ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
投資思考
野原秀介 著/実業之日本社
仕事と人生の成功の秘訣(ひけつ)です。投資の意思決定の原理原則「投資思考」をキャリア形成と人生の判断に応用し、26の原則としてまとめてあります。人生は、意思決定の連続です。その結果を積み重ねたものが人生です。そして、投資思考は意思決定の原理原則です。人生の重要な局面で正しい判断ができるように、その秘訣(ひけつ)を学びます。
読めば、投資の原理・原則が学べます。それを日常生活に生かす方法が分かります。投資の知識がなくても理解できます。これを身につければ、キャリアと人生を切り開く強力な武器になるはずです。
本書は二部構成で、前半は基本編です。「時間を味方につける」「バランスシートを意識する」「マーケットは常に正しい」など、誤りのない意思決定を行う原理原則を学びます。後半は応用編です。「ポジションを取る」「顧客と精神的つながりを構築する」「儲かるトレードアイデアは徹底的に繰り返す」など、+αを創出する原理原則が分かります。
投資の基本を生かすため「IRR」「シャープレシオ」「オプションバリュー」など、専門用語が多く出てきますが、解説が付いていますので心配いりません。各項目が、それぞれ数ページの読み切りになっていますので、頭から通読する必要もありません。ざっと眺めて、気になるところから気軽に読み始められるのもいいと思います。
意思決定は極めて大事なのに、なかなか学ぶ機会がありません。読んで実践すれば、意思決定は容易に確実に、迅速になると実感できると思います。若い社会人や学生はもちろん、ベテラン社員でも参考になることがたくさんあると思います。ですから年齢や役職などを問わず、すべてのビジネスパーソンにお勧めします。
本書は、投資の思考法を生活全般の成功法則として紹介しています。内容はもちろん、自分が体験から得た学びを、原理原則にまとめて紹介する点がとても参考になりました。学び上手とされている人は、もれなくこれが無意識にできています。
経営者の中には、自然か科学の学びから経営のヒントを得る人もいます。例えば稲盛和夫さんや孫正義さんは、自然界から経営のヒントを得たといいます。彼らは日常的に成長機会が多いため、成長スピードが格段に速いのです。
反対に応用力がないと、自分と違う世界から自分事を学び取れません。セミナーのアンケートやネット書店のコメント欄には、そんな学び下手のフィードバックであふれています。「これは経営者の話だから」「昔の事例だから」「欧米の話だから」などといい「自分には役立たない」と切り捨ててしまいます。この違いは極めて大きいといえます。
自分と似た人からだけ学んでいても後追いしかできませんし、オリジナルを超えられません。いかに自分と関係のない世界、あらゆる分野から学べるかが、飛躍の鍵といえるのです。異分野から学ぶ力を育むには、例えば自分の業種、分野での経験を一般化し、異分野にも役立つ法則としてのアウトプットが有効です。誰でも自分の経験から得られる学びがあるはずです。
それを、いかに自分と違う環境で生きる人に役立つ話としてアウトプットできるかがポイントです。例えば、仕事の経験から得た学びを用いて子どもにアドバイスするなどです。自分の体験から誰にでも役立つ法則を紡ぎ出せるようになれば、話は飛躍的に面白くなります。本書もそうですが、実は多くの書籍がそうして作られています。自分の体験をベースにしているから唯一無二ですし、説得力が格段に上がります。結局、そういう人のもとに人も仕事も集まるのだと思います。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
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