ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
2019年12月に令和2年度税制改正大綱が閣議決定されました。企業の内部資金・技術活用や投資につながるための税制を新設するなど、日本経済の成長に比重が置かれています。今回は、中小企業経営者が知っておきたい税制改正のポイントや詳細について、法人課税を中心に解説します。
オープンイノベーション税制の新設
独自の技術や事業分野を持つ中小ベンチャー企業が、他企業の資金援助を得て、新たな事業やビジネスをつくり出し、成長を後押しすることを狙った税制が新設されます。
未上場で設立10年未満の中小ベンチャー企業に出資した場合、出資額の25%相当額の所得控除が可能になります。
特定事業活動(※1)を行う青色申告決算法人が、2020年4月1日から2022年3月31日までの間に特定株式(※2)を1億円以上(中小企業は1000万円以上)取得、または出資対象が外国法人なら5億円以上取得した場合において、取得価額の25%以下を特別勘定として経理した金額(その事業年度の所得額が上限)を損金算入できます。
※1 特定事業活動:自らの経営資源以外の経営資源を活用して高い生産性が見込まれる事業を行うこと、または新たな事業の開拓を行うことを意味します
※2 特定株式:産業競争力強化法の新事業開拓事業を行う国内法人(既に事業を開始している法人で設立後10年未満)やこれに類する外国法人の株式のうち、一定の要件を満たす経済産業大臣の証明があるもの
エンジェル税制の拡充
資金調達は、創業間もない中小ベンチャー企業にとって大きな課題です。それをサポートする制度が12年ぶりに拡充されます。対象となる中小ベンチャー企業を設立後5年未満(以前は3年未満)に拡大。また、投資家にとっては、認定されたファンドや株式投資型クラウドファンディングを通じた投資がしやすくなりました。
交際費などの損金算入制度を延長
交際費は、中小企業にとって事業展開や販売促進に必要な経費であることを踏まえ、損金不算入制度が延長されます。
原則として、企業が支出した交際費は損金に算入できないとされていますが、特例として資本金1億円以下の中小企業は、交際費などのうち接待飲食費50%相当額以下、または交際費などが年800万円(定額控除限度額)以下のいずれかを損金算入できる特例措置が2年延長されます。ただし、接待飲食費損金不算入の特例の対象企業は、資本金100億円を超える企業が除外されます。
中小企業の少額減価償却資産に関する必要経費算入の延長と要件見直し
中小企業などの少額減価償却資産取得価額の損金算入特例について、適用期限が2年延長されました。ただし、その対象法人から連結法人が除外され、常時雇用の従業員数要件が500人以下(現行1000人以下)に引き下げられます。設備投資を検討している中小企業経営者にとっては良い機会ですし、自社の事務負担軽減や事業効率アップにつながる点もあります。
地方納税制度の延長
本社機能を地方に移転・拡充する際、都道府県から認定を受けた事業者が特定業務施設の建物などを取得したり、雇用者数を増加させたりした際、一定の要件を満たした場合に適用される特別償却、または税額控除制度適用期限が2年延長されました(所得税も同様)。
また、企業版ふるさと納税制度の適用期限が5年延長されました。税額控除割合が2倍に引き上げられ、税の軽減効果が最大9割(現行6割)となったのです。個人版ふるさと納税と異なり、返礼品などはありませんが、寄付実績に応じて企業名が公表される利点があります。
消費税申告期限の延長
法人税確定申告書提出期限延長の特例適用制度を受ける法人が、所要の届出書を提出した場合、法人税と同様に消費税確定申告書の提出期限を1カ月延長できるようになりました。2021年3月31日以後に終了する事業年度末日の課税期間から適用することができますが、延長された期間の利子税がかかりますので注意しましょう。
中小企業や小規模事業者の再編・統合についての税制
中小企業が認定を受けた経営力向上計画から、企業再編・統合を加速させる措置の適用期限が2年間延長(必要な登録免許税・不動産取得税の軽減)されます。後継者不在や事業継承が難しい中小企業は、活用を検討したい制度の1つです。
5G 導入促進税制
スマートフォンなどに利用される第5世代移動通信システム・5Gは超高速・大容量の特徴があり、IoT、さまざまな事業のスマート化、人手不足対策などで活用が期待されています。これに関連する設備投資は、大企業が実施するケースが多いと思われますが、中小企業でも設備投資を行えば、もちろん以下の税制が活用できます。
一定の法人が2022年3月31日までの間に、5Gの特定高度情報通信認定等設備(具体的な対象設備は法令施行後に確定)を取得などして国内にある事業の用に供した場合には、取得価額につき15%税額控除(法人税額の20%を上限)または30%の特別償却ができるというものです。
連結納税制度の見直し(グループ通算制度への移行)
連結納税制度について、企業グループ全体を1つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の各法人が法人税額を計算して申告を行いつつ、損益通算などの調整をする仕組みになりました。このグループ通算税度は2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
以上のような改正点のほか、個人所得課税については、ひとり親(寡婦、寡夫)に対する控除の見直し(2020年以後の所得税から)、低利用や所有者不明土地譲渡などへの課税(関連法の施行日もしくは2020年7月1日の、いずれか遅い日から2022年12月31日までの譲渡)、NISA(少額投資非課税制度)改正(2024年)、確定拠出年金法などの改正(時期未定)、などが税制改正大綱に盛り込まれました。
2021年度の税制改正以降では、中小企業関連税制のあり方が総合的に検討されるようです。今後も、自社の事業や将来を見据え、税制改正の内容を常にチェックしていきましょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年1月27日)のものです
執筆=並木 一真
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート。会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。 https://namiki-kaikei.tkcnf.com/
【T】
税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ