ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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大阪シティ信用金庫が2017年6月に大阪府内の取引先に対して行った調査によると、夏季ボーナスを「支給する」と回答した企業が59.9%、支給額の平均は260,756 円となりました。金額は昨年度よりも増えましたが、支給する企業の割合は減っています(2016年調査では「支給する」が61.6%、支給額が258,672円)。
ボーナスというのは、そもそも支給するのかどうか、支給するにしても給与とのバランスはどうするのかなど、悩みどころの多い制度です。今回は法律や税金などの面から、ボーナスの支払いをどのように判断するべきかを紹介します。
「会社の業績が良くないからボーナスをカットする」という話はよく聞かれます。雇用関係について規定する法令である労働基準法には、ボーナスの支給については定められていないため、基本的には会社が自由に支給方法を決めて構いません。したがって、業績が良くないときにボーナスをカットすることも問題にならないのです。
ただし、雇用契約や就業規則、労働協約の中でボーナスを支給する旨や算定方法について定めているのであれば、ボーナスは法的に「給与」と判断されます。その場合、勝手にボーナスをカットすれば「給与未払い」になり、債務不履行やその他の法的な問題が生じます。
従業員へのボーナスは通常「賞与」として経費に計上され、法人税上は損金となります。そのため、ボーナスを支給することは、企業の節税につながるというメリットがあります。
ただし、取締役などの役員にボーナスを支給する際には注意が必要です。「今年は業績が良くて、支払う法人税も多くなりそうだから、役員にボーナスを支給して節税しよう」とボーナスを支給しても、法人税上の損金としては認められません。「役員賞与」は原則として損金には算入されないことになっているからです。
役員へのボーナスを損金にする方法もないわけではありません。それは「事前確定届出給与」として支給する方法です。とはいえ、事前確定届出給与として損金に算入するためには、役員賞与を支給する時期や金額を、あらかじめ税務署に届け出ておかなければなりません。つまり、「業績が良いから役員賞与で節税しよう」という“後出し”の節税はできないということです。
ボーナスの支払い時期は、何も7月、12月前後と決まっているわけではありません。例えば、12カ月に分けて払う方法もあります。従業員にボーナスを出すのと、ボーナスを抑えて毎月の給与を増やすのとでは、どちらが得になるでしょうか。
ボーナスの計算期間とボーナスの支給時期は異なります。例えば、1月1日から6月30日が計算期間ならば、夏のボーナスを7月末に支給するなどの方法が考えられます。この場合、4月30日で退職した人には1月1日から4月30日に対応するボーナスを支給する必要はありません。
一方、12カ月均等に払うのであれば、1月1日から4月30日に対応する給与にも、ボーナス分も含まれているので、従業員側から見れば、退職した場合でも「取りはぐれ」は生じません。したがって、従業員の立場では均等に払う方がお得、経営者の立場ではボーナス支給の方がお得ということになります。
どんな支給方法を選んでも、税金や社会保険料は基本的に変わりません。従業員の所得税は、ボーナスを多くするかどうかによって毎月の源泉徴収税額、つまり給与天引きの額が変わっていきます。しかし、年末調整により最終的に負担する所得税額が同じになるので、最終的な負担額に違いは生じないのです。
住民税も年間の所得を基に計算されるため支払額は変わらず、健康保険や厚生年金などの社会保険料についても、月額給与とボーナスでは同じ保険料率が適用されますので、トータルの保険料にはほぼ差はありません。
中には、ボーナス代わりに社員を海外旅行に連れて行く企業もあるかもしれません。確かに会社が負担する社員旅行の費用は、基本的に「福利厚生費」として経費になります。
ただ、社員旅行の規模などによっては福利厚生費として処理できず、給与の支払いと認定されて、従業員が課税されることもあります。給与所得に対する所得税を支払う際には、源泉徴収して納付する義務は会社にあるので、従業員任せというわけにもいきません。
どの程度の旅行ならば大丈夫なのかは判断が難しいところです。国税庁のWebサイトによれば、「旅行の期間が4泊5日以内であること」「旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること」の2要件を満たせば、基本的には給与として課税されないことになっています。ただし、旅行の諸条件を総合的に勘案して判定するというのが原則です。あくまで目安と考えた方がよいでしょう。
業績が好調なときに、国に納める税金を増やすのか、節税して従業員への支給を増やすのかは、経営者の考え方次第です。納税額が増えるということは、業績向上の証しであり、金融機関などの信用が増し、融資などを受けやすくなるというメリットがあります。一方、従業員への支給を増やせば、モチベーション向上が期待できます。どちらが自社にとってメリットになるのかよく考えて判断してください。
執筆=北川 ワタル(studio woofoo)
公認会計士/税理士。2001年、公認会計士第二次試験に合格後、大手監査法人、中堅監査法人にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップ企業の支援から連結納税・国際税務まで財務・会計・税務を主軸とした幅広いアドバイザリーサービスを提供。
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税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ