ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
『暮らしを哲学する』
氏家法雄 著/明日香出版社
思考の入門書です。難しそうな哲学という学問を、暮らしと結びつけて分かりやすく解説してくれます。自分で気付き、思考するためのヒントが詰まっています。読めば、暮らしの中にも哲学のネタがあふれていることに気付かされます。それを見つけて、考えることで哲学だけでなく、あらゆる学問が暮らしに結びつくことが分かります。
著者は「哲学ってこんなもの」ということを伝える子どもに宛てた手紙のようなエッセイとして本書を書き始めたといいます。そのため誰にとっても理解しやすい内容になっています。
本書は「暮らしを学問する」をテーマに書かれています。暮らしと学問の境界線を取り払い、双方の良さを引き出すきっかけになることを願って書かれています。私たちは、哲学に限らずあらゆる学問を日常生活と切り分けて考えがちです。しかし、普段の生活にも哲学をはじめあらゆる学問のきっかけがたくさんあることに気付かされます。
それを考えたり、哲学したりすれば、当たり前と思いこんでいたことの価値に気付いたり、間違いに気付いて新しい発見や学びが得られたりします。その結果、暮らしが豊かになるはずです。読めば、暮らしの中で立ち止まり、新しいことを学び直すきっかけになるかもしれません。巻末には読書案内も収録されており、気になる人物や作品、テーマを参照し、深めることができます。
また、哲学初心者の方、考えることが苦手な人、教養を身に付けたい人、新しい学問を始めたい人はもちろん、「毎日同じことの繰り返しだ」と嘆く人にもおすすめします。「考えろ」と言われても、簡単ではありません。少なくとも材料、いわば「たたき台」が必要です。
例えば、読書や人の話です。ただ、それを丸パクリしても考えたことにはなりません。知識は増えても、暮らしに役立つ知恵を生む頭脳は得られません。大事なことは「学んだこと」について「考えること」です。「読書をしたら、その3倍考えろ」というのはそういうことです。
著者は「哲学とは学んだことを解体して自分で作り直していくプロセス」だと言います。いわゆる「アンラーニング」です。知識や価値観を批判的に検討し、新たに学び直すのです。この作業はこれからますます重要になります。昨今は、新常態、多様な社会などと価値観が大きく変わる時代です。私など価値観や考え方も昭和仕込みです。主流でなくなりつつあることを感じます。それに気付かないと笑われます。もっとひどいとトラブルを生みます。
政治家や経営者が、失言やパワハラで問題になるのも、自分たちの価値観が主流でなくなりつつあることに気付かないからです。市井の人間であれば、発言や行動がマスコミをにぎわすことはないでしょうが、周囲の人に「旧タイプの人間」として失笑される可能性はあります。できれば避けたいものです。
年齢を重ねたり、組織で立場が上になったりすれば、周囲は少なくとも表向き立ててくれます。皮肉なことに、それが裸の王様や時代遅れになることを後押しします。私たち世代はそうならないために、まず自分のことを自分で考えるクセを付ける必要があるかもしれません。自分を哲学するのです。そこから考える習慣を付けるとよいと思います。その過程で、己を知り、他人を知り、世界を知ることで、凝り固まった頭を解きほぐし、しなやかに考え、生きることができるようになるはずです。
こうして何とか時代に取り残されず、ついて行けるかもしれません。もちろん、世代を問わず、思索を巡らせる習慣を取り入れたい人は、一読の価値があると思います。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
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