弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第106回) ステルスマーケティングの規制が開始

法・制度対応

公開日:2023.07.27

 不当景品類及び不当表示防止法(以下:「景表法」)第5条3号の規定に基づき、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定および「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(以下「指定告示」といいます)が公表され、2023年10月1日から、いわゆるステルスマーケティングの規制が開始されます。

 SNSやインターネットの口コミサイトなどで、商品やサービスのレビューがされている際、それが事業者による広告であると認識できるかどうかで、一般消費者の受け取り方は変わります。広告であると認識できれば、レビューの内容についてある程度の誇張・誇大が含まれる可能性があり得ると捉えますが、中立的な第三者のレビューであると誤認した場合は、誇張・誇大があり得ると認識できず、自主的・合理的な商品選択ができません。

 そのため、ステルスマーケティングなど一般消費者に事業者の表示ではないと誤認される、または誤認されるおそれがある表示が規制されることになりました。広告を行っている事業者は、今後は広告を掲出する際に注意が必要になります。

 指定告示によれば、①事業者が自己の供給する商品又は役務(サービスのこと)の取引について行う表示であって、②一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるものが規制の対象になります。それぞれ解説しましょう。

表示内容決定に事業者が関与しているかどうかが最も重要

 今回の規制は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」が対象となります。これは、事業者が自ら行う表示に加えて、第三者の表示であっても実態としては事業者が表示内容の決定に関与しているような表示も含まれます。事業者の関与がなく、自由な意思の下で行われた表示については当然認められますので、判断のポイントとしては、表示内容の決定に事業者が関与しているかどうかが最も重要です。

 事業者が自ら行う表示には、例えば、事業者の従業員といった実質的には事業者と同視できる者や子会社の従業員など、一定の関係性がある者に商品レビューや口コミを投稿させる場合がこれに含まれます。具体的にどこまでの範囲で、「事業者が自ら表示を行った」と判断されるかは難しいですが、指定告示では、「従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえて、事業者が表示内容の決定に関与したかについて総合的に考慮し判断する」とされています。

 また、事業者が自ら表示内容の決定に関与しているにもかかわらず、あたかも第三者が表示しているかのように誤認させる表示も事業者自ら行う表示に含まれます。

 例えば事業者がインフルエンサーや著名タレントに対し、SNS上や口コミサイト上に自らの商品またはサービスに係る表示内容を指示して好意的な投稿をさせる場合や、ブローカーや商品購入者に対して表示内容を指示し、ECサイトに高評価なレビューを書かせるような場合が該当します。

 ここで、事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容が自主的な意思による表示内容であるとは認められない場合も、事業者による表示とされることに注意が必要です。

 例えば事業者が第三者に対し明示的に依頼はしないものの、好意的なレビューを投稿すれば今後の取引の可能性や経済的な便宜をちらつかせるといった場合もこれにあたり得ます。

事業者の表示であると明瞭、第三者の表示であると誤認されない

 この点の判断についてはケース・バイ・ケースですが、指定告示では「事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容(例えば、メールや口頭、送付状などの内容)、事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、その主な提供理由(例えば、宣伝する目的であるかどうか)、事業者と第三者の関係性の状況(例えば、過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合に、その関係性がどの程度続いていたのか、今後、第三者の表示に対して対価を提供する関係性がどの程度続くのか)などの実態も踏まえて総合的に考慮し判断する」とされています。

 次に、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」について説明します。指定告示では、「一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆に言えば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断する」とされています。

 事業者の表示であると記載されていないものが含まれるのは当然として、事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものも「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」に含まれます。例えば、SNSの投稿で「広告」と記載しているにもかかわらず、「これは第三者として感想を記載しています」と記載するなど、一見して事業者の表示か第三者の中立的な表示であるかが判然としない表示をする場合が該当します。

 また、広告の中で視認しにくい位置や大きさで事業者の表示であると示す場合や、動画の中でわずかに短い時間だけ事業者の表示であると示す場合も、事業者の表示であることが不明瞭ですので、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」に該当します。

 事業者としては、インフルエンサーや有名タレントにSNSなどで自社の商品やサービスに関する投稿を依頼する場合、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となるような措置を取る必要があります。例えば、動画であれば「これは広告です」というような表示を通常であれば視認できる位置に掲載し、一般消費者が認識できる程度の時間表示する必要があります。

 また、口コミサイトなどに自社の商品やサービスについて、事業者が内容を指示して好意的・高評価な投稿をするよう依頼する、いわゆるサクラ投稿については、景表法違反に該当してしまう可能性が高いため、今後は避けたほうが良いでしょう。

執筆=近藤 亮

近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属) 平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。

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