ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
平成28年(2016年)の訪日外国人旅行者数は、前年比21.8%増となる2403万9千人と、過去最高を記録しました(日本政府観光局調べ、推計値)。政府はさらなる外国人旅行者数の増加を後押しており、ビジネスや事業を進める上でも、国の施策を大いに活用して、外国人旅行者を取り込むのが賢い方法といえるでしょう。
そこで今回は、観光庁を中心とする主要な補助金施策を紹介したいと思います。
政府は、「観光先進国」への新たな国づくりに向けて、平成28年3月、新たな観光ビジョンとして、「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。その中で平成27年には約2000万人だった訪日外国人旅行者を、2020年には4000万人、2030年に6000万人へと増やす目標を立てています。これを実現するためには、外国人旅行者がストレスなく観光を楽しめる環境づくりが不可欠です。
観光庁も、滞在時の快適さや観光地の魅力の向上、観光地までのスムーズな移動が重要課題として認識しています。そのため、平成29年度予算では、外国人旅行者向け施策の中でも、特に多くの予算(85億3千万円)が、外国人旅行者の快適な環境づくり対策に配分されていました。
具体的な施策としては、観光案内所などの機能向上、宿泊施設や交通機関などにおける無料公衆無線LAN環境の整備、「手ぶら観光」の推進などが盛り込まれています。
補助金が交付される事業としては「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」や「訪日外国人旅行者受入基盤整備・加速化事業」などがあります。これらの補助金の対象となるのは、案内標識、デジタルサイネージ(電子看板)、ホームページ、案内放送などの多言語表記に要する経費、無線LAN整備に関する経費などで、平成29年度からは公衆トイレの洋式化に要する経費も対象となる予定です。
補助事業へ応募するためには、企業や団体が地方運輸局に必要書類を提出する必要があります。補助率は、経費の3分の1以内となるケースが一般的です。
国内外から選ばれる国際競争⼒の高い観光地域をつくるためには、地域独自のブランドを確立することが重要です。そこで、複数の観光スポットを含む地域を「観光圏」と認定して、独自のブランド創出を支援する「観光地域ブランド確立支援事業」が行われています。平成28年度は西日本では香川、別府、阿蘇、佐世保などの地域が経費補助の対象に選ばれました。
この事業に応募するためには、企業単位ではなく、地域の観光事業者や農商工関係者、NPO法人や地域住民が参画する事業体「観光地域づくりプラットフォーム」という法人単位で、地方運輸局などに必要書類を提出する必要があります。
例えば、「香川せとうちアート観光圏」では、公益社団法人香川県観光協会が観光地域づくりプラットフォームとなっています。補助額は、ブランド戦略の策定については上限500万円、ブランド戦略に基づく事業については事業費の4割となっています。
観光立国と地方創生を共に実現させるためには、訪日外国人の地方誘客が決め手となります。この誘客を成功させるためには、テーマ性やストーリー性を持った魅力的な観光ルートの形成を促進することが有用と考えられています。そこで、外国人旅行者の平均滞在日数(6~7日)にマッチした複数の都道府県をまたがる「広域観光周遊ルート」を創出するための施策が行われています。
この広域観光周遊ルートには平成27年、28年の両年度で合計11ルートが追加されました。西日本では、道後温泉や小豆島など、四国と瀬戸内海の名所を巡る「スピリチュアルな島~四国遍路~」、出雲大社や鳥取砂丘など、山陰地方を巡る「縁(えん)の道~山陰~」などが選定されています。
補助事業への応募は、地方公共団体や民間事業者で構成された協議会が地方運輸局などに必要書類を提出します。平成29年度予算では16億1200万円が割り当てられており、補助金の対象も協議会の運営経費、無線LAN整備、トイレの改修、Webによる宣伝費など広範囲にわたっています。
地方誘客には上記の周遊ルートのほか「テーマ別観光」による観光資源のアピールも有効と考えられます。テーマ別観光とは、複数の地域に点在する特定の観光資源に触れることを目的として、旅行者が全国各地を訪れる観光のことを指します。平成28年度は「エコ」「街道」「近代建築」などをテーマとした観光プランが選ばれました。
補助事業への応募は、地域の協議会や団体の代表者が観光庁観光資源課に必要書類を提出する形式となります。この事業の平成29年度予算は1億5100万円(前年比217%)となっており、補助金の対象には調査費用、地域の協議会の活用や共同取組のための費用などが含まれます。
公衆無線LAN環境は訪日外国人旅行者が快適に滞在するために欠かせない要素となっています。公衆無線LAN環境については、観光庁だけでなく、通信全般を管轄する総務省でも「公衆無線LAN環境整備支援事業」という補助事業を行っています。
補助事業への応募は、一定の地方公共団体および第3セクターが所轄の総合通信局などに必要書類を提出します。平成29年度予算は31億9千万円、補助の対象は「公共的な防災拠点等」となっています。この「公共的な防災拠点等」には博物館、文化財、自然・都市公園、案内所などの観光施設も含まれます。
今回紹介したような補助事業は、年度によって応募要件、対象経費、難易度(予算の規模や採択率)などが変わる場合がよくあります。また、募集期間が短くて、応募のタイミングを逃してしまうケースも見受けられます。地方公共団体を巻き込むなど応募にはかなりの時間を要することにあります。公募情報を、観光庁、総務省など各省庁のホームページをこまめに確認し、少しでも早くチェックしておきましょう。
執筆=北川 ワタル(studio woofoo)
公認会計士/税理士。2001年、公認会計士第二次試験に合格後、大手監査法人、中堅監査法人にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップ企業の支援から連結納税・国際税務まで財務・会計・税務を主軸とした幅広いアドバイザリーサービスを提供。
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税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ