ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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2019年10月1日から消費税および地方消費税の税率が10%に引き上げられ、同時に軽減税率制度も施行される予定です。施行後の取引には、原則として10%の新税率が適用されますが、一定の条件を満たした取引は、8%の税率が適用される経過措置があります。今回は、主な経過措置について解説します。
事業者が、旅客運賃、映画・演劇を催す場所などへの入場料金を2014年4月1日から税率引き上げ前日(2019年9月30日)までの間に領収している場合、8%の税率が適用されます。
分かりやすくいえば、電車などの交通機関の旅客運賃、映画館・スポーツ観戦などの前売り券(チケットレスの場合を含みます)などの取引です。前売り券の料金を支払った日が、9月30日までなら税率は8%になります。その前売り券を10月1日以降に利用した場合でも、税率は8%のままです。
現時点で2019年10月1日以降に交通機関を利用することが分かっているなら、9月30日までに購入しておくことが節税につながります。なお適用される取引(旅客運賃等の税率に関する経過措置)の詳細については、国税庁の資料を参照ください。
工事・製造に関しては、事業者が請負契約を2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した場合、引き渡しが税率引き上げ後であっても、8%の税率が適用されます。
事業者がこの経過措置の適用を受ける取引を行った場合には、当該取引がこの経過措置の適用を受けるものであることを相手方に対して書面で通知する必要があります。契約書などの書類の作成がない場合でも、契約の締結時期や工事内容などを明らかにしておけば、この経過措置の適用を受けることができます。
2019年3月31日以後に当該請負契約の金額が増加した場合、増額部分は経過措置の適用は受けることはできないので注意が必要です。例えば、2019年3月31日以前に100万円で請負契約をした工事に関して、2019年3月31日以後、請負契約を150万円に変更した場合、増額された50万円は経過措置の適用外になります。
すでに2019年3月31日は過ぎてはいますが、2019年10月1日以降に引き渡しとなる工事・製造の取引では経過措置の影響を確認しておきましょう。
店舗、建物などの不動産賃貸、車や事務機器のリース契約といった資産の貸し付けについても経過措置が適用される可能性があります。事務所や駐車場などを賃借している企業は少なくないと思います。この経過措置の適用についてチェックしておきましょう。
2013年10月1日から2019年3月31日までに締結した取引で、2019年10月1日より前から引き続き当該契約に係る資産の貸し付けを行っている場合、当該契約の内容が以下の「1および2」または「1および3」の要件に該当すれば、2019年10月1日以後に行う当該資産の貸し付けについて8%の税率が適用されます。
(1) 当該契約に係る資産の貸付期間およびその期間中の対価の額が定められていること。
(2) 事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
(3) 契約期間中に当事者の一方または双方がいつでも解約の申し入れをすることができる旨の定めがないこと並びに当該貸し付けに係る資産の取得に要した費用の額および付随費用の額(利子または保険料の額を含む。)の合計額のうちに当該契約期間中に支払われる当該資産の貸し付け対価の合計額の占める割合が100分の90以上であるように当該契約において定められていること。
ただし、2019年4月1日以後に当該資産の貸し付け対価の額が変更された場合には、当該変更後における当該資産の貸し付けについては、この経過措置は適用されません。
店舗、事務所、駐車場といった不動産の貸し付けでは、通常、契約期間中は金額を変更できないような契約になっているケースが多く、次回契約更新時までは経過措置が適用される可能性があります。2019年4月1日以降、貸付金額に変更がない場合は、前述の1から3の条件を満たしているか確認しましょう。
リース契約などの資産貸し付けで、リース取引を所有権移転外ファイナンス・リース取引として、賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理)をしていることがあると思います。その場合で、リース料を支払うべき日の属している課税期間の課税仕入れとして処理をしているときは、8%の税率が適用されます。
つまり、2019年4月1日以前に締結したリース契約で、毎月のリース料として経費処理しているものに関しては、リース期間満了時まで8%の税率が適用されることになります。事務機器、情報機器、車両などをリースで利用している企業は要チェックです。
税率引き上げ後においても、条件を満たせば取引に8%の税率が適用される経過措置について解説しました。そして、これらが適用される取引をきちんと区分経理をするなどの経理処理を行えば税負担の軽減につながります。そのためには2019年10月1日ではなく現時点で、取引にどちらの税率が適用されるのかをしっかり確認して、経理処理が円滑に進むようにしておきましょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2019年4月17日)のものです
執筆=並木 一真
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート。会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。 https://namiki-kaikei.tkcnf.com/
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