ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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新型コロナウイルスの流行が下火になり、さまざまな経済活動が回復してきた結果、人手不足が顕著になっています。こうした背景もあり、日本で働く外国人労働者数は2023年10月末時点で204万8675人と初めて200万人を超えました。外国人雇用の届出が義務化された2007 年以降の集計で、過去最高の数値となっています(厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年10月末時点))。
産業別の外国人労働者数は、「製造業」が55万2399人(27.0%)で最も多く、外国人を雇用する事業所数は、「卸売業・小売業」が5万9497所(18.7%)と最も多くなっています。事業所規模別に見ると、外国人を雇用するのは「30 人未満」規模の事業所が最も多く、19万7256所(事業所数全体の 61.9%)、73万8757人(外国人労働者数全体の 36.1%)となっています。
このように、中小企業において外国人労働者を雇用するケースは現在もかなり多くなっていますが、今後人手不足が続くと、さらに増えると予想されます。
外国人労働者の雇用は、日本人を雇用する場合と異なる点や注意すべき点があります。そこで、企業が外国人労働者を雇用する場合の留意点について、厚生労働省作成のパンフレット「外国人雇用はルールを守って適正に」(以下:パンフレット)などを参照しつつ解説します。
外国人を雇用する場合、事業主が留意する必要があるのは、大きく分けて次の3点です(厚生労働省「外国人の雇用」参照)。
① 就労可能な外国人を雇用する
外国人は、出入国管理および難民認定法(入管法)で定められている在留資格の範囲内で、わが国での就労活動が認められています。そのため事業主は、外国人を雇い入れる際に在留カードまたは旅券(パスポート)などによって就労が認められるか確認する必要があります。
② 適切な雇用管理をする
事業主は、雇用する外国人が安心して働き、その能力を十分に発揮できるよう、労働施策総合推進法に基づき定められた外国人雇用管理指針(以下、指針といいます)に従って適切な人事管理と就労環境を整備する努力義務を負います。
③ 外国人雇用状況の届出をする
事業主は労働施策総合推進法に基づき、外国人の雇い入れと離職の際には、氏名、在留資格などについて確認し、ハローワークへ届け出る義務を負います。
3つの留意点について詳しく見ていきましょう。
① 就労可能な外国人を雇用する
入管法で定める在留資格は現在27種類あり、就労の可否の観点からは、次の3種類に分けられます。
ⅰ 在留資格に定められた範囲で就労可能な在留資格(18種類)
典型的なものは、a:技術(コンピューター技師、自動車設計技師など)、b:人文知識・国際業務(通訳、語学の指導、為替ディーラー、デザイナーなど)、c:企業内転勤(企業が海外の本店または支店から期間を定めて受け入れる社員。活動は「技術」「人文知識・国際業務」に掲げるものに限る)、d:技能(中華料理・フランス料理のコックなど)の各資格です。
ⅱ 原則として就労が認められない在留資格(5種類)
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在が該当します。このうち「留学」および「家族滞在」の在留資格については、当該資格を有する外国人が地方入国管理局で資格外活動の許可を受けることによって、法で定める一定の時間、アルバイトなどの就労活動を行えます。具体的には、「留学」の場合は1週28時間、夏休みなどの長期休暇中は1日8時間まで、「家族滞在」の場合は1週28時間まで就労が可能となります。
ⅲ 就労活動に制限がない在留資格(4種類)
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、就労活動に制限はありません。
このように多くの在留資格がありますから、雇用しようと考える外国人労働者がどの在留資格なのか、しっかりと確認する必要があります。
② 適切な雇用管理をする
指針では、外国人を雇用する事業主が行うべき事項として、以下の4つを掲げています。
ⅰ 雇用・採用時において
国籍で差別しないで公平な採用選考を行うこと。日本国籍でないこと、
外国人であることのみを理由に、求人をする事業主が外国人の採用面接などへの応募を拒否することは、公平な採用選考の観点から適切ではありません。
ⅱ 法令の適用について
労働基準法や健康保険法などの労働関係法令や社会保険関係法令は、国籍を問わず外国人にも適用されます。また、国籍による労働条件面での差別は禁止されています。
ⅲ 適正な人事管理について
外国人と労働契約を締結する際には、日本人の場合と同様、賃金、労働時間など主要な労働条件について書面などで明示する必要があります。その際、当該外国人の母国語を用いるなど理解できる方法で明示することが望まれます。
賃金の支払い、労働時間管理、安全衛生の確保などについては、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などに従うよう適切な対応が求められます。
さらに人事管理にあたっては、職場で求められる資質、能力などの社員像の明確化、評価・賃金決定、配置などの運用の透明性・公平性を確保し、環境の整備に努めるよう求められます。
ⅳ、解雇などの予防と再就職援助について
事業主は、雇用した外国人を安易に解雇したり雇い止めをしたりすることがないよう配慮を求められます。やむを得ず解雇などをする場合には、再就職希望者が在留資格に応じた再就職ができるよう、援助に努めなければなりません。なお、業務上の負傷や疾病の療養期間中の解雇、妊娠や出産などを理由とした解雇は禁止されています。
上記のように、外国人雇用は、日本人を雇用する際と同様の取り扱いを求められるだけでなく、母国語での条件提示など日本人雇用以上の対応が求められます。
③ 外国人雇用状況の届出をする
外国人の雇い入れと離職の際のハローワークへ届出は、「外交」「公用」以外の在留資格について必要となります。届出にあたって事業主は、外国人労働者に在留カード、旅券(パスポート)、資格外活動許可書の提示を求め、届け出る事項を確認する必要があります。詳細は、パンフレット2ページから9ページを参照ください。
以上のように、外国人労働者を雇用する場合は大きく分けて3つの留意点があります。外国人を雇用する事業主は、これらを順守して適切に外国人労働者を雇用しなければなりません。
パンフレットには上記の留意点のほか、出入国・在留等の手続きに関する問い合わせ先、外国人雇用サービスセンター、留学生コーナーの一覧が掲載されていますので一読をお勧めします。また、各地のハローワークでは、外国人雇用管理アドバイザーが、外国人労働者の雇用管理に関する相談を無料で受け付けていますので、こちらの利用を検討してもよいでしょう。
執筆=上野 真裕
中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)・中小企業診断士。平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。令和2年中小企業診断士登録。主な著作として、「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。
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