ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
課長のための「やらない」教科書
田原洋樹 著
三笠書房
課長向けのマネジメントの本です。企業などの組織の中で、課長というポストで働いている人の業務を見直し、本当に「やるべきこと」を見極めます。
課長を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。業務スピードは上がり、複雑化する一方で、パワハラや残業などに関して、管理職への突き上げが厳しくなっています。
そんな中、発想を転換して、ある種の業務に対して「やらない」という意思決定を推奨します。これにより、課長の仕事を変えていきます。結果、本当にやりたいことにたどり着くことができるようになります。本書のノウハウが優れているのは、新たに難しいこと、面倒なことを始める必要がない点です。むしろ、どんどん「やめること」を勧めます。
具体的には「教えない」「叱らない」「仕切らない」「つき合わない」「なびかない」「話さない」「残らない」の7つです。これらを止めることで、心と体が楽になり、成果も上がります。
著者は、もともとJTBで史上最年少課長として数々の事業を成功させた人物です。その後、人材育成コンサルタントとして、多くの課長を救ってきたそうです。そんな人材のプロのノウハウです。課長という仕事は曖昧です。だからこそ難しく、何でもかんでもやってしまいがちです。それらをいったん整理し、本当に必要なことに取り組めるようになります。
課長をやっている人や課長目前の人、いずれやりたい人、課長を育成する立場にある人は必読です。それ以外にも、人を動かす立場にある人なら、部長でも小さな会社の経営者でも役立ちます。
課長の仕事は、大変です。しかも、あまり報われません。責任は重くなるにもかかわらず、残業代は出なくなります。確かに、割に合わないと思う人が多いかもしれません。そのせいか、最近では、若い人から避けられる傾向にあるようです。でも、断るのは、もったいないと思います。なぜなら、大変だからこそ、やりがいがあるからです。
そして、自分を成長させる絶好の機会になります。私自身、かつて経験しましたが、それまでの仕事とは、難しさが格段に違いました。仕事力に加えて、人間力が問われてくるからです。
つまり、課長の仕事をこなすことで、人間的にも大きく成長するチャンスなのです。それなりに大変ですが、今では「やっておいてよかった」と心から思います。
本書のスタンスは、タイトルにもある通り「やらないこと」、すなわち「劣後順位」を決めていくことです。このスタンスが、本書の価値を大きく高めています。一般に、ビジネス書の多くは「あれもやれ」「これもやれ」と、やるべきことを列挙します。しかし、会社に勤めていれば、現時点で「やるべきこと」は、かなり多いはずです。
課長というポストにいるなら、なおさらです。部門の業績責任を負いながら、上司の補佐と部下の管理をしつつ、最近はプレイングマネジャーとして、自分の業績責任も負っています。だから、いくらビジネス書などでノウハウを仕入れても「忙しくて実行に移せない」という人が多いのだと思います。その点、本書の勧めは「止めること」ですから助かります。
書籍の価値は、結果で決まります。結果を出すには、実行が必要です。その点、本書のノウハウは、実行可能性の高いものばかりです。そういう意味で、本書は極めて価値の高い本だと思います。
もちろん、ただ放り出せばいいわけではありません。止めるべき仕事と、止め方のポイントがあります。そのあたりを、本書はきめ細かく教えてくれます。すべての課長たちの福音になるはずです。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
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