税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第40回) 商品券は交際費?正しい処理で税務調査対策を万全に

資金・経費

公開日:2019.08.27

 日々の業務において、さまざまな経費が発生します。経費の中でも注意したいのが交際費の取り扱いです。「何となく」といった曖昧な判断で勘定科目を分けて経理処理していると、税務調査の際に損金として否認されてしまうケースがあります。

 そうなれば納税額が増えるだけでなく、ペナルティーとして加算税を追徴課税される可能性が高まります。そこで今回は、「商品券」「会費」「見舞金」といった具体的な事例を通じて、法人における交際費の範囲、損金として認められる条件について解説します。

交際費の考え方の基本

 資本金1億円以下の法人の場合、交際費の金額が年間800万円以下であれば、全額が損金扱いされます。資本金が1億円超の法人については、飲食などによる交際費の50%までが損金扱いとなり、それ以外は全額「損金不算入」(損金に認められない)となります。だからといって800万円までは何でも交際費にすれば損金に認められる、飲食などによる経費ならば50%が損金扱いになるというわけではありません。交際費に認められる条件があるのです。

※「経費」と「損金」の違いについては、第19回「飲食費や冠婚葬祭で節税ができる!経費と損金の違い」で解説しています。

<使い方次第で変わる商品券>
 まずは商品券です。会社で商品券を購入した場合、用途や贈る相手によって税務上の処理が変わります。例えば、商品券を取引先に贈答した場合は「交際費」に該当します。

 また宣伝効果を意図した抽選などにより、一般消費者に対してプレゼント(法律用語では交付)する場合は「広告宣伝費」での処理となります。ただし、1件あたりの金額が大きいと交際費と見なされる可能性がありますので、1件あたりを3000円以下に設定するなど少額にしておいた方がよいでしょう。

 商品券を従業員に渡す場合は、現金と同等の取り扱いになりますので、金額の多少にかかわらず「給与」になります。ただし、雇用契約に基づいて支給される結婚、出産などの祝い金品としている場合は、その金額が支給を受ける人の地位などに照らして、社会通念上相当と認められる金額ならば、勘定科目が変わり「福利厚生費」になります。

 次に会費です。商工会のような経営者団体などに支払う通常の会費は、「諸会費」として経理処理され損金扱いになります。しかし実際の使い道が、飲み会などの懇親会費であれば、「交際費」に該当します。領収書に「会費」と記載があっても、その実態を確認しましょう。もし税務調査で、諸会費ではなく交際費と認定され、前述した800万円を超えるようなことになれば、損金不算入となり加算税が追徴課税されてしまいます。

 同じく諸会費としては、ロータリークラブのような社会奉仕団体などへの会費がありますが、こちらは交際費扱いとなります。

<判断が難しいタクシー代や見舞金>
 タクシー代の経理処理もさまざまなケースが考えられます。例えば、取引先を接待するために自社が相手方のタクシー代を負担した場合は「交際費」に該当します。それに対して、取引先の懇親会に参加するために自分が使用したタクシー代は、接待、供応(きょうおう)のために支出した交際費ではありませんので「旅費交通費」として処理しましょう。もちろん、従業員などがプライベートで使用したと判断されるケースでは「給与」に該当します。

 見舞金は、通常の取引先の慶弔、禍福に際して届けたなら「交際費」に該当します。一方、取引先が災害に見舞われた際に謹呈する「災害見舞金」に関しては、被災前の取引関係の維持・回復を目的として届けた場合、交際費ではなく「雑損失」や「販売促進費」などの勘定科目で経理処理し、損金扱いにすることができます。ただし、献金する期間は取引先が通常の営業活動を再開するまでに限定されているので注意が必要です。

福利厚生費・給与などの税務上の取り扱い

 経費が「旅費交通費」「福利厚生費」「広告宣伝費」に該当する場合、税務上で全額が損金扱いとなります。これらの科目に、実情は交際費だったというものが混入しないようにしましょう。

 また会社の経費として処理したが、実情はプライベートに使われていた場合、それは経費ではなく使用した従業員の給与に該当します。会社側は給与とされたものは損金扱いとなりますが、その従業員に対しては所得税が課税されることになりますので、誤った処理は従業員にとって不利益に働く可能性があります。

 税務調査では、交際費関係がチェックされるケースが非常に多くなっています。購入した商品券が正しく経理処理されているか、また、交際費の中にプライベートなものが含まれていないかなどが税務調査されています。こうした経理処理が不適切だったなら、その一部もしくは全額が損金として認められません。

 経費の実情まで把握していないと、適正な経理処理は行えません。「何となく……」といった曖昧な判断では、後で加算税・追徴課税ということになりかねません。経理処理に迷った際は税理士に相談してみてください。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2019年7月22日)のものです

【関連記事・参考資料】
国税庁HP・タックスアンサー「交際費等と寄附金との区分」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5262_qa.htm

執筆=並木 一真

税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート。会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。 https://namiki-kaikei.tkcnf.com/

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