ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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会社の業務で支払ったものを経費として計上するには、その支払いを証明する「領収書」が必要です。しかし、領収書をなくしたり、ネットショッピングや自動販売機で商品を購入したりする際など、そもそも領収書が発行されない場合もあります。このようなときにも、適切な方法をとれば経費として計上できます。
領収書とは、商品やサービスなどの取引があった際に、その代金を受領したと証明するために、代金の受領者が発行する書類です。領収書には、宛名(代金の支払者)、支払日、金額、購入したものやサービスの内容、発行者(代金の受領者)の記載が必要になります。領収書を受け取る際には、記載漏れがないか確認しましょう。
領収書の宛名が「上様」となっているものも見受けられますが、これは受取人が誰なのかを確認できないため、税務調査の際などに経費として認められない可能性があります。たとえ急いでいたとしても、受取人の正式名称を記載してもらいましょう。また、感熱紙を使用した領収書は、時間の経過により印字された文字が消えてしまう場合があるので、保管に注意してコピーを取るなどするとよいでしょう。
それでは、領収書がない場合にはどう対処すればよいのでしょうか。
領収書の再発行を依頼しても断られる場合が多いですが、それを承知の上で頼んでみるという方法があります。領収書の再発行はできなくても、別の形式で支払いの事実を証明する書類を発行してもらえる可能性があります(再発行等がなかった場合の対処法は後述します)。
なお、消費税の課税事業者(本則課税)の場合は注意が必要です。2023年10月1日から消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まりました。これにより、仕入税額控除を行うためには、登録を受けた適格請求書発行事業者が発行する「適格請求書」(インボイス)の保存が必要となりました。インボイスに当たる領収書を紛失すると仕入税額控除ができなくなる場合があるので、領収書の紛失には注意しましょう。
近年はキャッシュレス化が進み、①クレジットカード払い、②電子マネーの利用、③公共交通機関等のICカードの利用、④高速道路のETCの利用などのキャッシュレス決済が多くなっており、領収書をもらえない支払いが増えています。
このような場合には、利用先から発行される「利用明細書」等を領収書の代用として利用できます。なお、利用明細書の中に業務とは関係ないプライベートの支払いがある場合には、マーカーペンで印をつけるなど、業務用のものと混同しないよう注意しましょう。
最近は「紙」の明細書ではなく「電子明細」が増えています。電子明細の場合は、電子帳簿等保存制度の導入により、電子保存しなければなりません。PDFで電子明細を保存後、年月日、金額、取引先を検索できるよう電子書類に記録を残す必要がありますので注意が必要です。
銀行窓口やATMを利用して振り込みによる支払いを行う場合は、振込明細書を領収書の代用とします。請求書がある場合は請求書と一緒に保管し、何のための振り込みか分かるようにしておきましょう。請求書がないときは振込明細書の余白に支払いの目的や内容をメモしておきましょう。
現金払いで領収書がもらえない理由として、①取引先への祝儀・香典などの慶弔費、②自動販売機での購入、③公共交通機関の利用、④領収書がもらえなかった(またはなくした)などが考えられます。このような場合には「出金伝票」を起票し保存することで経費計上が可能となります。
出金伝票には、日付、支払先の氏名・名称、金額、支払いの目的・内容の記載が必要になりますので、忘れずに記載しましょう。
なお、祝儀や香典の場合、招待状・案内状のように、その支払いの必要性を証明できるものがあれば、出金伝票の「信頼度」が高まりますので、できるだけ出金伝票に添付して保管しましょう。
領収書がなくても、出金伝票などを領収書の代用として経費計上する方法を解説してきました。今後は、インボイス制度や電子帳簿等保存制度の導入により、消費税の仕入税額控除や証拠書類の保存方法などが複雑になってきます。関連情報の収集を心がけ、誤りのないよう注意しましょう。
執筆=松田敬一
租税調査研究会主任研究員・税理士。東京国税局課税第一部資料調査第一課、同総務課課長補佐、藤沢税務署総務課長、相模原税務署副署長、署特別国税調査官(法人・開発・総合)、東京国税局調査第二部統括官、鎌倉税務署長を経て2023年7月退職。同年8月税理士登録。
監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役、TAXジャーナリスト、会計事務所ウオッチャーとして活動。元税金専門紙及び税理士業界紙の編集長。
一般社団法人租税調査研究会(https://zeimusoudan.biz/about)
法人税、源泉所得税、所得税、消費税、印紙税、資産税、酒税・揮発油税、関税、国際税務、公益法人、査察、事務訴訟などの各税務分野の国税出身税理士を招集し、会計事務所向けに相談・教育等を手掛ける団体。現在、在籍する研究員・主任研究員は55名。会員会計事務所は約100会計事務所。
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