ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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得意先などを飲食に招待した費用は、交際費として会社に経費として請求できることはビジネスパーソンの常識でしょう。しかし、その交際費が経費に認められても、税法では課税対象となる場合があります。
本記事では、社内外の飲食や会議、冠婚葬祭などで、会社が支払った交際費について説明します。
「交際費=経費になる」というイメージを持っているでしょう。確かに業務のために使ったわけですから従業員の負担にするのではなく、会社(法人)の負担になるのが当然です。しかし、税法上で法人の交際費は原則として損金不算入という形で課税対象とされています。つまり損金不算入とされる交際費では所得を圧縮できず、法人税を節税できないのです。
企業は、収益および費用から利益を算出して経営状態を把握する決算書と、所得を算出して税の申告をする法人税申告書という2つの書類を作成しています。両書類で交際費の扱いが違っており、決算書では費用となりますが、法人税申告書では原則として損金不算入となります。
決算書では収益から経費などの費用を差し引いて利益を求めるので、「交際費=経費になる」という考えも間違っているとはいえません。
しかし、法人税申告書では、決算書の利益に対して、税務調整という計算を行い、課税対象となる所得を求めます。交際費は税務調整において利益に加算される損金不算入項目になるため、課税対象となっているのです。
交際費が原則として損金不算入とされたのは、2013年の税制改正によるものです。ただし、資本金が1億円以下の企業に対しては、年間600万円の90%(540万円)から年間800万円まで金額を拡大した上で、損金算入できる取り扱いが温存されました。つまり、中小法人は税務上も一定額までは交際費を経費とできるのです。
2014年改正では、中小法人の年間800万円までという措置以外に、資本金に関係なく交際費のうち飲食に使われる「接待飲食費」の50%までを損金に認めるという制度が新設されました。これにより大企業でも一部は損金算入が可能になりました。中小企業は法人税申告を行う際、800万円までの定額控除限度額か、接待飲食費の50%で有利なほうを選べます。
また、2006年の税制改正より、1人当たりの金額が「5,000円以下」の飲食費は、交際費に該当しないとされたことも覚えておきましょう。これにより1人当たりの金額が5000円以下である場合には、交際費の中の接待飲食費ではなく、「会議費」という名目で税務上も損金処理することができます。
税法における交際費の概要が分かったところで、資本金に関係なく50%までは経費とすることができる接待飲食費に認められる条件を確認してみましょう。
接待飲食費として認められるためには、税法上で帳簿書類に一定事項を記入しておくことが義務付けられています。その事項は、飲食などが行われた年月日、参加者の会社名と氏名、金額、店の名称と所在地、飲食費と分かるような記載です。これらを領収書の裏や経費精算書、帳簿などに必ず記載しておくようにしましょう。
忘年会など社内イベントとして開催される飲み会の費用は基本的に接待飲食費としては認められません。経費としたいなら「福利厚生費」として計上します。福利厚生費ならば、年間800万円までや、飲食接待費の50%までという制約を受けずに損金とできます。ただし、飲み会や忘年会を福利厚生費とするには、対象メンバーが役員や特定の部署などのように参加者が限定されないことが条件になります。限定すると福利厚生費ではなく社内交際費扱いとなり、交際費としての制限対象となってしまいます。
取引先の役員や従業員の冠婚葬祭に際して、金員や物品を贈答した場合も、交際費として認められています。しかし、ご祝儀、香典などは領収書が発行されないこともあるでしょう。そのような場合、従業員が会社に経費として請求する際、経費精算書などに日時や支払金額、相手先などを記録しておき、案内状や会葬礼状をエビデンスとして保管しておきましょう。
こうした社外への慶弔費は、税務上は「接待費」として損金不算入額になります。一方、従業員やその親族の冠婚葬祭に伴うものは「福利厚生費」として税務上も損金算入できます。スムーズに福利厚生費として税務処理するには、慶弔規定などで支給条件をあらかじめ定めておくとよいでしょう。
接待飲食費や会議費の1人当たり5000円以下という基準や、領収書・経費精算書に記載しておくべき事項などを紹介しました。しかし会社がいくら交際費や会議費と税務当局に主張しても、会社の業務とは関係のないものであれば、そもそも費用や損金に認められません。また社会通念から逸脱するような金額であれば、税務調査で否認されることもあります。
これから年末年始に向けて飲食や贈答の機会が増える時期です。その前に経営者自身が、その税務上の処理を認識するとともに、従業員にも告知し、交際費の使い方を考えてもらいましょう。
執筆=北川 ワタル(studio woofoo)
公認会計士/税理士。2001年、公認会計士第二次試験に合格後、大手監査法人、中堅監査法人にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップ企業の支援から連結納税・国際税務まで財務・会計・税務を主軸とした幅広いアドバイザリーサービスを提供。
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税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ