読書でビジネス力をアップする(第66回) コロナ後、変わりつつある組織で生きる仕事術

ビジネス本

公開日:2020.11.05

働く時間は短くして、最高の成果を出し続ける方法
越川慎司 著
日本実業出版社

 時間効率改善の方法です。「働き方改革」が求められています。でも、単に働く時間を短くするだけでは不十分です。時短の結果、利益が下がってしまえば単なるジリ貧です。大事なことは、時間を削減しつつ、利益は上げることです。それこそが本当の「働き方改革」です。分かっていても簡単ではありません。本書には、その方法が書いてあります。

 著者は、元マイクロソフトの業務執行役員として「リモートワーク」を実践、独立してからは「週休3日週30時間労働」を実践している人です。そんな生産性アップのプロが教えてくれます。

 仕事を効率化する方法は、実は確立されています。まずは現状認識です。次いで「やめること」を決めることです。やめるだけですから、簡単ですが、効果は絶大です。

 なお、会社のムダの温床は、主に「会議」「資料作成」「メール処理」にあるそうです。これなど、現役で働いている人であれば、納得できると思います。どうしても削減できない仕事は、効率的に行う工夫をします。本書には、その方法も書いてあります。例えば「メールはチャットに換える」「資料はひと目で伝わるものにする」などです。

効率化した時間を何に使うべきか?

 そして、何より大事なことは「浮いた時間を成長につなげること」だと著者は言います。本書はその方法にも言及します。これができて初めて時短と成果を同時に実現する「働き方改革」になります。

 「組織の効率を高めたい」経営者や幹部はもちろん、無駄な作業に忙殺されていて、プライベートの充実や将来につながる成長ができないと悩む方におすすめです。働き方は大事です。最近のテーマのようですが、これまでも散々いわれてきました。私がサラリーマンだった30年前から、日本人の働き過ぎは問題視され「時短」「残業撲滅」が課題でした。

 それでも、当時は「献身的な長時間労働こそ日本企業の底力」と評価される面もありました。ところが最近は成果も上がっていないことが判明、生産性は世界最低水準だということが分かりました。それでも改善されないのは、職場の意識と評価が古いままだからです。仕事を早く終えても、他の人を手伝わされたり、別の仕事を振られたり、自分だけ早く帰ることは、なかなか認められません。

 それに、効率的に成果を上げても給料は変わりません。むしろ、長く居座ったほうが、残業代の分収入は増える人もいます。つまり、個人レベルの生産性は会社に長くいるだけのほうが高くなるのです。もちろん、そういう社員はダメ社員であり、評価されません。ただ、その評価自体が曖昧で上司の主観の側面が強くあります。だから割り切って、ダラダラ働く人が出てきてしまうのです。

 難しいのは、個人レベルの努力や改善では、何も変わらないことです。時間泥棒の温床である会議も資料作りも、個人でやめることはできません。売り上げ至上主義も同じです。問題の多くは、組織の意識の問題であり、個人にできることは限られています。こうして、多くの人が疑問を感じながら、会社の生産性が改善しないまま30年以上過ぎてしまったのです。

 ただ、これが大きく変わろうとしています。コロナに端を発したリモートワークの進展です。これまで、一向に進まなかった在宅勤務はここに来てあっという間に進みました。

 これが常態になれば、職場に長くいるだけで評価されることはなくなるはずです。そもそも職場にいないからです。替わりに成果による評価基準が導入されざるを得なくなるはずです。そうなれば、短時間で成果を上げる働き方が評価されるようになるはずです。本書にあるようなスキルやノウハウは、いっそう重要になると思います。

執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)

ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。

【T】

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