ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
少子高齢化社会の現在、仕事を抱えながら、親を介護するケースが増えた。高齢者はますます増加する一方だ。だが高齢者を支える人数は少子化により減少、さらに多くの人が親の介護に直面する。介護が原因で仕事や生活への意欲を失ったり、目を離せぬ状況故に介護離職に追い込まれたりする場合も続出しているという。こうした事態を和らげるため、IT利用での介護負担軽減が期待されている。
仕事や生活の都合などで要介護者と離れて過ごす場合は、IT機器やIoTで状況を見守ったり、遠隔で確認したりするのがお勧めだ。
筆者の場合、要介護の母の部屋にライブカメラを設置、スマホやパソコンから状況を見守れるようにしている。スマホで部屋の温度や湿度もチェックできる。電化製品をスマホからオン・オフするスマートコンセントやリモートコントロール・システムも有効だ。
また、物忘れが多くなったり、道に迷ったりするので、スマホを持たせて対策している。スマホのGPSは優秀で、かなり正確な位置が分かる。以前、ガラケーの位置情報サービスを使っていたが比べものにならない。スマホには初心者向けのホームアプリをインストールし、ワンタップで家族に電話が掛けられるよう工夫した。フロントカメラを併用したビデオ通話も役に立つ。声に加え、やはり家族の動く姿を見ると、より安心感が高まるだろう。
カギや財布を置いた場所を忘れてしまう対策として、Bluetoothでスマホとペアリングし、GPSを利用してアプリでタグの場所を地図で表示したり、タグのブザーを鳴らしたりすることができる「忘れ物防止タグ」が有効だ。
話し相手には、「Pepper」や「ロビ」といったスマートロボも有効だ。認知症予防、ペット代わりとして、しゃべる人形やぬいぐるみもある。場合によってはスケジュールなどを知らせてくれる機能も役立つだろう。
話し相手としてではなく、実際の介助や生活全般の補助なども今後、増えると思われる。介助のプログラムも開発中だという。自動で掃除が行えるルンバなどのロボットクリーナーもスマートロボの一種だ。
特に筆者が注目したのは、Amazonで販売するボタンひと押しで日用品が買える「Amazon Dash Button」だ。Wi-Fi環境があれば、スマホでセットアップしておけば、日用品、食品・飲料、紙おむつなどの生活必需品がワンプッシュで届く。
もちろん、高齢者がスマホのショッピングアプリなどを使い、通販で商品を購入できれば、買い物に出掛けずとも商品が届くが、そこまでの操作は高齢者には難しい。このボタンであれば簡単だ。Amazonのプライム会員なら500円で購入でき、初回の購入でボタン代金が引かれる。
Amazon Dash Button本体。ブランド名が書かれている。商品はいくつかのラインアップから好きなものを選んで設定
セットアップを家族が行い、適切な場所にボタンを貼ればよい。注文後、誤ってボタンを何回も押してしまっても、現在注文している商品が届くまで、ボタンの操作は無効で新たな注文ができない、間違って注文しても返送料無料で返品できる、などの対策も施される。
さらに筆者が注目しているのは、このボタンデバイスに好きな操作をインプットできる「AWS IoT ボタン」だ。Amazonが提供を行っている(日本でのサービスは準備中らしい)。説明によれば、簡単なコードを書くだけで、タクシーの配車、家族の呼び出し、家電のリモートコントロールなどが行えるという。将来、要介護者が必要とする操作をボタンにインプットして、適切な場所に貼るなど、生活を便利に補助できそうで期待が持てる。
今回、紹介したのは家族が介護を行う視点でのITやIoTの活用だ。家庭内介護以外にも、各種施設の介護現場、もしくは介護職員が高齢者の自宅において行う作業にも、ITやIoTは大いに活用の価値があるだろう。被介護者が増加する一方で、介護を行う人材は不足状態だ。より効率のよい高齢者の介護が、社会的な課題でもある。アイデア次第では、ビジネスとしての成長性もあるかもしれない。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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