフィスのレイアウト変更に伴う配線工事の費用も軽減できる可能性がある。タブレットを導入することでオフィスにおける紙の利用を減らしてペーパーレス化を進めれば、用紙代の節減、コピー機やプリンターの設置台数と設置スペース代の削減も実現できるだろう。
今回は、多角的にWi-Fiのメリットを解説してきたが、コスト面の検討に加えて、定性的なメリットを考えることの重要性も示唆しておきたい。
例えば、良好な通信環境が実現すれば、業務効率化はもちろん、経営判断を含む意思決定の迅速化や部門間の連携強化などの効果が見込める。また、社員一人ひとりの柔軟な働き方を支援することにも寄与し、従業員の満足度向上や採用市場での競争力向上につながり、将来の企業成長という面でも力を発揮するだろう。さらに、デジタルを活用した業務形態は先進的なビジネスの進め方を行う企業として顧客からの信頼獲得をもたらす可能性もある。
実際にどれだけのコストがかかり、どのような効果が期待できるかを自社の状況に合わせて精査し、投資対効果を見極めることが重要だ。ビジネスWi-Fiの導入は企業成長の原動力となる可能性を秘めている。ぜひ前向きに検討してみてはいかがだろうか。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=高橋 秀典
【TP】
ビジネスWi-Fiで会社改造