ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
自分を壊す勇気
立川志の春著
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
一歩踏み出したいあなたの背中を押してくれる本です。独立、転職など、本当にやりたいことに向かって行動するために必要なことは、まず「自分を壊す勇気」です。
著者、立川志の春さんは、アメリカ大学を卒業して三井物産に勤務しているときに、偶然通りがかりに観た落語に衝撃を受けます。そして、会社を辞め、立川志の輔に入門したという変わり種です。
ある意味「アメリカ育ちの商社マンから落語家」という、究極の自分壊しを経験します。そんな著者が、まだ動き出せずにいるビジネスパーソンに、動く勇気を得る方法を教えてくれます。やりたいことがあるのに、初めの一歩が踏み出せず、つい行動を先延ばしにしている人は、少なくないと思います。本書は、そんな人のために書かれています。
動けないのは、考えすぎてしまうからです。その結果、行動することで負わねばならないリスクなど、動かない理由をいろいろ思いついてしまいます。それを避ける考え方が紹介されます。
つくりは、とてもカジュアルです。イラストも満載で、章ごとに漫画が添えられたり、色づかいもカラフルだったりとユニークです。そして、噺家の本だけに、文章の語り口が面白く、気楽に読むことができます。
といっても、薄っぺらな内容ではありません。「相談しても、相手は責任をとってくれない」「できる・できないでなく、やりたいか・やりたくないかで決める」など、刺さる言葉がてんこ盛りです。
本人も指摘している通り、著者自身が若く、途上経過の本です。飲み屋で職場の先輩からもらう、励ましの言葉のように読めるはずです。ただし、自ら行動した人の言葉なので、重みが違います。「やりたいことが見つからない」「やりたいことがあっても、一歩踏み出せない」「いろいろと考えてしまう」など、なかなか動けない人にお勧めします。
自分を壊すには、大変な勇気が必要です。人間は、基本的に変わりたくない生き物です。よほど気合を入れなければ、動けないのが普通です。まして、著者のようにビジネス界から芸能界という、これまでとはまったく異なる世界に飛び込むことは、自ら快適な環境を捨てることを意味します。相当な思い切りが必要だったと思います。
私自身、会社を辞めて独立しました。私の場合は、同じビジネスの世界でしたから、著者ほどの激変ではありませんでしたが、それでも大変でした。著者の大変さは思うに余りあります。
ただし価値観が変わるのは、悪いことばかりではありません。例えば自分の苦手なことの価値が、相対的に低くなるときもあるからです。私の場合、組織人に求められる協調性とか、事務処理能力とか、資料作りのスキルなどがあまり関係なくなったのには助かりました。
反対に、さほど評価されなかったことが評価されるケースもありました。例えば、アイデア発想とか文章力などです。このあたり、動いてみて初めて実感できました。だからこそ「直感を信じて、思い切ってやってしまえ」というのが、著者のスタンスです。しかし、私は周到でもいいと思います。しっかり準備して、自信をつけてから飛び込めばいいのです。
動けないのは、怖いから。怖いうちは何もできないのが普通です。何もしないくらいなら、安全なやり方でもいいから何かやるほうが、ずっとましだと思います。会社にいるうちに、水面下で準備をするなどです。私の場合、会社にいるうちから、空いた時間に自分のビジネスを始めてしまう「週末起業」でした。
世のサラリーマンは、真面目すぎだと思います。自分の人生がかかっているのですから、もっと「したたか」に、少しくらい「ずる賢く」てもいいのではないかと思います。そんなことを考えさせてくれた本でした。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
【T】
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