読書でビジネス力をアップする(第32回) 若手に「修業」を課さない上司になるための仕事術

ビジネス本

公開日:2018.01.11

超ホワイト仕事術
高野孝之 著
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

 マネジメントの本です。マネジメントのプロが、現代のマネジャーにマネジメントの方法と考え方を伝えます。生産性とモチベーションの高い職場をつくる方法が分かります。日本の会社は、質の高い労働力を持ちながら、生産性は極めて低い状態にあるといわれています。これはマネジメントが原因であるとし、その改善の方法を具体的に紹介していきます。

 具体的には「人に仕事をつける」方法から「仕事に人をつける」ことへの意識改革です。これを可能にする具体的な仕組みのつくり方を解説してくれます。働き方を「ホワイト」にする前提にはじまり、マネジャー自身の働き方、チームをホワイト化する仕組み、チームの効率化の方法、メンバーの意識を変えるコミュニケーションなどです。これらを、52の項目に分けて紹介していきます。いずれも4ページで完結しています。気になったところ、知りたいところから読むことができ、手に取りやすいと思います。

 52の項目は、実践が容易なものばかりです。例えば「自ら休みをとる」「判断は報告をすべて聞き終わった後」「優秀なメンバーは3年で卒業させる」などです。気付けば、読破していると思います。

 なお、一番の特徴は、論理的で再現性がある点です。だから、誰がやっても結果が出ます。もちろん、合理性一辺倒でなく、日本企業の事情や、良いところ、悪いところも踏まえて書いてあります。ホワイトなマネジメントをめざしながら「部下が育たない」「定着しない」「生産性が上がらない」と悩むマネジャーは少なくないと思います。そういう人たちにこそ、一読をオススメします。

「仕事に人をつける」ことへの意識改革とは?

 「ブラック企業」の存在が社会問題化し、仕事の生産性、特にホワイトカラーの生産性が強く意識されるようになりました。ビジネスなのですから、生産性の向上は常識のはずです。ところが、この常識が日本では長いこと放置されてきた現実があります。現に、日本のホワイトカラーの生産性は、先進7カ国中、最下位にあるそうです。

 一方、ものづくり分野の生産性では、日本は世界的に高い評価を受けてきました。その陰に隠れて、いわゆる人の生産性のほうが、置き去りになってしまったのかもしれません。メンバーの生産性向上は、マネジャーが率先して行うべき仕事です。しかし、これには価値観の変更が伴うなど容易ではありません。

 結果、マネジメントの仕事が最もブラック化してしまっています。生産性が向上しない原因の1つに、日本のあしき文化である「下積み文化」もあると思います。日本の企業では、有能で将来有望な若手に「下積み」という名の下、平気で単純作業を強いる傾向があります。かのホリエモンが「すし屋の修業に意味はない」と言って炎上したことがあります。私も同意見ですが、こうした意見が炎上してしまうあたりに、根深さを感じます。

 私が勤めていた会社も、高い志と能力を持つ人間を単純作業に駆り出していました。大学で高度なマーケティング理論を学んできた人にも、MBAを取得した人にも、街頭でビラ配りをさせていました。これは、修業とか、見習いとかいう位置付けで行われていました。私も、若い頃にやらされました。どう考えても、納得できず、何度も上司に異を唱えました。

 でも、いつも「みんなやってきた」という一言で一蹴されました。いつまでたっても埒(らち)が明かず、結局「精神鍛錬」と割り切りました。今、思い出しても「無駄な時間を過ごした」と悔やまれます。本書には、人をすり減らさない組織をつくる方法が書いてあります。いずれも、マネジャーが率先して取り組むべきことばかりです。実行すれば、きっと高い生産性が実現できると思います。

執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)

ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。

【T】

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