ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
リーダーの禅語
枡野俊明 著
三笠書房
リーダーシップを禅の言葉「禅語」から学ぶ本です。悩み多き現代のリーダーたちがより良い仕事をするためのヒントを、禅の教えから引き出します。
禅が、仕事に役立つことはよく知られています。スティーブ・ジョブズや稲盛和夫さんなど、世界中のビジネスリーダーが「禅」を学び、仕事に生かしています。
本書は、リーダーが身に付けるべき力を、風格、育成力、平常心、行動力、信頼力の5つとし、それを習得する上で役立つ「禅語」を紹介、解説してくれます。
「禅が仕事に生きる」といっても、ビジネスパーソンがいきなり座禅を組んだり、禅の勉強を始めたりしても、うまくいくとは思えません。そもそも、禅をどこで学べばいいか分かりません。まして、禅の教えを現代のビジネスに応用するには、かなりの応用力が求められます。禅に対する深い理解と実践が必要で、一朝一夕には難しいと思われます。
その点本書は、初めからビジネスに活用することを想定して書かれています。だから、本来は深い禅の言葉が、あたかも「ことわざ」のように、即仕事に生かせるようにアレンジされています。
例えば「一笑千山青」(いっしょうすればせんざんあおし)という禅語は「リーダーは困難な直面も笑い飛ばせる強さを持つべき」と紹介されます。まるで心得集のように読めるはずです。というわけで、経営者やマネジャーなど、職場でリーダー役を務めている人はもちろん、あらゆる局面でリーダーシップを発揮する必要に迫られている人、これから禅を学びたい人にもお勧めです。
私の周りにも、禅を学んでいる人が何人かいます。かくいう私も、禅には以前から関心があり「一度は学んでみたい」と思っていました。しかし、どこで学べばいいものか分からず、いまだに何もできずにいます。というわけで、私自身禅については全くの素人ですが、そんな私が読んでも、本書の内容はよく理解でき、納得できました。
例えば「常行一直心」(つねにいちじきしんをぎょうす)という禅語は「とことん突き詰めて物事が持つ本来の意味を明らかにしていくこと」を意味するそうです。これが、本書では「一本筋を通せ」という具合に紹介されます。これは、戦略論で「経営資源を集中させよ」という意味の「選択と集中」に通じると思います。
他にも、例えば「無常迅速」(むじょうじんそく)という禅語は、「時間を無駄にせず、今を必死に生きよ」という意味です。ここでは、むしろ「人の時間を取らないようにせよ」と解釈します。そこから「今、決められることは、今、ここで決めよ」という教えになります。リーダーは、部下の時間を預かる身ですから、部下の時間を奪わないよう即断即決すべきなのです。
このように本書は、禅への理解はもちろん、ビジネスへの的確な応用が印象的です。これを可能にしているのは、著者のユニークな経歴だと思います。実は、著者は曹洞宗徳雄山建功寺の住職であるだけでなく、作庭家でもあり、デザイン事務所の代表や、多摩美術大学の教授なども務め、世界中から評価されている方なのです。
そのような立場が、ビジネスに関する深い洞察につながり、リーダーに対する示唆に富んだ助言を可能にするのだと思います。もちろん、単に「リーダーシップを学びたい」という人にも、納得できる内容です。ぜひ、珠玉の名言のようにアレンジされた「禅語」から、リーダーシップの本質を学んでみてください。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
【T】
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