税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第107回) お歳暮を経費で落とすためのポイント

業務課題 経営全般資金・経費

公開日:2024.10.21 更新日:2025.11.04

 2025年もすでに11月。今年も残すところ約2カ月となりました。この時期になると、お歳暮選びを年の瀬の恒例行事としている方も多いのではないでしょうか。
 会社では、「お歳暮を贈ればすべて経費で落とせる」と思っている人も少なくありませんが、実際には経費として認められるための条件があります。

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「交際費」で落とすためには

 会社で支出するお歳暮にかかる費用は、運送代を含め、原則として「交際費」として扱われます。税務上の交際費とは、「得意先や仕入先など事業に関係のある者に対して、接待・供応・慰安・贈答などの行為のために支出する費用」のことです。

 ただし、会社の規模により一定額を超える部分は経費として落とすことができず、損金不算入とされます。つまり、税法上の交際費とは「仕事上の付き合いに関するおもてなし」の意味合いを持つ支出です。

 交際費を損金算入できる範囲は、企業の資本金規模によって異なります。①資本金が1億円以下の法人、②資本金が1億円超~100億円以下の法人、③資本金が100億円超の法人に区分され、それぞれで損金算入できる金額が定められています。

(詳細は「個人事業主・小さな会社の納税入門(第27回)」参照)。

お歳暮は消費税の課税対象

 購入したお歳暮は、原則として消費税の課税対象です。ただし、商品券やプリペイドカードなどをお中元やお歳暮として送る場合は、消費税が非課税となります。

 ところで、お歳暮で飲食関係の品を贈る場合、軽減税率制度が適用されるのでしょうか。軽減税率とは、通常10%の消費税率を、飲食料品などに限って8%とする仕組みです。ただし、アルコール類は軽減税率の対象外です。たとえば、お歳暮で「ビールとおつまみのセット商品」を購入した場合を考えてみましょう。

 ビールは酒類であり税率10%、おつまみは食品であるため軽減税率8%が適用されます。酒類とは、酒税法で定められたアルコール分1度以上の飲料をさします。

 一方、飲食料品とは食品表示法で定める「食品」のことで、食品衛生法に規定される「添加物」も含みますが、「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」は除かれます。したがって、ナッツやピーナッツなどの食品は、酒類を除き軽減税率の対象となります。

「一体資産」か否かが判断ポイント

 酒類と食品がセットで販売されている場合、税法上ではそれを「一体資産」とみなし、一定の基準を満たすかどうかで税率が変わります。軽減税率の対象となる「一体資産」と判断されるには、次の2つの条件を満たす必要があります。

1 一体資産の税抜価格が1万円以下であること
2 一体資産の価額のうち、食品の価額が全体の3分の2以上を占めていること

 たとえば、お歳暮が3,000円で、そのうちおつまみ部分の価額が1,000円であれば、3分の1にとどまるため「一体資産」には該当せず、消費税は10%となります。

 また、ケーキや冷凍食品などを購入する際に付けられる保冷剤は、飲食料品には該当しないため軽減税率の対象外です。ただし、食品を提供するために必要な包装資材や容器などは、食品と合わせて一つのものとして扱われます。

通信販売の場合とカタログギフトの扱い

 お歳暮をインターネットなどで購入する場合でも、酒類を除き飲食料品であれば軽減税率(8%)の対象になります。ただし、軽減税率対象外の商品と一緒に購入した場合は、それぞれの税率で消費税額を計算する必要があります。

 もう一つ注意したいのは「送料」です。送料は食品を運ぶ目的であっても、飲食料品の譲渡対価ではないため、軽減税率の対象外となり、税率10%が適用されます。

 また、最近ではカタログギフトを贈るケースもありますが、カタログギフトの場合は、掲載されている商品が飲食料品であっても税率10%が適用されます。これは、カタログギフトの購入が「商品の購入」ではなく「サービスの提供」とみなされるためです。

 税金についての知識を深めることで、自分がどれだけ税金を負担しているのか、国がどのように使っているのかを意識できるようになり、政治や社会を見つめる目も一段と養われるでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

執筆=一般社団法人租税調査研究会
一般社団法人租税調査研究会(https://zeimusoudan.biz/about
法人税、源泉所得税、所得税、消費税、印紙税、資産税、酒税・揮発油税、関税、国際税務、公益法人、査察、事務訴訟などの各税務分野の国税出身税理士を招集し、会計事務所向けに相談・教育等を手がける団体。現在、在籍する研究員・主任研究員は55人。会員会計事務所は約100会計事務所。
主な著書に『一冊ですべてわかる!暗号資産の税務処理と調査対応のポイント』(第一法規)、『国税OB税理士による 税務調査のすべて』(大蔵財務協会)、『加算税の最新実務と税務調査対応Q&A判決・裁決・事例で解説』(大蔵財務協会)、『税目別ケースで読み解く!国際課税の税務調査対応マニュアル』(ぎょうせい)など多数。

監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役、TAXジャーナリスト、会計事務所ウオッチャーとして活動。元税金専門紙・税理士業界紙の編集長。

【TP】

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