ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
中小企業・小規模事業者における生産性向上を図るため、ITツール導入費(ソフトウエア費用や導入関連費)の2分の1を補助する、「IT導入補助金2019」(平成30年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)という制度があります。2018年度もIT導入補助金はありましたが、今年度は補助金額が拡大され、より高度なITツールの導入が可能となりました。
補助金を利用したITツールの導入は、自社の生産性を向上させることから、人材不足の解消につながります。ただし、申請期間が非常に短くなっておりますので、これを機会に利用を検討してはいかがでしょうか。補助金で導入できるITツールは、帳票などの情報をパソコンに入力するといった定型業務を自動化するソフトウエアや、顧客情報を一元管理するシステムなど多岐にわたります。
業種によってさまざまなITツールの導入が考えられます。例えば卸・小売業向けとしては、個別に管理していた受発注管理や在庫管理、売上管理を自動的に連携できるようにするシステム。宿泊業なら、自社システムと外部の宿泊予約サイトへの空室情報更新を一元管理するシステム。保育・介護業なら、帳票などの書類作成や、申し送りといった顧客・勤怠情報の共有が事務所外から可能になるシステム。運輸業なら、配送伝票をシステムに自動で取り込み、効率的な配車計画を組んでくれるシステムといった具合です。
中小企業・小規模事業者は、Webサイトの開設や、会計・決済システムの導入レベルはなんとか実行しても、さらに踏み込んで自社の業務フローを効率化するようなITツールの導入にはなかなか至りません。導入資金はもちろん、ITに関する知識やノウハウが必要という点で、難易度が高いというハードルを事業者に感じさせるケースがありました。この補助金は、そうしたハードルをクリアすることにつながるコンサルティング費なども補助してくれる制度なのです。
今年度の補助金で対象となるITツールには、メインとなる「ソフトウエア」に加え、「オプション」と呼ばれるソフトウエアの機能拡張・データ連携ツールなどや、「役務」と呼ばれるソフトウエアの導入コンサルティング費・保守サポートなども含まれています(図1参照)。
■図1
(出典:「かんたん解説!IT導入補助金2019」)
ご覧の通り「ソフトウエア」については、「業務パッケージソフト」「効率化パッケージソフト」「汎用パッケージソフト」という3つに大別されています。その中で主体となるものが業務パッケージソフトです。これをプロセス(部門)によって8つに細分しています。
プロセス(部門)ごとに対象となるソフトウエアが定められており、例えば「決済・債権管理・資金回収管理」プロセスについては、売上・売掛から回収までを管理するソフトウエアや債権管理ソフトウエアなどとされています。他プロセスの対象となるソフトウエアの詳細については、「ITツール登録についての注意点」を参照してください。
「オプション」とは、ソフトウエア導入に伴い必要となる製品・サービスのことで、「拡張機能」「データ連携ツール」「セキュリティ製品」「ホームページ関連費」からなります。ホームページ関連費は、業務パッケージと連携したものでなければ補助対象にならないので注意が必要です。
「役務」とは、ソフトウエアの導入に伴って必要となる費用で、具体的には、そのソフトウエアの導入コンサルティング費用、導入研修費用、保守サポート費用(最大1年間の費用)などのことをいいます。
申請の流れは以下のようになります。まずは自社に申請資格(資本金や従業員数など)があるかを「補助対象について」で確認します。そして補助金の交付対象となっているITツールを選定。その導入を支援してくれるIT導入支援事業者を探し、事務局へ補助金申請の手続きを行います。
1次公募の交付申請期間は6月28日までですから、今から対応しても応募は難しいかもしれません。そうした場合、2次公募が7月中旬から開始予定となっていますから、それに向けて申請資格の確認やITツールの選定などを始めましょう。
補助金の交付決定後は、事業実施期間(交付決定日の9月1日から5カ月間を予定)に申請したITツールを導入しなくてはなりません。この事業実施期間外に導入したものについては、補助金の対象外となりますので、IT導入支援事業者へ導入に必要な期間の確認を行いましょう。そして導入後は、一定の期間、その効果を報告する義務もありますから注意してください。
2019年度のIT導入補助金は、前年度より多機能・多様なITツールの導入に活用できるように補助額が増額され、業務プロセスやバックオフィス業務を中心としたIT化を促進する内容になっています。申請書類は、生産性向上が確実に見込めるITシステムの導入であることをアピールした内容にすることで、採択(交付決定)される可能性が高くなるでしょう。
IT導入補助金は、ITツールを導入して、ITツール関連費用全額を自社で支払った後に、支払った金額の2分の1が交付されます。そのため、補助金交付までの間の資金繰りには注意が必要です。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2019年6月4日)のものです
【関連記事・参考資料】
かんたん解説!IT導入補助金2019
https://www.it-hojo.jp/
https://www.IT-hojo.jp/h30/doc/pdf/h30_tyusyo_handbook.pdf
執筆=並木 一真
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート。会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。 https://namiki-kaikei.tkcnf.com/
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