ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
社会人に最も必要な「頼る」スキルの磨き方
吉田穂波 著/ KADOKAWA
コミュニケーションの本です。特に、人に頼る大切さを説き、その方法を教えます。それこそが、今の時代を生き抜く上で重要な考え方だからです。
私たちは「人に頼るのは良くないこと」と思いがちです。でも、そんなことはありません。むしろ、人に頼ることこそ重要で、頼るスキルは社会人にとって最重要な能力であるとさえいえます。本書では、そんな「頼る」スキルを「受援力」と呼びます。これさえあれば、困ったときには他の人に助けを求められるようになれます。さらに、自分と相手の自己肯定感も高められます。
コロナ禍で人との対話が生まれにくくなっています。それでなくても、これからどんどん人口が減っていきます。だからこそ、人を頼る「受援力」が重要です。この力は、誰もが生まれつき持っていながら、あまり使ってこなかった力だと著者はいいます。本書はその「受援力」の重要性を説き、その発揮の仕方を教えます。
「頼ることを良しとする」と聞いて、最初は自己啓発書の類いかと思いました。あるいは、人を当てにする、ちょっとずるい処世術を連想していました。内容も主観的、抽象的なものをイメージしていました。
しかし、読んでみると全く違いました。著者自身の経験を踏まえつつも受援力が高い人の共通要素を抽出し、公衆衛生学、コーチング理論、脳神経科学などの科学的な知見を整理して掲載しています。具体的には「頼ることの大切さ」に始まり、「上手に頼る伝え方や言い換え」「主張する方法」「断る方法」「人間関係資本とチーム」「心理的安全性の高い職場と社会をつくる方法」などを紹介しています。
読後は無理なく周りの人を頼れるようになるはずです。「仕事が回らない」「リモートワークで孤独」「自己責任論がつらい」という人、「部下がいる」「友人が少ない」という人にお薦めします。
人間は社会的生き物です。「頼り、頼られ」が本来の姿です。しかしそれは、現代においては簡単ではありません。そのため、悲惨なニュースを見るにつけ「もっと周りを頼れなかったのか」と思わされます。特に、若いうちは弱音を吐けず、頼む相手も少なく、社会で孤立しがちです。職場でも仕事を抱えるのは若い世代です。結局回らなくなり、かえって迷惑を掛けてしまう場合もあります。
そういう人がキャリアを積んでいくと、今度は「頼むのが面倒くさい」「自分でやったほうが早い」となっていきます。いずれにしろ、簡単には人に頼れないものです。
ですが、本当は頼るべきです。そもそも組織とはそういうものです。そのほうがいろいろとうまくいくからです。意外なことに、頼んだほうが相手からも喜ばれます。人は頼りにされるとうれしいのです。
もちろん、頼む際にはコツがあり、経緯や感謝を伝えなくてはなりません。これらはいずれも納得感のあるものばかりです。しかし、できていない可能性大です。世の中には頼り上手がいるものですが、彼らの行動を振り返ると、こうした勘所をきちんと押さえているのに気付かされます。本書にはそうした勘所がいくつも書かれています。
一つ付け加えるなら、頼るならできるだけ早い段階で頼るべきです。例えばプロジェクトなどの場合は、早々にメンバーを誘い、チームをつくり、役割分担をするのがうまくやる秘訣です。誰でも早くから巻き込まれたほうが経緯を理解できる分、助けやすいものです。そして、それ以上に当事者意識を持ちやすく、モチベーションが上がります。
反対に、困ってから頼られるのでは協力しづらく、何より人ごとになりがちです。私も仕事柄、人に相談されるときがありますが、どうにもならなくなって泣きつかれるのは本当に困ります。
繰り返しますが、人間は社会的生き物です。「頼り頼られ」が健全なのです。これを意識して人に頼る人が増えれば、正常な社会機能を取り戻せるような気がします。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
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