ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
政府は現在、国民一人ひとりの医療・介護データとICTを連携することで、個人の健康や生活を向上させる仕組みづくりを進めています。そのため、医療・介護事業者が新たにICT関連設備を導入する際には、その費用の一部を補助金として、国から受け取れるケースがあります。
厚生労働省の平成29年度予算でも、医療・介護業界に関するさまざまな補助施策の導入を決定しています。今回はその中からいくつか紹介します。
厚生労働省が用意した医療・介護に関連した補助施策として、まず「地域支援事業」と「地域医療介護総合確保基金」が挙げられます。これらは、今後ますます高齢化が進む社会に対処するための広範な事業です。2025年には、いわゆる“団塊の世代”が75歳以上となり、医療、介護の需要は急増すると予想されるため、5年後、10年後の動向も見据えた対策が必要という認識より設けられた事業です。
「地域支援事業」は、市町村が主体となって在宅医療と介護を連携し、認知症施策を推進するなどのさまざまな事業を後押しするものです。市区町村を対象とした制度で、平成29年度予算では、前年度予算より20億円増の215億円が計上されています。
「地域医療介護総合確保基金」は都道府県に設置される基金で、「医療分」と「介護分」に分かれており、それぞれ平成29年度予算では602億円、438億円が割り当てられています。基金のうち「医療分」では(1)病床の機能分化や連携に必要な施設や設備の整備(2)在宅医療の推進(3)医療従事者等の確保、養成などの事業を支援するために活用されます。また、「介護分」では(1)介護施設等の整備(2)介護人材の確保などの事業を支援するために活用されます。
例えば、大阪府ではこの基金(医療分)を活用して「大阪府地域医療機関ICT連携整備事業補助金」を交付しています。補助の対象となるのは、病診情報システムを導入するために必要なサーバーやネットワーク機器などの経費で、補助率は2分の1(上限2,000万円)となっています。補助金の申請は、病院が大阪府に対して事業計画書などを提出する形となります。
介護分では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、地域密着型のサービス施設・事業所を整備する事業者に対して、開設準備経費の支援を行う制度があります。平成28年度であれば、空き家を活用した在宅・施設サービスを整備する事業者も対象となり、その際には改修補助金として1施設当たり850万円が支給されました。申請窓口は、設置予定地の市区町村となります。
高齢化社会に向けた補助金は、これ以外にもさまざまなものがあります。例えば、「介護ロボット開発等加速化事業」もその1つです。平成29年度予算で、3億円が計上されています。この事業は、介護ロボットの開発や普及について、着想段階から導入・実証段階の各フェーズに応じた支援を行うことを目的としています。
平成27年度補正予算で実施された「介護ロボット等導入支援事業特例交付金」事業では、介護事業者が、サイバーダイン社の介護ロボット「HAL」など、20万円超の介護ロボットを導入する際に、1事業所あたり300万円を上限として、費用が補助されるというものでした。申請方法は、都道府県経由で市町村に交付金に関する通知が出され、市町村から介護事業者に購入の意向を確認し、希望する事業者が市町村の担当部署に必要書類を提出するというものでした。
平成29年度予算で新たに2.3億円が計上されることとなった事業として、「介護分野のICTの活用等による生産性の向上」があります。この事業は小規模事業者が介護記録などのICT化を進めるための試行的事業を行うことを目的としたものです。事務所間を連携したICTの連携や、介護現場におけるペーパーレス化を推進するようなICT機器の導入も、補助の対象となります。
今回は厚生労働省が中心となって実施するさまざまな補助事業について紹介しました。具体的な募集要項や申請手続きに関しては、まだ詳細が決まっていないものもあります。今後、Webサイトなどに詳しい情報が掲載されるはずです。本記事でおおまかにどのような事業があるのか把握した上で、詳細をチェックしてください。
執筆=北川 ワタル(studio woofoo)
公認会計士/税理士。2001年、公認会計士第二次試験に合格後、大手監査法人、中堅監査法人にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップ企業の支援から連結納税・国際税務まで財務・会計・税務を主軸とした幅広いアドバイザリーサービスを提供。
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