ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
「耳が遠くなるのは高齢者になってから、とは限りません。聴力の衰えはゆっくりですが20代から始まっています。また、ヘッドホン、イヤホンで必要以上に音量を上げて聞いていたり、ライブイベントや工事現場など大きな音が鳴り響く場所に長時間居続けたりすることは、難聴のリスクを高めるといえるでしょう」
そう語るのは、済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科の主任診療科長であり、聴覚センター長の新田清一(しんでん せいいち)先生です。今回は、20〜30代から始めたい加齢性難聴の予防と対策を伺いました。
そもそも難聴とはどういう状態のことでしょうか。辞書を引くと「聴覚が低下してはいるが、聴力を音声言語の受容や言語獲得の手段として使うことは可能な状態」とあります。難聴の多くは、加齢による聴覚器官の機能が低下することに始まります。
「その大切な聴覚器官を蝸牛(かぎゅう)といいます。音は耳の奥にある鼓膜でキャッチされ、蝸牛で電気信号に変えられて脳に伝わります。音が聞こえにくくなる加齢性難聴は、蝸牛の中にある音を感じ取る細胞がダメージを受けることで聴力が低下するため、誰にも起こり得るのです」と新田先生。
蝸牛の中にある、音の振動を伝える有毛細胞は、大きな音にさらされ続けると傷ついたり破壊されたりします。イヤホンなどを通じて大音量で音楽を聴いたり、大きな音が鳴り響く場所に長時間滞在したりすることで、有毛細胞が傷つきやすくなり、それだけ難聴のリスクが高くなります。加えて、加齢によって難聴が緩やかに進行するものと心得ておきしょう。
新田先生は「老化による聴覚の低下は緩やかなため、生活に困ることがなければなかなか難聴を自覚できません。軽度の難聴は気付かぬうちに進行してしまうことがあります」と言います。
以下のチェックリストで、日常における聴力の具合を確認してみましょう。思い当たることが複数あれば、加齢性難聴の兆候かもしれません。早めに専門医へ相談に行くことをオススメします。
<日常の聞こえについてのチェックリスト>
□ テレビの音が大きいと言われる
□ ピピッという電子音に気付かない
□ 会話を聞き取れず、聞き返してしまう
□ 静かな環境でも聞こえにくいことがある
□ 呼んだのに気付かないと言われた
□ 声や音が割れたように聞こえる
「加齢性難聴は、老眼と同じように誰もがなる可能性がある病気ですので、止められません。こうした難聴が発症してしまうと、脳を使わなくなり側頭葉(言語、記憶、聴覚に関わる機能を持つ部位)を劣化させ、認知症のリスクを高めることが分かってきました。今聞こえているからと過信せずに、若いうちから難聴予防につながる生活を心がけましょう」と新田先生。その予防として、2つのポイントを挙げていただきました。
【ポイント1】耳に優しい生活
・大音量でテレビを見たり音楽を聴いたりしない
・騒音など、大きな音が常時出ている場所を避ける
・騒音下で仕事をしている場合は耳栓をする
・静かな場所で耳を休ませる時間をつくる
【ポイント2】老化を緩やかにする生活
・栄養バランスの良い食事を取る
・適度な運動をする
・規則正しい睡眠を心がける
・禁煙する
難聴を自覚した場合の対策について、新田先生はこう話します。
「難聴を放置せずに補聴器を使用することをオススメしています。補聴器を正しく装用すれば脳の劣化を防ぎ、認知症を予防する可能性があると考えます」
補聴器は個々の難聴の具合によって調整が必要な器具。使い方を誤り、不快感や違和感から使用をやめて難聴を放置するケースもありますので、まずは耳鼻咽喉科の医師の診断を受けてから、購入を検討しましょう。
「難聴の脳は静かな状態に慣れてしまっているため、補聴器の使い始めは常に装用して、補聴器を通した音に対する脳のトレーニングを行います。音の調整や補聴器の効果を確認する検査を受けながら、3カ月程度は初期調整にかかるものと思ってください」と新田先生は解説します。
最近では、補聴器がスマートフォン対応になっているものがあります。音量や音質の調節ばかりか、音楽を聴いたり電話のスピーカー代わりとして使えたりするものも。利用状況を、クラウドを通して把握して、遠隔操作で補聴器を調整するといったサポートをするメーカーも出てきました。
いつまでも聞こえる耳であるためには、難聴の早期発見・相談、適切な対策が大切です。補聴器も進化しているので、聞きづらさを感じたら気軽に最寄りの専門医へ相談してみましょう。
【取材協力】
新田清一(しんでん・せいいち)先生
済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科主任診療科長、聴覚センター長。聴覚医学の専門家。94年慶應義塾大学医学部卒業。2004年から済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科に。10年ベルギーに臨床留学。日本耳鼻咽喉科学会専門医。著書に「難聴・耳鳴りの9割はよくなる~脳を鍛えて聞こえをよくする補聴器リハビリ」(マキノ出版)など。
執筆=Nao Kiyota(Self Training Café)
美容・健康ライター。ダイエットアドバイザー、リンパケアセラピスト、心理カウンセラーの資格を生かし、健康で美しくなるためのセルフトレーニング法を発信している。最近カメラを購入。写真で「もっとわかりやすく」伝えられるよう、日々修行に励んでいる。抹茶ラテ(豆乳・シロップ抜き)と足つぼマッサージが大好き。
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