ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
忘れる力:「すっきり」「はっきり」「ゆったり」
平井正修 著
三笠書房
禅に学ぶ心のマネジメント本です。ビジネスや日常生活では、日々さまざまな刺激にさらされます。その結果、心には雑念が蓄積し、それがストレスになっていきます。そんな波立った心をないだ状態に戻すには、忘れることです。でも上手に忘れることは、意外に簡単ではありません。これを禅の教えに従って開放していきます。
禅の力を借りて忘れることで、限りなく自分を「真っ新」にすることができます。すると、過去にとらわれることなく、他人に振り回されることもなく、将来を思い煩うこともない状態にできます。
本書は、禅の教えをビジネスに生かす本です。といっても、座禅のマニュアルなどではありません。禅の教えをベースにした「忘れる力」で、人生を充実させる方法を学ぶ本です。具体的には「過去にとらわれない」「将来を思い煩わない」「人間関係に振り回されない」「焦らない」「日々を新たにする」という5つのテーマについて、禅的なアプローチで解決していきます。
例えば「過去にとらわれない」ために「新しい記憶で上書きすること」を推奨します。または「思いを捨てる」ために「物を捨てること」を提案します。著者は、禅の究極は「忘れること」だと言っています。「人は、何も持たずに生まれ、何も持たずに死んでいく」のです。忘れることこそ、本当の自分に近づくことができるのです。
というわけで「毎日忙しくて、心の余裕を失っている」と感じている方にはもちろん「禅やマインドフルネスに興味がある」という方にもお勧めします。
スティーブ・ジョブズが禅にはまっていたのは有名です。私も禅の教えには、興味があります。他にもシリコンバレーでは、多くの企業の経営者が生産性や創造性の向上をめざして禅を取り入れています。現代社会は、多忙な社会です。そして、誰しも忙しいと心を失います。何せ「忙しい」という字は「心を無くす」という文字で、できているくらいです。
そして、ビジネスの語源はbusyです。仕事は本来忙しいものなのです。だから、必然的に職場は殺伐とします。そんな中で平常心を保つには、心を静かにするスキルの習得が不可欠です。世界のトップリーダーたちが、禅の教えに傾倒する理由も、そこにあります。本書では、そんな禅の教えに基づき、「忘れる」ことで、気持ちを楽にする方法が学べます。
禅の他に「1人になると落ち着く」という人も多いと思います。私もその1人です。中には「1人合宿」と称して、自主的にホテルに缶詰めになる人もいるようです。私も、やってみたことがあります。ただ「1人合宿」は私には向きませんでした。環境が変わり過ぎて、かえって集中できなかったのです。オフィス街やカフェなど、いつもの環境で1人になるのがいいようです。
もう1つ、心を落ち着かせる方法としてお薦めしたいのが、とにかく手を動かしてみることです。いろいろと書いてみるのです。きちんとした文章でなく、殴り書きでも十分です。例えば、どんな人にも「やるべきこと」が多過ぎてパニックになるという経験はあると思います。そういうときは「やるべきこと」を洗いざらい紙に書き出してみます。すると、不思議と心が落ち着きます。理由は、脳の負荷が減るからなのでしょうね。
これは、ビジネススキルにも応用されています。例えば「GTD(Getting Things Done)」というビジネスノウハウがあります。GTDは、デビッド・アレン(David Allen)が自著「仕事を成し遂げる技術 ―ストレスなく生産性を発揮する方法」で提唱した、個人向けのワークフローの管理手法です。このノウハウの最初のステップは「やるべきこと」をすべて書き出すことです。いずれにしろ、現代社会に生きる以上、脳の負荷を軽減させる技術が不可欠です。それを、禅の教えに学ぶことは合理的です。手始めの1冊として、本書をお薦めしたいと思います。
執筆=藤井 孝一(ビジネス選書WEB)
ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。
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