ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
少し前に、某有名家具会社で、家族による会社の支配権争いが話題となりました。多くの視聴者は、もしかすると“特殊なケース”としてニュースを見ていたかもしれません。しかし、実は、会社の支配権争いはどんな会社にも起こり得ることなのです。第三者による乗っ取りをはじめ、世代交代による経営方針の違い、相続をきっかけとした身内による支配権争いなど、たくさんのパターンがあります。
ムダな支配権争いを起こさないためにはどうすればよいのでしょうか。特にリーダーが留意すべき重要なポイントを紹介します。
支配権争いを起こさせないためには、株主総会を有利にコントロールすることが重要です。株主総会では、報酬、退職金、剰余金の配当など、会社の重要な事柄が決定されます。議決権の過半数を確保できていれば、取締役の選任や解任などを自らがコントロールできるため、基本的には会社の支配権が奪われることはありません。
しかし、ここで注意したいのが「累積投票制度」です。累積投票制度とは、現在の経営に反対の立場を取る少数派の株主のための制度のことをいいます。少数派の株主が現体制を大きく変えようとする取締役を送り込んでくる可能性があります。
累積投票制度で取締役を2名以上選任する場合、各株主が1株1議決権ではなく、選任される取締役の人数と同じ数の議決権を有します。例えば、3名の取締役候補者から2名を選任する場合、各株主は1株につき選任される取締役の数と同数の票(この場合は2票)が与えられます。
この票は、特定の取締役に集中して投票することができます。例えば全株式が100株の会社において、3名の取締役候補者から2名を選任するとします。この場合、34株を所有する株主は、1人の候補者に対し68票も投票できることになります。つまり、この制度を利用すれば、議決権の過半数を有していない株主が取締役を送り込み、経営に口を出すことが可能となるのです。
しかも、累積投票制度により選任された取締役は、ルール上、解任されにくい特徴を持っています。通常、役員の解任は、出席株主の過半数によって行うことができます。しかし累積投票制度で選ばれた取締役の場合、株主総会における特別決議(基本的には、議決権の過半数の出席と出席株主の議決権の3分の2以上の多数)がなければ解任ができません。そのため、取締役を2名以上選任する場合、議決権の3分の2以上を確保していなければ安心できないのです。
多くの企業では、累積投票制度の利用を排除することを定款で規定しています。ところが、もし規定されておらず、かつ株主から請求があった場合には、取締役の選出方法として累積投票制度が採用されます。ムダな争いが起こる前に、累積投票制度について対策を検討した方が良いでしょう。
株主総会にて議決権の過半数を確保できない場合――、会社の支配権争いは、他の株主が持つ議決権の争奪戦となります。
争奪戦の具体的な内容は、他の株主に対し、議決権行使を委任してほしい旨を説得すること、株式譲渡を求めることなどが挙げられます。この説得自体は、法律による制約はありません。
しかし、株式の譲渡を制限することは可能です。定款によって「株式譲渡は会社の承認が必要である」と定めることで、会社にとって不都合な人物が株式を取得しないようにチェックする体制をつくることができます。
一方で、相続や会社合併によって株式が移転する場合もあります。この場合、たとえ上記のような株式の譲渡制限の定めがあったとしても、会社の承認は不要になり、支配権争いに発展しかねません。
ここでも活躍するのが定款です。定款で「相続等の場合には、当該株式を会社に売り渡す」と定めることで、相続をきっかけとする支配権争いを防ぐこともできます。
現代においては、高齢化社会独特の対策も重要になります。例えば、認知症によって判断能力を失っている株主も議決権の争奪戦に巻き込まれることがあります。
当該株主は議決権を行使したり、株式を譲渡したりすることはできません。このような場合には、成年後見人などを選任し、代理人が本人の意思を確認して議決権行使をすることになります。しかし、成年後見人などが議決権をどのように行使するのかは必ずしも明らかではなく、場合によっては議決権を行使しないことも考えられます。
大株主の高齢化対策としては、事前に大株主と任意後見契約を締結し、議決権行使などについて委任を受けることが良策です。これも、支配権争いの防止に役立ちます。
未来に何が起こるのか、完全に予見することは難しいのですが、今回挙げたような対策を行うことで、株主の支配権争いが未然に防止できます。まずは自社の定款を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2016年6月1日)のものです。
執筆=本間 由也
1982年生まれ。2004年明治学院大学法学部法律学科卒業、2007年明治学院大学法科大学院法務職研究科法務専攻卒業。翌2008年に司法試験合格。紀尾井町法律事務所での勤務を経て、2011年1月法テラス西郷法律事務所初代所長に就任。2014年2月こだまや法律事務所を東京都国分寺市に開所、現在に至る。
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