ビジネスWi-Fiで会社改造(第46回)
ビジネスWi-Fiの整備に補助金を活用しよう
オフィスの有効活用や業務の生産性向上という面でビジネスWi-Fiには大きなメリットがある。いつでもどこでもインターネットや社内LANにアクセスできる環境は、働き方を変えるきっかけにもなる。ビジネスWi-Fiを導入するにはそれなりの費用がかかるが、企業としての成長をめざす場合、政府や地方自治体による補助金制度を活用できる。通信環境の整備に向けて、これらの支援制度の活用を考えてみよう。
Wi-Fi導入にも使える補助金制度の例
ビジネスWi-Fiの導入に補助金を活用するメリットは大きい。導入にかかる費用の負担を大幅に軽減できる。例えば、機器の購入や工事などに必要な費用の半分から2/3程度まで補助金で賄えるケースもある。これは大きなメリットだろう。
一方で、補助金活用にあたって留意すべき点もある。多くの補助金制度では、経費の支払い後に補助金が交付される仕組みとなっているため、交付までの資金繰りを考慮する必要がある。また、申請が不採択となった場合の代替案も検討しておくことが望ましい。補助金の活用は事業計画の実現を支援するものであり、補助金ありきの計画立案は避けるべきだ。
そうは言っても補助金の活用は経営上のメリットであり、ぜひ活用を考えるべきだろう。実際にWi-Fi関連で使える補助金制度はさまざまな分野で整備されている。表面的には関連性が見えにくい補助金制度でも、活用の可能性を秘めているケースがある。どんな補助金制度があるのか、いくつか例を紹介しよう。
地域によっては防災や観光振興を目的に、地方自治体が独自の補助金制度を用意する場合がある。地域の魅力向上や活性化が地方自治体にとってプラスになるからだ。公益財団法人東京観光財団の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」では、都内で飲食店や宿泊施設を営む中小企業が外国人旅行者の受け入れ対応の強化を目的にWi-Fiを設置した場合に補助金が出る。新潟市や鳥取県、鹿児島県の薩摩川内市でも同様に、Wi-Fi設置へ補助金が出る制度がある。
高齢化社会に対応した補助金制度も整備されている。例えば、介護従事者の業務負担軽減を目的とした介護ロボットの活用に必要なWi-Fi環境整備への助成制度などがある。実施する自治体や支給条件は年度ごとに変更される可能性があるため、最新情報の確認が不可欠だ。
その他にも、総務省や経済産業省による補助金制度もある。ここでは経済産業省の「IT導入補助金」を例に、申請方法や採択されるためのポイントについて考えたい。
正しい手順と申請内容で補助金を受け取ろう
経済産業省が用意している「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者などの労働生産性の向上を目的に、業務効率化やDXなどに向けたITツールの導入を支援する補助金だ。補助対象や範囲は毎年見直されており、Wi-Fi関連機器の補助対象も制度の枠組みや要件に応じて変化している。2025年度はWi-Fi機器単体の導入やオフィスのネットワーク強化目的の場合は原則として補助対象外となったが、「インボイス枠」におけるPOSレジ・モバイルPOSレジ・券売機の付属品としての導入においてWi-Fiルーターが補助対象となっている。毎年1月下旬頃に新年度の制度内容が公表されるので、最新の情報を随時確認されたい。
申請の手続きの前提となるのが、「GビズIDプライム」の取得と、独立行政法人情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の宣言だ。GビズIDプライムはオンラインで申請できるが、発行まで通常2週間程度かかるため、早めの手続きをおすすめする。「SECURITY ACTION」は、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、宣言後にアカウントIDを取得できる。どちらも費用はかからない。
その上でIT導入を支援する事業者と導入したいITツールを選定し、IT導入支援事業者との間で商談を進める。事業者が必要な情報を入力した後に、申請マイページで入力内容を確認し、申請内容を宣誓する。交付申請はIT導入支援事業者と共同で作成する点が、他の補助金制度とは大きく異なる。
2025年度の場合、補助額や補助率は申請枠によって異なるが、最大で450万円、補助率は2分の1から5分の4となる枠もある。対象となる製品やサービスの幅が広いIT導入補助金だが、審査基準に満たない場合は不採択となる。
不採択の主な要因は、申請内容の不備や不適切な申請内容にある。例えば、事業規模と比較して過大な申請金額の場合、不正が疑われて、審査を通らない可能性がある。また、事業との関係性が薄いツールを選定している時も同様の懸念を招くようだ。申請書類に不備があった場合は、なりすましが疑われる可能性もある。
本年度の「IT導入補助金」のホームページでは、冒頭に「不正を絶対に許しません」との明確な宣言があり、意図せずに不正に巻き込まれるケースを解説したページも用意されている。重要なのは自社のニーズに応じた現実的な計画に基づく、適正な申請手続きの実施だ。補助金制度の目的は生産性向上にある。その趣旨を理解した上で、補助金制度を有効活用してほしい。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=高橋 秀典
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