オフィスあるある4コマ(第66回)
突然現れた不審な車
公開日:2026.11.04
令和8年度税制改正で所得税の基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、単身者の課税最低限、いわゆる「年収の壁」は178万円になった。改正は令和8年12月1日に施行され、今年の年末調整で1年分をまとめて精算する。扶養親族等の所得要件も変わり、来年以降も税額表の切り替えが続く。税法の企画立案に携わった元国税局長の税理士が、令和8年分の年末調整で注意すべきポイントを解説する。
令和8年度税制改正により、同7年度改正に引き続き
① 所得税の基礎控除の引き上げ
② 給与所得控除の最低保障額の引き上げ
③ 扶養親族等の所得要件の引き上げ
が行われました。
いずれの改正も年の途中での源泉徴収事務に混乱を来さないように令和8年12月1日から施行され、年の途中では従来どおりの源泉徴収事務を行います。したがって、年末調整で一気に令和8年度改正の内容を盛り込んで処理し、令和9年分からは新たな「令和9年分源泉徴収税額表」により各月の源泉徴収税額を計算・徴収します。
また、現行制度では、令和10年分から基礎控除と給与所得控除が引き下げられます。ただし、令和10年分以後の基礎控除の額と給与所得控除の最低保障額は、2年ごとに、直前の額に2年間の全国消費者物価指数の変化率を乗じた額を基準に見直す「物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組み」が創設されました。このため、令和10年分もまた新たな源泉徴収事務が必要になります。
つまり、毎年異なる年末調整等の源泉徴収事務を行うことになるため、改正内容を理解し、注意しながら源泉徴収税額を計算・徴収する必要があります。
合計所得金額に応じて基礎控除額が引き上げられました。
基礎控除額の計算に当たっては、従業員から提出された「給与所得者の基礎控除申告書」を基に控除額を計算する必要があります。
| 合計所得金額 | 給与収入相当額 | 基礎控除(令和8・9年分) | 令和10年分以後 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 104万円(本則62万円+加算額42万円) | 99万円 |
| 489万円以下 | 665万5,556円以下 | 104万円(本則62万円+加算額42万円) | 62万円 |
| 655万円以下 | 850万円以下 | 67万円(本則62万円+加算額5万円) | 62万円 |
| 2,350万円以下 | 2,545万円以下 | 62万円(本則62万円+加算額0円) | 62万円 |
(注)令和10年分以後の合計所得金額132万円以下の基礎控除は、本則62万円+加算額37万円=99万円となる。
加算額は、本則62万円に合計所得階級別に加算した額。
合計所得金額2,350万円超の基礎控除は、従来どおり逓減し、2,500万円超で消失する。
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点(3ページ)を基に作成
給与所得控除の最低保障額は、所得税法上65万円から69万円に引き上げられました。さらに8年分・9年分に限り、租税特別措置法により5万円が上乗せされ、74万円となります。
所得税法の給与所得控除の最低保障額の引き上げに伴い、所得税法別表第5で定める「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正されました。
| 給与収入 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円以下 | 74万円(最低保障額) |
| 360万円以下 | 給与収入×30%+8万円 |
| 660万円以下 | 給与収入×20%+44万円 |
| 850万円以下 | 給与収入×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円 |
出典:国税庁 タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」を基に作成
また、給与等の収入金額が69万1000円以上220万円未満の場合の給与所得の金額は、租税特別措置法の改正により次の金額とすることとされています。
| 給与等の収入金額 | その給与等に係る給与所得の金額 |
|---|---|
| 69万1,000円以上74万1,000円未満 | なし |
| 74万1,000円以上219万1,000円未満 | その収入金額-74万円 |
| 219万1,000円以上219万3,000円未満 | 145万1,000円 |
| 219万3,000円以上219万6,000円未満 | 145万3,000円 |
| 219万6,000円以上220万円未満 | 145万6,000円 |
出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)Q3-1を基に作成
したがって、令和8年12月に年末調整の計算をする際には、これらの改正を加味した、国税庁作成の「令和8年分 年末調整のしかた」に掲載している「令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用して計算する必要があります。
令和7年12月の年末調整で使用した令和7年分の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を間違えて使用しないように注意してください。
これらの改正により単身者・扶養親族なしの場合の課税最低限は178万円となり、その内訳は、
「基礎控除62万円」+「基礎控除加算額42万円」+「給与所得控除69万円」+「給与所得控除加算額5万円(8年分・9年分の時限措置)」です。
基礎控除の引き上げに伴い、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が引き上げられました。
| 扶養親族等の区分 | 合計所得金額 | 給与収入 |
|---|---|---|
| 扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子 | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 特定親族 | 62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超133万円以下 | 136万円超207万円以下 |
| 勤労学生 | 89万円以下 | 163万円以下 |
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点(4ページ)を基に作成
基礎控除等の引き上げは令和8年分以後の所得税から適用されますが、年末調整の際に引き上げ後の基礎控除額と、国税庁作成の「令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。
令和9年分以後の「源泉徴収税額表」は国税庁ホームページに掲載されています。令和8年分以前の給与等について源泉徴収税額を計算する場合には、税額表を間違えないように注意する必要があります。
扶養親族等の所得要件の引き上げは、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されますが、引き上げにより新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族等に係る扶養控除等の適用を受けるためには、従業員から改めて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等を提出してもらう必要があります。
令和8年分の毎月の徴収税額の合計額のうち、年末調整で計算した年税額を上回る分は、年末調整で還付します。
具体的には、年末調整を行った月分(通常は令和8年12月分。納期の特例の承認を受けていれば、令和8年7月から12月までの分)として納付する源泉徴収税額から差し引き、差額を還付します。
ただし、年末調整を行った月分の徴収税額のみでは還付しきれないときは、その後(翌年1月分以降)に納付する徴収税額から順次差し引いて還付します。さらに、還付することとなった日の翌月から2か月を経過しても差額を還付しきれないと見込まれる場合には、給与の支払者が「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を所轄税務署に提出すれば、税務署から還付を受けられます。
給与等の支払をする者は、翌年1月31日までに「給与所得の源泉徴収票」と「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を所轄税務署に提出しなければなりませんが、令和8年度税制改正による「給与所得の源泉徴収票」の変更はありません。ただし、国税システムの更改に伴い、様式が変更になっていますので、国税庁ホームページで確認してください。
また、令和9年1月以後に提出する令和8年分の源泉徴収票については、市区町村に給与支払報告書を提出した場合、税務署への提出は不要です。ただし、給与所得の受給者には引き続き源泉徴収票を交付する必要がありますので、忘れないようにしましょう。
※この記事は2026年11月時点の情報です
執筆=松崎啓介
松崎啓介税理士事務所 税理士、一般社団法人租税調査研究会主任研究員。昭和59年~平成20年、財務省主税局勤務、税法の企画立案に従事(平成10年~平成20年は電帳法・通則法規等担当)。その後、大月税務署長、東京国税局 調査部特官・統括官、審理官、企画課長、審理課長、個人課税課長、国税庁監督評価官室長、仙台国税局総務部長、金沢国税局長を経て税理士登録。
監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
税務・会計・税理士をテーマに雑誌作成・ニュースサイト運営及びコンサルティングを手掛ける株式会社ZEIKENメディアプラスCEO。元税金の専門紙および税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社で新規事業等の立ち上げなどを行い、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
*一般社団法人租税調査研究会(ホームページ https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験をかねそなえた国税出身税理士の研究員・主任研究員が、会員の会計事務所向けに税務判断及び適切納税を実現するアドバイス、サポートを手がける。現在、在籍する研究員・主任研究員は60人。会員会計事務所は約100会計事務所。
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